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二五八話

「ねぇ、フェアニ?貴女のお腹の中に赤ちゃんがいるってホント?」


 そして翌日、学校ではフェアニに対して多くの者が集まっていた。

 目的はフェアニのお腹にいる赤ん坊についてだ。

 学校に来ている全員がフェアニのお腹の中に赤ちゃんがいることを知っている。


「………何を言っているだ、お前?」


 そしてフェアニは誰にも言っていない。

 知られたのも母親だけのはずなのに何で学校の皆が知っているのか疑問だ。

 どこで漏れたのか想像も出来ない。


「あと父親は一年生のアムルっていう子なんだよね?出産するの?相手は養えないと思うけど大丈夫?」


「…………」


 フェアニは父親まで特定されていることに冷たい汗が流れる。

 本当にどこからそんな情報が流れているのか不思議だ。


「私が妊娠しているって誰が言ったんだよ?しかも何でお前ら信じてんの?」


「……?誰がとかじゃなくて皆知っているよ?」


 誰が、どうして知っていて学校の皆に伝えたのか疑問だ。

 妊娠していることを知っているのは母親だけ。

 それでも知ったのは家で検査薬を使っての結果だから、まだ病院に行って調べてもらっていない。

 だから病院で働いている家族から教えてもらうことはあり得なかった。

 

 残ったのは母親だけだが、それもフェアニはあり得ないと断じる。

 子供を産むことに協力してくれると言ってくれたのに、周りに伝えるのは嘘になるからだ。

 興味深い視線に晒されてストレスが溜まってしまいそうだ。


 アムルもいるが、子供を授かるようなことをしたのは一回だけ。

 そして妊娠したことも伝えていないから、アムルもあり得ないと判断している。


「皆って、いつからよ?昨日まではそんな素振りは無かったじゃない!」


「あれ?」


 フェアニの疑問を聞いていた者たちは、自分達も何時から知っていたのかと疑問に思ってしまう。

 気付いたらフェアニがアムルとの間の子を妊娠していることを知っていた。

 そして、それは他の皆も同じで背筋が凍ってしまう。

 全員が言われるまで気づかずに当たり前の情報としてインプットされていた。

 まるで洗脳されてしまったような恐ろしさに皆は考えることを止めてしまっていた。


「………それで産むの!?」


 恐怖から思考を止め、別のことに意識を割こうとした内容がそれだった。

 先程までの話題とあまり変わっていないがクラスメイトからすれば、どうして自分達が知っているかより赤ちゃんを産むかどうかの方が気になってしまう。

 

 自分の身近な相手が学生出産するかもしれないという話題なのだ。

 アムルもフェアニもバカだとは思っているが産まれてくる子供に罪は無い。

 出産するまではフォローしようとは思っている。


「フェアニ!先生が職員室に呼んでいる!」


 だけど、きっと退学処分を受けて学校からいなくなるのだろうと予想してしまっていた。

 いまだ学生なのだ。

 それなのに子供を授かって育てられるのかと呆れてしまう。

 学校側も学生が妊娠したとして風紀が乱れていると思われたくなく追い出すかもしれない。

 もし、そうなったら笑ってやろうとは思っていた。




「来たか……」


 職員室には学校に在籍しているほとんどの教師とアムルがいた。

 呼ばれたことで色々と予想はしていたが、やはり妊娠したということについて確認するために呼ばれたのだと理解できる。


「君たちが子供を作ったという噂が流れているが、どういうことかね?」


「え!?」


 アムルは子供が出来たと聞いて顔を赤くしてフェアニを見る。

 まさしく心当たりがあるような反応に事前に会って話を合わせることが出来なかったことを悔やむ。


「その反応は心当たりがあるみたいだな……」


 学生なのに子供を作ったということに怒るような視線を向けられる。

 だがフェアニは、まだ何となると思っていた。


「別に恋人なんだし関係ないだろ。誰だって恋人同士ならやっているし。それよりも何でアンタらも妊娠したっていう証拠も無しに怒ってんだよ。クラスの皆もそうだったけど証拠も無しに思い込みだけで確信しているのは何なんだ?大人だけクラスの連中とは違うと思っていたけど勘違いだったな」


「なら、子供は授かってないと……?」


「だから何で子供を授かったと思っているのか疑問なんだけど?」


 フェアニの答えに教師の一人は腹を叩こうとする。

 それに対してフェアニは一瞬で距離を取り腹を護るように抑えている。


「…………っ」


 フェアニの顔は大切な者を傷つけられそうになって必死に護る顔をしていた。

 それで教師の中でも特に子供がいる女性は妊娠をしているのだと直感する。


「ねぇ、フェアニちゃん?」


「何だよ……?」


「私は結婚していて子供もいるわ。だから今の行動と表情で妊娠していることが察することが出来るの」


 その言葉にフェアニは顔を青くする。

 本当ならもう少しの間、学校に通いながら隠すつもりだった。

 だが自分よりも色々と経験している大人の女性もいて隠し通すことは出来なかった。


「そうか……!そうか……!!」


 まだ学生なのに子供を授かったことに教師たちは怒りを抱く。

 そして他の生徒たちも同じようなことを起こさないために見せしめとして校内の二人の名前と顔を晒し退学にする理由を公表しようと決める。

 また必要とあれば謝罪会見もしようと考えていた。

 上手くいけば学校側は何も悪くないのに、ごく僅かな一部の生徒のせいで謝罪することになったのだとイメージを持たれることが出来そうだった。

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