二一話
「皆、話したいことがあります」
ダイキは生徒会で皆が集まったとこで声を上げる。
これから仕事をしようとしたところに何の用だと視線を向ける。
「前にも言ったけど父さんは警察なんですけど、これ以上は探らなくて良いって言われて」
その言葉に生徒会のメンバーは苛つきを覚える。
仕事を要求しておいて、急にいらなくなったと言われるのは腹が立ってしまう。
「それよりも自分の身の危険を感じて欲しいみたいで。警察の巡回も増やすから危険な目に合ったら声を上げて欲しいみたいです」
こちらの身の安全を案じての意見に生徒会のメンバーは複雑な感情を抱く。
有難いのか実力不足だと言われて不満なのか。
「っし!」
逆に嬉しそうなのがディアロだった。
これでバイトに集中できると思いもある。
何よりも学生にさせる仕事ではないと思っていたからだ。
本当は軽く手伝うだけで良かったかもしれないが、今回の事件はその軽くでも危険だった。
「君は友人が襲われても何とも思わないのかい?」
「え?でも対策なんて一人で帰らずに何人かで固まって帰ろうぐらいしかないじゃん。集団下校でもするの?俺は一人で帰るつもりだけど」
案の一つとして集団下校があると聞いて良い案だと思ったが一人で帰ると言うディアロに冷たい目を向けてしまう。
何で何人かで固まって帰ろうとしないのか理解できない。
「面白そうだからですよ」
それを問いかけたら、そんな答えが返ってくる。
何が面白いのか本当に理解できない。
「それじゃあ、俺は先に帰りますね。パーティを開くかどうか知りませんが出来れば読んでくださいね」
それだけを言ってディアロは生徒会室から出ていく。
その後に残ったのは生徒会のメンバーだけだった。
「………どうする?」
「そうだね。取り敢えず事件の解決の目途はまだまだ立たないから学校全体で一人で帰らないように注意することしか出来なんじゃないかな」
「そうですね。それじゃあ、まずは先生たちに提案しに行きませんか?私たち同じ学生よりは先生から言った方が従ってくれるかもしれませんし」
生徒会のメンバーがそれぞれ意見を出し合う。
これ以上危険だから無理に関わるなと警察に言われれば不満はあっても従うしかない。
こちらの身の安全を心配してくれて言っているのだし、自分達が率先して守っていれば他の生徒も従ってくれると考えている。
「とりあえず私たちは生徒会のメンバーで固まって帰ろうか?」
生徒会長の言葉に頷く生徒会メンバー。
そしてディアロについて文句を言い合う。
「なんで、あんなマイペース何だが……」
「自分の実力に自信があるんだろう」
「まぁ、二年生相手にも反応できない速度でアイアンクローで持ち上げたりしましねぇ」
「意外と暴力的だなぁ」
ディアロが一人で帰るのは襲われても反撃できる自信があるのだろうと想像する。
実際に先輩を鍛え上げた話も聞いたし、聞き取りで先輩相手でも反応させずにアイアンクローしたこともあった。
それを知っているから、あながち大丈夫だろうとも考えてしまう。
それでも学校の生徒として従ってほしいが。
「取り敢えず職員室に言ってお願いしよう。先生から学校のルールだと言えば従ってくれるかもしれないし……」
正直、ディアロ以外にも一人で帰ろうとする生徒はいるかもしれないが、ディアロも含めてそこは自業自得だとあきらめるしかなかった。
「なるほど。よくわかった。こっちからも生徒たちに注意を呼び掛けて置く」
生徒に話しておくつもりだったが教頭先生がいたから予定を変更して教頭先生にお願いする。
教頭先生から教師全体に伝えてもらうつもりだ。
「それにしても警察の方から安全のために手を引いてほしいのか………」
教頭先生の言葉に信じてもらえないのかと落ち込む生徒会のメンバーたち。
その様子に教頭は慌てる。
「信じてないわけでは無いですからね!?ただ、警察からも危ないと言われることを任せてしまったことに反省しているだけです。申し訳ありません」
そういって教頭は頭を下げる。
生徒会のメンバーたちは教頭が頭を下げたことに慌てて顔を上げるように頼む。
「大丈夫ですから頭を上げてください!」
「そうですよ!俺たちも最初は、こんなに大事になるとは思っていなかったんですから!」
「全くです。むしろ、これまで以上に犯人を捜してくれと言われないだけありがたいです」
「………そう見えるのか」
生徒たちに無茶を押し付けるように見えていると言われ教頭はショックを受ける。
生徒会のメンバーたちは、余計なことを言ったアクアを責めた目で見る。
「すいません。そんなつもりではなかったんですが」
アクアの謝罪に気にしなくて良いと今日とは伝える。
教頭という立場だからこそ授業をする機会も少なく生徒と関わることも少ない。
お互いにどんな人物か知らないのだ。
誤解をされていても、しょうがないと思える。
「いいさ。それよりも気を付けて帰るんだよ」
教頭は気にしていないと生徒会のメンバーたちに伝え、無事に帰れるように注意した。
自分達で言っているように集団で下校するように。




