二二二話
「ふふふっ」
レアーは寮にある部屋に戻ると早速、父親に貰った香水を自分に使う。
密着しなければ意味は無いらしいが、それでもレアーにとっては十分だ。
「あれ?レアー、どうしたの?機嫌が凄く良いみたいだけど……」
「お父さんに香水を貰いました!前から欲しかった香水ですから嬉しかったです!」
ライクにレアーは機嫌が良い理由を香水を貰ったからと伝える。
この薬でライクを更に自分に依存させるつもりなんて言うつもりは無かった。
「へぇ。私も使って良い?」
「ダメです!」
ほとんど反射的に拒否をしたレアーにライクは残念に思いながらも受け入れる。
それだけ父親のことが好きなんだろうとライクは考えていた。
「そういえば今日も一緒に寝ますか?」
「うん………」
一緒に寝るのかという疑問にライクは恥ずかしそうに顔を赤くしながらも頷く。
この年齢になって抱きしめられて寝るというのはやっぱり恥ずかしいのだ。
それでも一緒に寝るのは、その方が深く眠ることが出来るからからだった。
「それじゃあ寝ましょう」
そして、眠る時間になるとベッドの中にレアーが誘ってくる。
ライクはレアーのベッドの中に入りレアーの胸に顔を埋める。
そうするとレアーが頭を撫でてくれて、ひどく落ち着く。
「良い匂い……」
ベッドの中に入ると良い匂いがしてくる。
いつも匂いを嗅いでいるが、普段とは違う匂いについ言葉が出てしまっていた。
「ふふっ、ありがとうございます。お父さんからもらった香水は他者を落ち着かせる匂いをしているんですよ」
レアーの答えに、だからいつもより良い落ち着くのだと納得するライク。
相変わらず頭も撫でられて心地よい。
「~~~♪」
そんなライクにレアーは悪戯心が湧いて子守歌を歌い始める。
それがまた心地よくライクは安らぎまどろんでしまう。
子守唄を歌われているという恥ずかしさは覚えていない。
ただ居心地よさに甘えて眠ってしまっていた。
「本当にいつもより甘えていますね」
自分に抱き着いて眠っているライクを見てレアーは父親からもらった香水を見る。
密着しなければ効果は無いらしいが、その分効果は高い。
このまま使っていけば完全に自分無しでは生きていけなくなるんじゃないかとレアーは顔を歪める。
「もっともっと甘えて下さいね?真実を知っても逃げられなくなるくらいに……」
完全に依存して逃げられなくなったら真実を話す。
その時の相手が誰だか分かっていても甘えることしか出来なくなった表情が楽しみだ。
父親や母親に子供の影響に悪いと言われたが隠れてやれば問題ないとも言われた。
「そういえば墓参りはいつにしましょうか?」
まだ墓参りには行っていない。
自分の墓に行くのは不思議な気分になる。
「今度の日曜日なら空いていますよね?」
基本的に日曜日はどこも休日だから墓参りにも行けるはずだとレアーは考える。
明日になったら相談しようと思っていた。
「私もそろそろ寝ますか……」
良い加減にレアーも起きるのが辛くなってきた。
それでも抱きしめるのは変わらずにレアーは寝ようとする。
「………あ。やめ……!」
だが眠ることは出来なかった。
原因はライクの悪夢だ。
聞こえてくる悲鳴が寝かせてくれない。
最近の悩み事だった。
ライクが苦しんでいることに関しては良い。
むしろ、もっとヤレと考える。
だが密着しているせいで悪夢のうめき声がハッキリ聞こえてきて、うるさくて眠れなかった。
「あぁ……!?」
苦しんでいるのを見るのは愉快だが、こうも眠れない日が続くのは辛い。
このことも相談すれば良かったとレアーは後悔する。
「ふぅ……」
「あっ……。ゆる……!」
レアーがライクの首に後ろから触れると更に悲鳴が強くなる。
目を瞑りながらレアーはそれを聞いていく。
以前までは悲鳴の度に眼を開けていたが、今は悲鳴を上げても絶対に眼を開けないようにする。
そうすることで少しでも目を休ませたかった。
「………すぅ」
だがレアーは時間が経つと、それを子守唄にして眠ってしまう。
それは最初のライクと同じように安らいでいた。
「………うんっ」
レアーは起きて身体を伸ばす。
久しぶりにスッキリ眠れたことで気分が爽快だった。
「愉快愉快だとは思っていたけど子守唄代わりにもなるんですね……」
ライクの苦痛の声が子守唄代わりになることを実感して更に気分が良くなる。
睡眠不足も解消でき、目覚めもスッキリしていて最高だった。
これならライクを抱きしめている不快感も我慢できる。
だけどそれは恥ずかしいが父親か母親、そして愛人の者と一緒に寝れば同じものを得れるモノだ。
だから惜しいとは全く思わない。
「さてと……」
レアーはベッドから出て今日も朝食を作り始める。
悪夢を見て精神的に傷ついているだろうから好きなモノを作って回復する必要があった。
「もっともっと苦しみますように………」
そう思ってレアーは思い出す。
今はライク一人に集中しているが他にも自分に暴力を振るった者たちを。
彼ら彼女らも何時か自らの手で苦しませたいとレアーは考えていた。




