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二三話

 事務員は朝、起きると学校をサボって四人の女子生徒を探す。

 何となく今日は面白そうなことが起きると思ったからだ。

 手に後でネットに残せるようにできる機材を手にして街中を走り回る。


「………今回の事件、手を出した?」


「そんなわけないでしょ。確かに見ていただけの連中もムカつくけど、他の奴らが手を下しているみたいだし」


「私たちの獲物を奪われて何をしたいんだが!」


「私たち相手以外にも手を出していたんじゃない?」


「………それもそっか」


 四人の女子生徒は話しながら歩いている。

 今はまだ何もされていない。

 だけど学校からはまだ距離があり、そして近くには事務員に相談していた四人の女子生徒への復讐者たちがいる。

 今から事件が起きるのかとワクワクしながら事務員は見ている。


「………で」


「だから……」


「おぉ!!」


 四人の女子生徒が曲がり角を曲がろうとした瞬間に全員がトラックの中に引き込まれた。

 その手際の良さに思わず事務員は感心の声を上げる。

 そして連れ込んだトラックが走り出した後を付いて行く。

 当然、事務員は自分の足で追いかけていく。

 身体能力を上げる魔法はあるが、それでも普通は追いつけないのだが事務員は関係ないとばかりに余裕で追いつき後を付いて行く。


「止まった?」


 そしてトラックが止まった先には誰もいない廃工場。

 何でこんなところに連れてきたのか事務員は首を傾げる。

 誰かの家の中に連れ込んで監禁するんじゃなかったのかと思い出す。

 そしてネットに映像を残すために準備をして撮り始める。

 生放送だ。


「………っくそ!こんな明るい時間でなければ家に連れ込めたのに!」


 あぁ、と事務員はその言葉を聞いて納得する。

 トラックに連れ込んだ四人の女子生徒を家に無理矢理にでも入れるのはマズい。

 こんな明るい時間だと誰に見られるものか分かったものじゃない。

 最初にトラックに入れた瞬間も誰かに見られたかもしれないが全員が顔を隠して一瞬で終わらせていたから多分、大丈夫だろう。


「はぁ!」


 トラックの中にいる女子生徒を運ぼうとしたのか再度、トラックの中に入った一瞬後吹き飛ばされていた。

 しかも気絶しているのか動かない。


「アグレッシブだなぁ」


 事務員はその姿を見て再度感心する。

 出てきた少女たちは全員が縛られていたのか紐が身体にいたるところに張り付いてあり、口を塞いでいたがガムテープをその手ではずしていた。

 そして事務員は女子生徒をさらった者たちに冷めた視線を送る。

 事務員からすればさらってから、ここまでくる間に女子生徒たちは拘束を抜け出していたと想像できるからだ。

 もしかしたら、わざとさらわれたんじゃないかと思う。


「もしかして私たちに無理矢理、売春させた奴らの親ども?」


「は?」


「そんなことを言っても親たちは何も知らないんじゃない?」


「それもあり得るか」


 女子生徒たちの会話に何を言っているんだと困惑する。

 だが無意識にでも、ある可能性を除外していた。

 それは自分達の子供が外道行為をしたことを。


「………事務所に来た時も思ったけど、やっぱり知らないのか?四人とも自分たちの子供に何をされたのか?」


 それを知っていたら復讐は止めていたのかもしれないし、だから何だと変わらないのかもしれない。

 事務員は知っていた、どうだったのだろうと想像する。


「意味がわかならい「意味がわからない!?私たちはあんたらの子供たちに無理矢理売春されたのよ!しかも目の前で私たちを犯した男から金を受け取っていた!そんな日を何日も過ごさせて!私たちは子供も産めなくなった!!」……なにを言って」


 事務員はそれを久しぶりに聞いてそういえばと思い出す。

 それを聞いて男であるからか辛さは理解できなかったが辛そうな表情に同情した。

 相談所で聞いたから、その場にいたバイトの女子が慰めてくれて助かった。

 男の子もいたが深く同情するように労わっていた。


「だから、貴方たちにも復讐する……!」


 本人だけではなく、その家族にも復讐するつもりらしい。

 事務員はすっかり本人だけで済ませると思っていた。

 だけど実際は違い、そのことに笑みを浮かべる。


「ふざけるな!そんなこと信じられるわけないだろ!」


 震えながら否定する相手の親たち。

 証拠はあるのかと口々に叫ぶ。


「あるわよ。この場に持って来てないけどね」


「えいっ!」


 両者の言い合いの最中に場に合わない掛け声と一緒に崩れ落ちる音が響く。

 そちらを見ると、いつの間にか移動していた女子生徒の一人が鉄棒を振り下ろしていた。

 そのすぐ下には頭から血を流して倒れている大人がいる。


「いつまで喋ってんのさぁ。こいつらのせいで、あんな目に合ったんだよ。さっさと殺そう?」


 その言葉に事務員は確かにと頷く。

 親たちが子供たちを犯罪に走らせないように育てればこんなことにならなかった。

 理不尽かもしれないか、否定することも出来ないだろう。

 それにしても倒れている大人は頭から血が流れて全く止まる様子が無い。

 このまま放っておいたら死ぬだろう。

 それを無視して事務員は殺し合いを始めようとする両者をネットに挙げながら面白そうに見ていた。

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