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二四二話

「だから何?恋人として付き合ってストレスが溜まるだけなら別れろよ。相性が悪かっただけだろ。どうせ相手もストレスが溜まっているかもしれないし」


「それは……」


 ストレスが溜まるのは自分だけじゃないと言われてアムルも心が揺れてしまう。

 そんな姿は見せていないが隠しているだけなんじゃないかと想像した。


「付き合って、そこまで時間が経っていないんだろ?なら別れることになっても、そこまで気にしないって」


「そうかもしれないですね」


 たたみかけて説得をするフェアニにアムルも頷いてしまう。

 隠していたとしても付き合ってストレスを溜めるぐらいなら確かに別れた方が良いと納得してしまっていた。


「ご飯が出来たわよ~!」


「よしっ。それじゃあご飯を食べようか」


 母親からご飯が出来たと聞いてフェアニはアムルの腕を引いて下へと降りる。

 まだ迷っているかもしれないが、まずは腹を膨らませる方が重要だ。

 決めるのは後で良いと考える。

 時間はまだまだ余っている。

 できれば早く決めて欲しいのは自分の我がままでしかないと考えていた。



「ところで二人って恋人かしら?」


「違う」


「まぁ、そうよね。どれだけ可愛くて家事も出来てもこんなに小さかったら、そんな目で見られないか!」


 母親の言葉にフェアニは苛立ちを覚えつつも何も言わない。

 いつものことだから何を言っても意味がないと諦めていた。


「いえ普通に魅力的だと思いますけど……」


 だからアムルの言葉に驚く。

 まさか、本人が目の前にいるのにそんなことを言われるのは思ってもいなかった。


「え?こんなに色々と小さいのに?」


「見ず知らずであったばかりなのに色々と心配してくれたり、相談に乗ってくれていますし。学校では学年が違いますけど頼りにされていると思いますよ」


 アムルの言葉にフェアニは顔を赤くする。

 会って間もないのに、そこまで言ってくれるのは嬉しかった。


「そうなのね……」


 それでもフェアニの母親からすれば心配で不安になる。

 どれだけ内面が魅力的だとしても、人はどうしても外面も気にしてしまう。

 フェアニの後輩は真正のロリコンじゃないかと疑っていた。


「そう言ってくれると嬉しいわ。ところで料理は美味しいからしら?」


「えっ、はい。とても美味しいです」


「そう良かったわ」


 今のところフェアニに向ける視線は尊敬だと母親は考える。

 もしその視線に欲情が混ざっていたら引き離すつもり満々だった。



「それじゃあな」


 夕食も食べ終わり、フェアニとその母親が玄関でアウルの見送りをする。


「はい、また」


「また来ても良いからね?」


 結局、夕食を食べ終わるまでにフェアニの父親は帰ってくることはなく、そのことにアムルは安心する。

 そしてフェアニの母親の言葉に曖昧に笑って誤魔化す。

 流石に今度こそ父親に会うのは勘弁したかった。


 そしてフェアニの母親は是非ともアムルに来て欲しいと思っていた。

 もし情欲の視線を送っていたら気付くことが出来るし、時折確認したかった。

 欲情を抱いたら自分の娘だけでなく近隣の子供たちも安全じゃないと、どんな手を使っても牢屋にぶち込む気満々だ。

 当然、自分の夫にも話して相談するつもりだ。


「ごちそうさまでした。美味しかったです」


 頭を下げて去っていくアムルを見送って今度は自分の娘を見るフェアニの母親。

 自分の娘が去っていた男の子にどう思っているのか確認したかった。


「フェアニ、聞きたいことがあるけど良い?」


「何だよ?」


「もしかして、あの子のこと好きになったりしていない?」


「…何を言っているんだ?」


 上手く誤魔化しているが母親の勘で好意を抱いているのを察する。

 もし娘がアタックしていった結果、気の迷いで付き合うことになってしまうかもしれないと警戒してしまう。


「話はそれだけなら部屋に戻るから」


 これ以上は聞かれたくないのか娘は部屋へと一足先に戻っていった。


「絶対にあの人と相談する必要があるわね」


 娘の欲情する男は変態だとフェアニの母親は確信している。

 そして、それは父親も同じだ。

 そんな男を義息子として受け入れたくなかった。




「何でバレた?」


 フェアニは自分の部屋に戻り、赤くなった顔を枕で押し隠しながら疑問を持つ。

 バレるようなヘマはしていない自信があった。


「まぁ、良い。あいつを堕として私でも結婚できるって証明してやる……」


 学校やそれ以外にも友達がいる。

 皆と遊んで楽しいし、何かにチャレンジして失敗したら悔しいし、友人にバカにされたら悲しい。

 どれだけの思い出があっても結婚は出来ないと憐れむ言葉は決して忘れることは出来なかった。


「絶対に逃がさないし、絶対に結婚してやる……!」


 そして、どいつもこいつも見返してやると心に決める。

 アムルは自分の胸に顔を押し付けられて顔を赤くしていたから勝算もある。

 それに情けなくて可愛いと思っていたアムルがに自分の母に言い返した姿にギャップもあって更に顔が赤くなる。

 そして言い返してくれた内容も出会ったばかりなのに自分を理解してくれているようで嬉しかった。

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