表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
217/274

二一七話

「………ん?」


 レアーはいつものようにライクのうめき声で目が覚める。

 そして携帯端末を見るとメールが来ているのを確認する。

 送ってきた相手は父親であり急いで確認する。


「お父さんがメールを送るなんて珍しい。何かあったのかな?」


 メールは二通あり書かれていた内容はライクのこととレアーのことだった。


「やっぱり気付いていたんだ……」


 メールの一通には友達だと連れて来た子がかつて自分に暴力を振るった相手だと書かれていた。

 父親が気付いていたことに驚きはない。

 むしろ当然だと思っている。

 今もうなされている悪夢は父親がかけた呪いだとレアーは知っている。

 だから気付くのも当然のことだ。

 

 ただレアーがそのことに気付いていたのか予想できなかったらしい。

 こんなことだが父親の予想を超えていたことにレアーは嬉しくなる。


「二通目は……?ふふっ」


 二通目の内容には母親たちが心配して電話を掛けることが書かれていた。

 母親が心配してくれていることにくすぐったくなる。

 あの人たちに会えたことが本当にうれしく思えてしまう。

 医学関係の道を歩みたいと思っていたが本格的に喫茶店を継ぐことにも心が揺らいでしまっていた。

 それでも今はまだ医学関係の道を歩もうとは思っている。


「さてと朝食の準備でもしますか」


 育ての親たちが心配してくれていることにレアーは気分を良くして朝食の準備をする。

 今ならいつもより美味しく調理できそうだと気合が入っていた。




「…………おはよう」


「おはようございます。朝食は出来ていますよ」


 その言葉にライクは悪夢を振り払おうと朝食を摂ろうとする。

 レアーの料理は悪夢を見ていたことを忘れるぐらいには美味しかった。

 今日もレアーの料理に口を付けるとライクはかき込むように食べ始める。


「うっま……!!」


 今日はいつもよりレアーの料理が上手くて手が止まらないようだった。

 その様子にやはり今日は会心の出来だとレアーは拳を握る。

 例え相手がライクでも作った料理が美味しいと言われてレアーは嬉しくなる。

 実験として新しい調理法を試しても心も痛まないからライクという存在はレアーにとって都合が良かった。

 失敗した料理を食べさせても心が痛まないだろう。


「本当にレアーは喫茶店を継いだ方が良いんじゃないの?」


「ありがとうございます」


 そしてレアーは笑顔でライクに礼を言う。

 だが内心ではライクの言葉のほとんどはどうでも良かった。

 ライクの言葉で価値があるのは美味しいか不味いかだけ。

 目の前の女の意見何て全く聞き入れる気は無い。


「それじゃあ私は先に学校に行っていますね。少し早いでしょうけど用事を思い出したので」


「分かった。それじゃあお礼に皿は洗っておくから先に行ってて良いよ」


 ライクの言葉に礼を言ってレアーは学校へと今から向かっていった。

 本当は用事が無い。

 ただライクの目の前で母親と電話をするのが嫌だった。

 そして会話の内容で自分のかつてのアウルだとバレるのを警戒していた。



「何があったんだろう?」


 ライクはレアーが今の時間から学校に行ったことに疑問を持つ。

 だが何か困っている様子でも無かったし気にしないことにした。


「はぁ……」


 そしてライクは皿を洗いながらため息を吐く。

 レアーの料理は今まで食べて来た料理の中でも一番美味しかった。

 自分との圧倒的な料理の腕の差に嫉妬をしてしまう。


「私もレアーに料理を教えてもらえないかなぁ……」


 ライクは料理が出来ないわけでは無い。

 むしろ人並みに出来る。

 だだレアーの料理を食べて自分も同じくらい料理が出来るようになりたいと思ってしまう。


「頼めば教えてくれるか……?」


 だけど正直、教えてくれるか不安に思ってしまう。

 レアーもライクも毎日、部屋に戻ったら将来の勉強をするのが殆どだ。

 偶に息抜きとして遊びに行くこともあるが、そこまで頻度は高くない。

 断られる可能性もある。


「そもそも悪夢を見てしまっているとはいえ、うなされて煩いはずなのに文句を言うどころか朝食を作ってもらっているのよね……」


 自分の普段を考えて冷や汗を流すライク。

 物凄くレアーに迷惑を掛けていると再認識する。


「料理を教えてもらうよりも何か御礼に送った方が良いかもしれない」


 普段から頭を使っているし何か甘いモノをレアーに送ることを決める。

 ケーキなんてどうだろうと考える。

 甘いし女子で嫌いな者はほとんどいない。

 そうと決まれば今日の学校が終わったら買いに行くことを決める。


「それにしても……」


 悪夢を見る度に何度でも思うがアウルにそっくりだと思ってしまう。

 ただ、どれだけそっくりでもライクは別人だと思っていた。

 何故ならレアーの素顔を見たことはあるが魔眼の影響を受けなかった。

 魔眼の影響をオンオフに出来るなんて調べても出てこない。


「彼女のような子をこれ以上、増やさないようにしないと……」


 自分達の行いのせいで身近な者が死んだのは、かつてのクラスメイト全員のトラウマだ。

 だから似たようなことを起こさないため、そして防ぐために教師か医者になることを全員が決めていた。

 そして死んだ後にアウルに会って謝罪したいと思っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ