二一三話
「へぇ~。ここがレアーを育てた親の経営している喫茶店?」
「そうですよ………」
休日、ライクとレアーは二人でレアーの育ての親が経営している喫茶店に入った。
レアーからすれば友達を親に招待しているみたいで恥ずかしく感じる。
「良い雰囲気じゃない」
ライクは目を輝かせて喫茶店の内装を見る。
もし恋人が出来たら、この店を利用したいと思ってしまう。
「ありがとうございます。もしかして君はレアーの友人かな?」
急に後ろから話しかけられてライクは慌てて距離を取り振り向く。
そこにはレアーに頭を叩かれている大人の男がいた。
「お父さん、何をしているんですか!?」
「面白そうだから、ついですね!それにしてもいい加減に娘が驚かなくなって悲しい……」
「何度もされていますから良い加減に慣れます」
「反応はできていますか」
「………出来ていないです」
悔しそうにレアーが言うが、そんな娘に育ての親は頭を撫でる。
彼からすれば反応は少しずつだが出来ている。
自分以外の者なら対処できるだろうと考えていた。
初めの頃に比べれば雲泥の差だ。
「反応は良くなっていますから頑張ってくださいね」
「店の中でお客さんを驚かすのは、どうなのよ。そういうのは完全にプライベートの時だけにしなさいよ」
育ての親がレアーの頭を撫でて応援していると奥から女性が現れる。
どうやら店内で騒がしい音が聞こえたから注意するために来たらしいがライクはその女性を見惚れてしまった。
「お母さん!」
「お帰りなさいレアー。急にどうしたのよ?」
寮で生活しているはずの娘が帰ってきて何かあったのかと母親は問いかける。
三者面談か保護者参観か。
後者は無いだろうと考えつつも三者面談には、まだ早すぎるんじゃないかとも思っている。
なら、何の用かと首を傾げてしまう。
「その親が喫茶店を経営していると言ったら興味があるって言われて……」
「あら、そうなのね。もしかして将来の夢は喫茶店を経営することとか?」
将来の夢は喫茶店経営なのかと奥さんは興味を持つ。
だが自分の店のこと教えても同じように続けれないと考える。
ほとんど趣味のようなものだから勉強にならないと奥さんは考える。
「いえ。実はただ単に愛人を受け入れている者って、どんな者なんだろうと考えて………」
「ふふっ」
正直に愛人のことで興味を持ったと言われて奥さんは好意を持つ。
今までは遠回しに言って来たり、否定することばかり言う者がほとんどだったから純粋に興味で来た者は珍しいせいなのもあった。
「最初は邪魔だっわよ。恋人は私なのに夫最優先で折角の二人きりを邪魔されたこともあるし」
「おぉ……」
そこから、どうやって受け入れたのか興味があって話を聞くことに集中する。
「だけど最優先が夫だからか、その恋人である私にも崇拝していてね………」
「………すうはい?」
「えぇ」
奥さんの言葉にライクはレアーに顔を向ける。
顔を逸らされた。
店主さんに顔を向ける。
苦笑しているが笑顔で頷かれた。
そして最後に奥さんに顔を向ける。
真顔で頷かれた。
今も崇拝しているのだと察してライクは、やべぇ者だなと顔を引き攣らせる。
だが、それよりもヤバいのは店主さんの方だ。
他の二人が真顔だったり、顔逸らしたのに一人だけ苦笑とはいえ笑顔だ。
崇拝されるほどの何をしたのかと疑問を覚えてしまう。
「感謝する気持ちも好意を持つ理由もわかるけど崇拝の域まで来るのは………ね。しかも一人だけじゃないし」
「「うわぁ……」」
ライクとレアーは二人揃って店主を見る。
そこには笑顔で頷く店主がいる。
やべぇ相手に二人は背筋が震えてしまった。
最初に落ち着いたのはレアーだった。
家族だからと淹れてもらったコーヒーで身体を温める。
よくよく考えればレアーにとって父親がヤバい人なのは分かり切っていたことだった。
だから直ぐに落ち着けることも出来た。
「あっ、そうだ。レアー、久しぶりに帰ってきたしお小遣いを上げるから仕事でもする?昔みたいにメイド服を着て。ちゃんと今も切れるように調節しているわよ」
「お小遣いはいらないから止めて!」
流石に友達の目の前でメイド服を着るのは恥ずかしかった。
お小遣いを上げると言われても拒否をする。
「メイド服!?」
そしてライクはメイド服と聞いて復活する。
目の前の友人がそれを着ると聞いて面白そうな事で復活した。
「そうよ。昔、夫が小さくて可愛いからと仕事の最中はメイド服を着せたのよ。その頃は可愛い服だと嬉しそうに着ていたわ。その頃の写真もあるけど見る?」
「是非!!」
そんな面白そうなものを見れるのなら是非ともお願いしたいとライクは思う。
そして当然、本人であるレアーは拒否をする。
「ダメです!お母さんもダメですからね!!」
全力で阻止をしようとするレアー。
それを楽しそうに受け入れる母親。
ライクは母親に助力しようとする。
そして店主はそんな三人を見て面白そうに眺めている。
特に友人であるらしいライクとレアーは今度どうなるのか想像するだけで楽しくて笑顔になってしまっていた。




