二四一話
「さてと服を買うからお前も選べ」
放課後、アムルが連れて行かれたのは服屋だった。
雑用はこれなのかと考える。
「それじゃあ、まずはコレとコレだな」
そう言って見せてきたのは白と黒のワンピースの二種類。
それをアムルに見せて選ばせる。
「それでお前はどっちが似合うと思う?」
アムルはフェアニが選んだ服を運ぶ役目だと思っていたから好みを聞かれたことを驚いてしまう。
そして白い方を選ぶと黒のワンピースは戻して、白のワンピースだけを手にする。
「なるほど、こっちね。じゃあ次を選ぶわよ」
アムルの持っているカゴの中に服を入れてから次の場所へと移動する。
そこでも何種類か選んでアムルに決めさせる。
フェアニはアムルが選んだ物を文句を言わずに決めていく。
ギネカのように選んだ物を一々文句を言われずに済んでアムルはホッとしていた。
そのまま服を何種類か選び、更衣室へと移動する。
選んだ物を実際に着て似合っているか男の眼からも確認するつもりだ。
そして似合っていたら買う予定だった。
「うーん。これ似合うか?」
当然、選んだ服の中には似合わない者もある。
最終的に似合っていると思って決めたのがアムルだから似合わない服を見て自分の見る目を後悔する。
それでも似合っているのが何着かあったが、全て似合っていなかったら絶望していた。
「………似合わないです」
「だろうな。結構な数を選んだけど似合っていたのは、ほんの僅かだったな」
事実だから何も言い返せないアムル。
そして元の服に戻ったフェアニがアムルのカゴに似合わなかった服と似合っていた服を別けて入れた。
「それじゃあ似合わなかった服を返すから手伝えよ」
似合わなかった服だけと言われて、また服を選ぶのかと予想する。
似合っている服も数着だから、まだ買うのかもしれない。
「これは……、たしかここだよな」
少しずつ戻していってカゴが軽くなっていく。
そして手にしているのは似合っていた服だけになった。
「ふぅ、やっと全部戻せた。後はレジでそれを買うだけだな」
どうやら似合っていた服は全部買うらしい。
アムルはそれが少しだけ嬉しかった。
「サンキュ。ついでだし上がって行けよ」
フェアニの家まで買った服を買った服を持たされアムルは案内される。
服を買った際に代金を払ったのはフェアニだがアムルは何とも思わなかった。
恋人だから当然だ。
むしろ払わされていたら文句を言っている。
「いや恋人がいるのに別の女の家に入るのは流石に……」
「入れ」
「ハイ」
アムルは拒否しようとするがフェアニの言葉に拒絶できなかった。
命令しなれているのか、拒否されるなんて考えてもいないと伝わってくる言葉の言葉のせいかもしれない。
「ただいま」
「おかえり。その男の子は誰?」
「後輩」
そして家の中に入ると女の人が出迎えてくれる。
おそらくはフェアニの母親だろう。
「そうなの。その子に持っている服は何かしら?」
「私の服。色々手伝ってもらったから夕食も食べて貰いたいけど大丈夫?」
「え」
「大丈夫よ。それじゃあ、早速準備するわね」
勝手に夕食をフェアニの家で食べることを決められるアムル。
流石に悪いと断ろうとするが、フェアニの母親は話を聞かずに準備しようとしている。
そしてフェアニに腕をとられてアムルはフェアニの部屋へと連れ込まれてしまった。
「何か文句あるかよ?」
「いえ………」
部屋に連れ込まれてアムルは何も言えなくなった。
可愛らしい色合いの部屋にぬいぐるみ達。
まさしく女の子の部屋で緊張してしまう。
彼女の部屋の中にも入ったことが無いから、これが初めの女子の部屋だった。
「………んな、キョロキョロして見るなよ」
そしてフェアニも自分の部屋に男子を入れるのが初めてで顔が赤くなっていた。
自分の部屋をマジマジとみられていて恥ずかしくなる。
「服を代わりに持ってくれてサンキューな。今度、選んでもらった服を着させてもらうよ」
女の子らしくない口調だが、可愛らしい部屋で生活している女の子の言葉だと考えると可愛く感じてしまう。
自分の恋人より可愛いんじゃないかと思ってしまう。
「それにしても、お前何で恋人と今も付き合っているんだ?」
「はい?」
「はい?じゃなくてさ。昨日はあれだけ私に愚痴っていて気にならない方がおかしいだろ?それだけ不満なら別れた方が良いんじゃないのか?」
アムルは急に別れた方が良いと言われて黙ってしまう。
もしかしたら、これを質問して誰にも聞かれないために家にまで連れてこられたのだと想像する。
「ハッキリ言って、あれだけ愚痴を零すのなら別れた方が良いと思う。あの時点で見ず知らずの私にまで相談しにくるし」
フェアニの言葉に冷静に考えて確かにとアムルは頷いてしまう。
それでも別れることは今は考えれなかった。
自分から告白して付き合ってもらったのに、ストレスが溜まるからと自分から別れるのは最低じゃないかと思う。
「はぁ~」
それを伝えるとフェアニはため息を吐いた。




