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二六一話

「出ていけ!!」


 アムルの家では息子が相手を妊娠させたことが伝わり、それを知った父親は怒り狂ってアウルを殴り、母親は泣き崩れる。

 相手が年上の女性だとしても学生だということもあり申し訳なかった。


「もう二度と家の敷地を跨ぐな!!お前のような無責任な奴は家族でも何でもない!!」


 そう言って父親はアムルを家の外に追い出す。

 鍵も閉められアムルは家の中に入ることは出来なくなった。



「最悪だ……」


 アムルは自分が家の外に追い出されるのは納得していた。

 だけど制服のままで追い出すのは酷すぎないかと思う。

 最低でも下着とか替えの服とかも持っていきたかった。


「それでも財布を持っていて運がよかったけど……」


 あの調子じゃ運が悪かったら身無一文で追い出されてた。

 お金があるだけ幸運だ。


「取り敢えずいつまでも制服じゃアレだしな。もしかしたら学生なのに学校に行っていないと言われそうだし制服は捨てないと……」


 少し勿体ないが制服は捨てるしかない。

 そして服を買う必要がある。

 普通にお金も結構使うのがキツイ。

 だけど必要であり、直ぐに働けるバイトを探そうと決めていた。


「アウル君?」


 そうして服屋に行こうと行き先を決めたらフェアニの母親が目の前にいた。

 大事な娘を孕ませた男に文句を言いに来たのだろうと想像できる。


「ねぇ、どうして娘に手を出したの?貴方、ロリコンなのかしら?」


「違います。そもそも、貴女の娘は幼女じゃないですし」


 アウルの言葉にフェアニの母親は目を瞬きさせる。

 そんな言葉を言われるとは夢にも思わなかった。


「え……。でも娘は身体が年齢に反して幼すぎるし」


「でも精神的には、かなりしっかりしていると思いますよ?見た目の年齢で色々と馬鹿にされたりしているみたいだけど、しっかり言い返したり自分の意見を通したりしますし」


 見た目の年齢ではなく、中身の方を見て言い返して来たことにフェアニの母親は嬉しくなる。

 そして娘も確かに身体を許すと納得していた。

 今まで娘は自分達両親も含めて見た目をバカにしていた。

 だけど目の前の男の子はそんな欠点よりも長所を見て反論してくれる。

 自分達よりは余程、信頼できるかもしれないと考えてしまう。


「そう……」


 それでも疑問はある。

 どうして娘に手を出したのか?

 娘にどれだけ好意を持っていたとしても見た目の容姿が手が出せなくなるはずだ。

 ロリコンでもない限り。


「娘に手を出した時点で私は貴方をロリコンだと思っているわ。それなのに何で否定をしたの?ロリコンじゃないなら、そもそも手を出さないわよね?」


「………向こうから誘ってきて我慢がどうしても出来ませんでした。いえ、お互いに思い出してみれば妙に最初から理性が無かったような……?途中からヤルのが当たり前の空気になっていたような……?」


 目の前の少年の言葉に何となく自分にも見覚えがある。

 今もそうだが急に娘のことや目の前の男の子が忌々しくなったことを思い出す。

 それと同じなのか確認する。


「もしかして直前まではシようなんて思ってなかったのに急にシたくなって我慢できなくなったとか……?」


「?よくわかりますね」


「…………もしかして私たちの家でヤりましたか?」


「…………」


「答えてください」


「…………」


「私にとっては必要な事なので答えてください」


「………ハイ。フェアニ先輩の家でシました」


 相手の母親にどうしてそこまで言わなくてはいけないのだと考えながらアウルは答える。

 当然、答えるときも遠慮があり黙秘をしようとした。

 だが相手の圧が答えざるを得なくする。

 そして答えさせられた内容が恥ずかしくフェアニの母親から視線を外してしまう。


「………我が家は呪われているのかしら?一度、お祓いをしてもらった方が良いわね」


 アムルは目の前の女性が何を言っているのか理解が出来ない。

 まるで妊娠してしまう行為に奔ってしまったのも家に原因があるような言い方だ。


「それで貴方はこれからどこに行くの?」


 これ以上は話を聞かせないためか話題を切り替えるフェアニの母親。

 アムルも聞かなかったことにして行き先を答える。

 どんな理由があろうとフェアニが授かったのはアムルの子供だ。

 それを呪われた家を原因にして否定するのは卑怯だと思っていた。


「今から服屋に行くんです」


「は……。ふ「家から追い出されて服はこれしかありませんし、退学になった以上制服を着続けるのも問題ですし……」……追い出されたの?」


「はい」


 のんきに服屋に行くことに文句を言おうとしたが家から追い出されたと聞き理由を知って怒りも消える。

 むしろ、追い出されてそんなに時間も経っていないと想像できるのに直ぐに必要な行動を起こしていることに感心してしまう。


「そう……。なら私たちの家に来る?」


「え?」


 目の目の女性が言っていることが信じられなかった。

 大切な娘を孕ませたのに受け入れてくれるなんて正気かと疑ってしまう。


「来るなら寝るときは縛らせてもらうけど、それで良いのならね」


 娘を孕ませた以上、当然の行動だろう。

 縛られていたとしても外で野宿するよりはマシだとアウルは頷いた。

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