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二〇七話

「二人ともあっという間に仲良くなりましたね」


 セイナとレアーが先に歩いている間にエマは事務員へと近づいていく。

 ハッキリ言ってしまえば慕っている相手に近づくチャンスだった。


「そうですね。君は一緒にいなくて良いんですか?」


「えぇ。いくらでも仲良くなれる機会がありますから」


 事務員の疑問にエマは何でもない様に答える。

 あんなに小さくてかわいい子なら、こちらから近づきたい。

 それに仕事着ではメイド服を着せると事務員は言っていたが想像するだけで可愛いことが分かる。

 エマはロリコンではないが事務員がメイド服を着せたがるのも分かる。


「それで本当にロリコンじゃないんですよね?」


 念のための質問だった。

 もし、そうだったらどうすれば良いのか悩んでしまう。

 このまま事務員のところに置いて毒牙に掛けられるのを放置すれば良いのか、それともそれを防ぐために孤児院から出て行けば良いのか迷ってしまう。


「何度も言うけどロリコンじゃないですからね?あの年頃の女の子に手を出すなんて想像するだけで吐き気がしますし」


 事務員の目を見て本気で言っていることをエマは理解する。

 だが下手をしたら幼い女の子を毒牙に掛けるよりも吐き気をすることをしているんじゃないかと考えてしまう。


「それじゃあメイド服が好きなんですか?」


 それは今更だし、自分達も多くの者たちの不幸を楽しんでいるから何も言えない。

 それよりも今は事務員の好みの方が大事だった。


「…………そうなのかな?ただ単に可愛い仕事着と言ったらメイド服だと思っていましたし」


 ウェイトレス服もあるが、世の中メイド喫茶はあってもウェイトレス喫茶何て聞いたことが無い。

 男にとってはメイドの方が憧れがあるのだろうとさして呆れてしまう。

 でなければ人気になったりしない。


「じゃあ私もメイド服を着ますか?」


「小さくてかわいい女の子がお手伝いとしてメイド服を着て頑張るのが良いのであって、事務所で貴女たちが着るのは違和感があるよな気がするんですが……」


 メイド服を着ると言ったのに、やんわりと拒否されてエマは不快になる。

 言っていることは分かる。

 事務所にメイド服を着た者がいるのはおかしいというぐらいは。

 それでも同い年の女の子がメイド服を着るというのに何の反応もせずに拒否されるのは女のプライドが傷ついた。


「そうですか。ちなみにセイナがメイド服を着たらどう思いますか?」


「………その前に女の子にとってメイド服って可愛い服装ですか?」


「?はい」


 何で今そんな質問をしてくるのか疑問だったがエマは肯定する。

 メイド服も可愛いし着るのも嫌ではない。

 むしろ着てみたいとも思っていた。


「なら好きで着ているんだなぁと思いますね」


 事務員の答えに恋人がメイド服を着てもそんな反応なのかとため息が出る。

 だけど同時に一度、本当にそんな反応をするのか試してみたいと思う。

 セイナとレアーにも話して一度全員でメイド服を見て反応を確かめようと声を掛けようと考えていた。


「そういえば……」


 ふいにレアーの服を買っていた最中のことを思い出す。

 買っている最中、今思い出せば我ながら少し騒がしかった気がする。

 そうなればスタッフの人が注意しに来るはずなのに誰も来なかった。


「今思い出せば騒がしかった気がしますけど、誰も来なかったのは事務員が何かしたからですか?」


 エマのその疑問に事務員は今更気付いたのかと笑みを浮かべる。

 本当はもっと長くいることは出来たかもしれない。

 それでも事務員に途中で止められてしまったのだと理解して少しだけ不満を持つ。

 もしかしたら、これ以上の荷物は持てないから終わらせたかもしれない。

 だけど事務員の両手に荷物は、これ以上は持てないだろうが、その場合はエマやセイナも持つつもりだった。


「そうですよ。変に質問されて答えたくなかったですし。特にレアーは来たばかりの子供ですからね。色々喋ってしまったらマズいです」


 そして今も同じような魔法を使っているのだろう。

 誰もがそこに誰かがいると認識していて邪魔にならない様に避けてくれているのに、その誰かを正確に理解していない。

 不特定多数の相手に無差別に認識の妨害を違和感なくしている。

 その上で事務所で働いている皆は互いに認識することが出来る。

 どういう理屈なのか理解できずに困惑してしまう。


「なるほど……」


 そのおかげで冷静になり、他にも理由はあるんだろうなとエマは予想する。

 特定の者以外には存在を認識させないなんて魔力を大量に使うはずだ。

 もしかしたら魔力はギリギリで今にも魔法が解けてしまうのかもしれない。。


「もしかして魔力はギリギリだったりしますか?」


「?そんなことは無いですよ」


 事務員はそんなことを言ってくれるが正直に言って心配させないようにそう言っているだけなんじゃないかとエマは考えてしまう。

 駆け足でエマは先を歩いている二人に近づき転んだりしないように二人の手を引っ張って事務所へと急いでいく。

 その姿に事務員はエマに感謝をしながら、三人の後を追って事務所へと向かった。

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