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二三二話

「うん?」


「どうしたの?お父さん」


「いえ、気にしなくて大丈夫ですよ」


 父親は妻が中に入らず引き返したことに疑問を持つがスルーする。

 何か忘れものでもしたのかと考えていた。


「それなら、良いけど……」


 そしてレアーも父親の言葉に納得していた。

 父親を信頼しているからこそ気にも留めなかった。


「それと前に薬をありがとうございます!お陰で使った相手は私に依存してくれるようになりました!」


 その報告を聞いて父親は嬉しそうに頷く。

 娘の役に立ったのだと嬉しかったせいだ。


「待って下さい………!」


 依存させたと聞いて愛人は話を詳しく聞こうと思った。

 思った以上に犯罪的な方法で恋人を作ったのだと聞いて焦る。

 そもそも恋人がいること自体に驚く。

 そんな話は聞いたことが無い。


「相手はライクという子ですよね?どんな風に依存したんですか?」


 そして二人は愛人の言葉を無視して会話を続ける。

 待ってと言われたのに聞き届けている様子は一切ない。


 そしてライクと聞いて愛人は困惑する。

 それは確かレアーを虐めていた子で同性のはずだっと思い出す。

 もしかして依存させた相手は恋人でも無いのではないかと、ようやく思い至った。


「恐怖と安堵が入り混じった表情を毎日していますよ。私が誰だか知っていても抱き締められないと眠れなくて、その度に首に手で軽く触れると可愛いぐらいにビクつくんです」


「へぇ、それは見てみたいですね」


「女の子の寝顔でもありますからダメです。別の者にしてください」


「それは残念です」


 愛人は二人の会話を聞いてライクに同情してしまう。

 やったことは許されないのかもしれないが反応を玩具にして見られるのは嫌だろう。

 必要以上に怯えさせられているんだろうなと考えてしまう。

 過去の自分の行動を後悔しているんだろなと予想する。


「ところでお父さん。事故のことに関しては誰も復讐しに来ないよね?」


「えぇ。最近では、その仕事もしていませんし来たとしても受け入れることは無いでしょうね。こちらからすれば、ちゃんと前を見ていれば防げた事故ですし。今回のことが無くても、いずれは余所見をして事故を起きていたと思いますよ」


 身内だから贔屓をしていると思ったが、それ以上に父親の言葉に納得してしまった。

 たしかに車を運転していたのに見惚れて事故を起こすなんて余所見をしていたということだ。

 危険行為でしかなく、レアーを恨んで逆恨みでしかなく復讐とはいえない。

 だからこそ父親も記憶を消したのかもしれない。


「そっか………」


 レアーは復讐に来ないと聞いて安心したような、少しだけ残念な表情を浮かべる。

 そのことに愛人は疑問に持ち、父親は何故か察した表情をする。


「さっきも言っていたけど本当にそっくりですね。俺も復讐とか来ないのか期待もしていますよ」


「ですよね!?復讐に来るとか楽しみですよね!?」


 レアーの言葉に愛人は顔を青くする。

 父親の方は良いのだ。

 相も変わらず意味不明な能力から信頼できる。

 だが娘に関しては違う。

 幼いころから育ててきたから、そんなものを期待するレアーに心配してしまう。


「止めて!!」


 だから愛人は絶叫した。

 もしここに妻もいたら同じように止めていただろう。

 父親と同じような能力は確実に無いし復讐とかされたらと思うと不安だ。


「貴女はお父さんと同じような能力を持っていないんです!危険だから止めてください!今も私たちが復讐されていないのはお父さんの能力のお陰ですからね!?」


「………わかっていますよ」


 不服そうに頷くレアー。

 復讐の相談をできるのは父親だけだと理解している。

 それでも復讐をされに来るのを期待しても仕方がないじゃないかと思っていた。

 誰にも気付かれずに行動をするのは寂しい。

 それが愚かなことだとしても気付いてほしいと祈ってしまう。


「お願いだから、貴女まで止めて……。貴女はお父さんじゃないの…………」


 不服そうにしてしているのが気付いたのか必死に止めようとしている愛人に、レアーも反省する。

 ずっと自分を見守って育ててきた者たちの一人だ。

 考え直すのも当然だ。


「まぁ、女が復讐されると聞いたら色々なことが考えられますからね。逆に男は怪我や最悪死ぬことで済むこともありますし」


 色々という言葉にレアーも愛人も身体を震わせる。

 予想してしまったのは性関係のこと。

 好きでも何でもない相手に身体を開くのは嫌悪感が湧く。


「それが嫌なら復讐や憎悪に巻き込まれない様にした方が良いと思いますよ。たまに無理矢理、共犯にさせられて復讐された者もいますし」


 そのぐらいのことは知っているとレアーは頷く。

 どれだけの数の復讐をレアーが見てきたのは父親も母親も愛人も知っている。

 可愛らしいメイド服を着てお茶を出していたのは恥ずかしい思い出だ。


「だから相手に流されないように意志はしっかり持ちましょうね。流されたら地獄に落ちる可能性もあるんですから」


 父親の言葉にしっかりと頷くレアー。

 連帯保証人等や隣にいたという理由だけで復讐に巻き込まれたくない。

 それに完全に恨みを買うのはゼロにするのは無理でも少しでも減らしたいと考えていた。

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