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二七一話

「誰かしら?」


 フェアニの住んでいる家に客が来たことを知らせる鐘が鳴る。

 今、家にいるのはフェアニの母親と娘だけ。

 夫であるアムルはまだ帰っていない。

 夜のバイトで仕事をしていたせいだ。


「はーい」


 こんな夜遅くに誰が来たのだろうと首を傾げながら出迎える。

 そこには複数の男たちが家の前にいた。


「えっと、何の用でしょうか……?」


 男たちが自分の家に何の用だろうかと扉の取っ手を掴みながら問いかける。

 まるで自分達を今から害しそうな雰囲気が怖かった。


「…………死んでくれ」


 そして一番前にいた男が取っ手に手を付けていることに気付いてフェアニに襲い掛かる。

 突然のことにフェアニも扉を閉めようとするが目の前にいた男の方が早かった。

 悲鳴を上げるよりも、助けを求めるよりも早く首を裂かれてしまう。


 悲鳴を上げるなりして助けを求めるのを防ぐために首を裂いたのかもしれないが、それは同時に人の急所だった。

 首を裂かれたことで何も伝えることが出来なくなってしまった。

 フェアニは母親と娘に逃げることを伝えることも出来ないが、残された力を使って男たちの足止めをしようとしていた。


 体重を掛けて玄関に留めさせ、押しのけられても足を掴んで止める。

 何度も何度も蹴られても手を離さず、ようやく手を離したと思ったら死んでしまった。


「フェアニ?」


 突き放すのに時間が掛かったせいでフェアニの母親が心配して玄関に近づいてくる。

 フェアニが死んだなんて夢にも思っていないはずだ。


「死ね」


 だから全く警戒もせずに顔を見せてきたフェアニの母親を男は殴った。

 悲鳴を上げる隙も与えず口を塞ぐ。

 そして心臓にナイフを突き刺す。

 それでも、まだ生きているのか口を塞いだ腕を放そうと掴んでいる手に力が入っている。

 悲鳴を上げられて助けを求められるわけにはいかないとナイフを更に強く突き刺し、腕を掴んでいる手の力が抜くまで口を塞いでいた。


 そのまま数分が経つとようやくフェアニの母親の力が抜けた。

 塞いでいた腕を放すとフェアニの母親の身体が崩れ落ちる。

 そして念のために首を裂いて投げ捨てた。

 後はフェアニの娘であるテミスだけだ。


「あとは娘だけだな……。どこにいる?」


 父親がいないことは幸運だった。

 男だから女よりも頑丈だろう。

 もしかしたら一人ぐらいは逃げられた可能性がある。


「いたぞ……」


 そして見つけられたテミス。

 夜が遅いからかぐっすりと眠ってしまっている。


「…………今更だな」


 あまりにも小さく幼い子供を今から殺すのだと思って男たちは一瞬だけ躊躇した。

 既に二人も殺してしまっているのだ。

 本当に今更だった。


「…………かわいそうに」


 そして眠っている子供を男たちは刺し殺した。

 眠っているから苦痛も感じなかっただろう。

 そこだけが幸いだと男たちは考える。

 

「逃げるぞ……」


 そして男たちはこの家に用は無いと出ていく。

 これで全身の痛みは無くなるだろうと考えていた。



 そして翌日。


「おぉ!!」


 夜遅くになってから男たちは歓声を上げていた。

 一日中、殺すことを考えなくても痛みが無い。

 それがたまらなく嬉しかった。


「しかも本当に金が手に入ったし……」


 路地裏で言われたとおりに報酬として、また金を得ることが出来た。

 自分達で殺しておきながら、どれだけ憎まれているんだと思う。

 だがお陰で金が手に入ったと思えば有難かった。


「よしよし、あとはどこか遠くへ行くだけだな」


 男は自分が殺した相手がいる土地にあまりいたくなかった。

 殺したことがバレて捕まるなんてしたくない。

 これだけの金を渡すほど恨まれている相手が悪いんじゃないかと考えている。


「さてと……」


 そして、この土地に戻らないように必要な物をカバンに入れていく。

 そんな中、ホテルの部屋の呼び鈴がなった。


「誰だ?」


 男は呼び鈴がなったとこに扉を開ける。


「警察です。少し聞きたいことがあるので良いのでしょうか?」


 男は警察が来たことに反射的に扉を閉めて窓から逃げようとする。

 高いところから地面に落ちる必要はあるが自分に魔法をぶつけて速度をやわらげるつもりだ。

 多少の怪我はするかもしれないが逃げ切る方が大事だ。


「逃がすか!!」


 だが、それよりも早く警察はホテルの扉を壊して部屋の中に入ってくる。

 ホテルの経営者には事前に話していているから問題は無い。

 むしろ知らなかったとはいえ人殺し泊めてしまったことを気にしていた。

 警察に協力することで人殺しを泊めてしまったことがバレても払拭しようと考えている。


「何で!?」


「悪いが、ここ最近路地裏でホームレスをしていた者たちが身綺麗にしていたことは知られている!それに殺した家での指紋!そして警察が来たと知って、直ぐに逃げる判断!他にも余罪が無いか調べさせてもらうぞ!」


 まさか自分の反応も判断に入れられて男は絶望する。

 折角、金も手に入って良い思いをしようとしていたのに自分の行動、判断で警察が来るとは思わなかった。

 もしかしたら金を渡した者も想像していなかったのかもしれない。

 だけど自分達と同じように捕まることを男は祈る。

 そして刑務所で復讐してやろうと考えていた。

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