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二三〇話

「それではさようなら。もう二度と会うことが無いように祈っておきますね」


 レアーはアウルの両親を後にして帰ろうとする。

 用はもう済んだのだ。

 一生、呪われて苦しんでいろとレアーは思っていた。


 そして本当に育ててくれた父親たちに感謝する。

 決して狂わず自殺しないようにしてくれたのだ。

 正気でいるからこそ苦しむし、更に苦しめることが出来る。

 すごく有難かった。


「アウル!!」


 レアーだと言ったのにアウルと呼ぶかつての両親にレアーは不快な気分になる。

 暴力でも自分はアウルではなくレアーだと語ったのに、アウルと呼ぶ両親が腹立たしくなる。


「頼むから……っ!!」


 何かを言いそうになった母親をレアーは裏拳を叩きつける。

 話なんて聞きたくも無かった。


「頼むから……?もしかしてやり直そうと思っているんですか?………ふざけないでください!!」


 殴った母親を髪を掴んで殴りやすい位置まで持ちあげ、もう一度殴る。

 レアーはふざけたこと言おうとする母親に腹が立っていた。


 散々、生まれて来なかったら良かったのにと言ってきた癖にやり直せると思っているが怒りを覚える。

 それを実の両親に言われてどれだけレアーが傷ついてきたのか知らないのだろう。

 だから、やり直せると思っているのかもしれない。


「どれだけ産まなければ良かったと言われて傷ついた来たのか貴女に分かりますか!?私は絶対に二度とあなたたちとは暮らしません!!」


「知っているわ……」


「は?」


「どれだけ傷ついたのか知っているわよ!何度も何度も悪夢で見て経験した!!だから、やり直させて………」


 涙を流して頼むかつての母親。

 それを見てレアーは思いきり腹を蹴った。


「おごぇ……!!?」


「「は?」」


 ショックを受けながらも意識を戻していたライクとかつての父親はそれを見て呆然とする。

 涙を流して頼んだのに、それを無視して蹴ったのだ。

 アウルの不信感が敵意が伝わってきて、どれだけ自分達に憎悪を抱いているのか理解してしまう。


「はぁ……。何度も言いますが私の名前はレアーです。そして父親も母親も喫茶店の店主。もうあなたたちの娘ではありません」


 レアーはそれだけを言って今度こそ寮の部屋へと戻る。

 二度とアウルとして生きることは無いとかつての両親とライクに示していた。




「ただいま………」


 ライクは寮の部屋に戻るといつものように声を掛ける。

 きっとレアーはいないのだろうなと考えていた。

 もし自分だったら自分を虐めていた相手と一緒に暮らすなんて耐えることは出来ない。


「おかえりなさい」


 なのに部屋の中からレアーの声が聞こえてくる。

 それが恐ろしく、それ以上中に入ることを恐れてしまう。


「どうしましたか?」


 笑顔で向こうから来たレアーが恐ろしい。

 もしかしたら虐めていた復讐として今まで耐えていたのかもしれない。

 そして正体がバレた以上、復讐が始まるんじゃないかと考えてしまう。


「レアー………」


「くすっ。ほら来てください」


 怯えていてるライクにレアーは微笑んで手を広げる。

 それを見たライクは当たり前のようにレアーへと近づいていく。

 そして広げられた腕の中にライクは包まれてしまう。


「え?」


 あまりにも自然に自分から抱きしめられに行ったことにライクは困惑してしまう。

 自分のことなのに意味が分からなかった。

 そしてレアーはそのことに満足げな笑みを浮かべる。


「きっと貴女は私の腕の中じゃないと安眠も出来ないしょうね。可哀想に……」


 それを否定しようとライクはレアーの腕の中から抜け出そうとするが力が入らないし、そもそもやる気さえも起きない。

 むしろ更に自分から力を入れて抱きしめてしまっている。


「本当に可愛いなぁ……。こんなに私に依存してしまって、いつでも殺してもオッケーだと言っているようなものですよ?」


 そう言って首に手を掛けられるライク。

 その上に軽く絞めらて命の危険を覚えてしまう。


「ねぇ、私はあなたたちを一生絶対に許さない。呪いを解く方法を見つけても教えない。だから、ずっとずっと苦しんでくださいね?」


 レアーの言葉にふざけるなと思う。

 だけどライクはレアーを振りほどくことが出来ない。

 レアーの全てを受け入れてしまっている。


「ここまで依存したら、貴女は私に何をされても逃げることは出来ませんよ。本当にどれだけ私に甘えているんだか……。私だから目的もあって受け入れていますが、他の者だったら拒否されているでしょうね?」


「あ………」


 目的があったからとはいえ今まで受け入れてくれたレアーの行動を思い出すと否定できなかった。

 自分だったらあまりにも甘えて来ていて嫌だった。


「ほんっとうに可愛い!!きっと私だけじゃなくても貴女は誰かに抱きしめられないと寝られないんじゃない!?卒業して離れ離れになるまで、ずっと可愛がって上げるからね!」


 レアーの言う通りだとしたら自分以外に誰かいないと眠ることが出来ないことにライクは顔を青くする。

 恋人でも作らない限り寝ることすら出来ないのだろう。

 そして、それを更に悪化させようとするレアーにライクは絶望した。

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