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二〇八話

「急にどうしたの!?」


「………」


 セイナとレアーは急に腕を引っ張られて走らされたため腕が少しだけ痛くなり、その原因となったエマを睨む。

 走っていた間は突然のことで何も言わなかったが止まったことで文句を言える。


「そんなことより今は早く事務所に入ってください!!」


 その不満も言いたかった文句もエマの焦ったような声に消えてしまった。


「本当にどうしたの?」


 言われた通りに事務所に入り、そこでようやく安心したかのように息を吐いたエマにセイナは心配そうに声を掛ける。

 レアーもエマに対して心配そうな顔を向ける。


「気付いていたかは分かりませんが服を試着した時に騒いだり、帰り道の途中ですれ違う人たちが私たちをちゃんと認識していませんでした」


 エマの言葉にセイナはそういえばと思い出す。

 すれ違う者たちはともかく試着室で騒いでしまったのに注意を受けることさえなかった。

 事務員が不特定多数の者たちに認識を妨害していたんじゃないかと今思いつく。

 精神や思考を操る魔法は禁忌だからこそ思考から抜け落ちてしまっていた。

 普段からも操作しているような気がするが、事務員の言葉を信じるのなら事務所に目的の相手をおびき寄せるだけだから気にしていなかった。


「特定の相手だけ認識できて、それ以外は認識させないなんてことをしたら魔力も大量に使っていると思ったんです。その上で魔力が切れたら突然、現れたことになります。面倒なことになるかもしれませんから慌てて事務所に連れてきました」


 エマの言い分にセイナも納得する。

 やっていることは禁忌だからこそバレたらヤバイ。

 だけど同時に普段から似たようなことをやっているから魔力に関しては余裕があるんじゃないかと考える。


「でも普段から似たようなことをやっていない?」


「あ……」


「魔力は余裕がありましたけど事務所に掛けているのとは違いますよ。事務所を見つけれて入れるようにするのは特定の条件を満たした者だけ。今回は条件に関係なく手当たり次第に魔法を使いましたから」


 理解は出来ないが違う魔法を使ったと事務員が言うなら、そうなんだろうとエマたちも納得しようとする。

 それでも魔力を使った量自体は多いんじゃないかと考えていた。


「それよりも事務所に着いたんだし着せ替えはしなくて大丈夫なんですか?それなら先に仕事で着るメイド服を決めてもらいたいんですが?」


 事務員はそう言ってどこからか復讐種類のメイド服を空中に浮かばせる。

 メイド服だけでも数種類あることにレアーは目を輝かせ、エマとセイナはいつの間に買っていたんだと信じられないような顔を向ける。

 しかも服を買いに行った場所ではメイド服なんてなかったはずだ。


「いつの間に買ったの……?」


 その上に荷物持ちをさせて、ずっと傍にいたから本当に驚いてしまう。


「?これは現物じゃなくて映像ですよ?選んだ物を現物として作ってもらうつもりですけど……」


 事務員の言葉にエマもセイナもメイド服に触ろうとするがすり抜ける。

 それで事務員の言っていることが本当だと理解した。


「どれか一つなんですよね?」


 どれも可愛いとレアーは目を輝かせて見る。

 同時にどれか一つだけなのが残念そうだ。


「頑張って仕事したら一着ずつ増やしますよ?」


「ホント!?」


 今は幼い子供だから何度も仕事着を入らなくなるし、そのついでだ。

 何度服が入らなくなるか疑問だが大きくなることを実感できるし、その日が楽しみに思える。


「全部、ロングスカートなのね……」


「家事もやらせるのに短いスカートって足が汚れません?」


 全てがロングスカートであることに気付いてセイナが疑問を持つが事務員に答えを返される。

 ロングスカートである理由から本当に仕事着として使わせるつもりのようだ。


「そうね。それならこのメイド服が良いと思うわね。黒いから汚れてが付いていても目立たないわ。他の服は次の機会にしたらどう?」


「………うん、わかった」


 セイナの意見にレアーは頷く。

 どれも可愛い服で選ぶのが難しかったがレアーのことを考えて意見を出してくれるなら、それでも良いと思った。

 それに頑張ればいつかは他の服も選べるから、簡単にセイナの意見に頷くことも出来た。


「じゃあ、これで良いですね?………それじゃあ、ちょっと出かけてきますので」


 どのメイド服にするのか決まったら事務員は事務所から出ていく。

 もしかしたら実際に選んだメイド服を買いに行ったか頼みに行ったのかもしれない。


「わかったわ。いってらっしゃい」


 セイナは事務員がどこかに行っている間にレアーが一番似合う服を決めようと思う。

 そして可愛いレアーを見せて驚かせようと考えていた。


「それじゃあ二人とも事務員が帰ってくるまでにレアーを可愛くして驚かせましょう」


「そうですね!」


「へっ!?」


 セイナは二人に目標を告げ、エマは賛同しレアーは驚いてしまう。

 そしてセイナとエマの二人は早速買ってきた服を並べ、どれが似合うのか話し合う。

 レアーは最初は大人しく着せ替え人形になっていたが色んな服を着れることに楽しくなり途中からポーズを取り始めた。

 そして着せ替えさせていた二人はそれを見て笑顔を浮かべていた。

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