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二〇三話

「……………」


 アウルのクラスメイト達は学校にいても静かだった。

 普通は同じクラスの友達と話したり別クラスの友人と廊下や教室の中で話したりしているのに、今はそんな様子は一切見せていなかった。


「はぁ………」


 子供たちは最近から毎朝見ている夢のせいで朝から気力が無くなっていた。

 見ている夢の内容は大人たちと同じ。

 そのせいで自分達がアウルに対してしたことを身をもって理解させられてしまい後悔している。


「やるんじゃなかった………」


 クラスメイトに暴力を振るって殺してしまった自分に他のクラスの友人と一緒にいる資格があるのだろうかと子供たちは考えてしまう。

 こんな人殺しと一緒にいるぐらいなら、もう皆とは一緒に遊べない方が良い。


「はぁ………」


 本当は一番悪いのは自分じゃないと皆が思っていたい。

 最初にサングラスを付けているのが不公平だと騒いだ者たち、最初にアウルに暴力を振るった者たち。

 自分達は流されただけで悪くないと考えたかった。


 だけど、それを理由に暴力を振るってまた殺してしまうんじゃないかと不安になる。

 そしてアウルのように毎朝、悪夢として自分が誰かを責めている夢を見たくない。

 だから誰もが自分以外の誰かを責めるような真似はしなかった。


「おはよう!」


 そんな中、自分達の担任とは違う先生が教室に入ってくる。

 違う先生だということで子供たちは、まだ授業は始まらないと思い下を向いて子供たちは落ち込んでいた。


「授業を始めるから下を向いていないで前を向けー」


 教室に入ってきた先生の言葉に子供たちは顔を上げる。

 担任の先生でないのは短銃に休みだと想像していた。

 それ以外では担任とは違う先生が来るのは想像できていなかった。


「まず最初に言っておくが君たちの前の担任はとある都合で学校を辞めることになった。今日からは俺が君たちの担任になる」


 急に担任の先生が変わると聞いて子供たちはざわついてしまう。

 前の担任からは何も聞いていなかった。

 もしかして逃げたんじゃないかと考えてしまう。


「それじゃあ最初の授業を始めるから教科書を机に出せー」


 子供たちがざわついている間に新しい担任はマイペースに話しを続けていく。

 そのことに子供達も慌てて教科書を開いて行った。



 授業中、子供たちが必死に問題を過ごしている姿に新しい担任は自分のやり方は間違っていないと安堵する。

 話を既に聞いていたが、死なせてしまったことを考えさせるよりは別のことで頭をいっぱいにした方が良いと考えている。

 誰もがしてしまう虐めのせいで死んでしまったのは不幸だと思うが、子供には背負うには早すぎる。

 今はまだ時間を掛けてあげるべきだと考えていた。


「それにしても魔眼持ちか……」


 彼女も子供たちも不幸だなと思ってしまう。

 ただでさえ数少ない魔眼持ちだから理解が少ないのに、こんな普通の学校に入学させたのだ。

 学校側から誘われたとはいえ信じるべきでは無かった。

 そうすれば今のこの場にいる子供も心に傷を負わなかったし、死んでしまった子も自殺を選ぶことはなかった。


 そして似たようなことが二度と起きないように何かしら手を打つ必要がある。

 虐めが苦で自殺をするなんて毎年聞く話だ。

 今までこの学校では自殺が無かっただけで、これからは対抗策を考える必要がある。


「職員会議で話し合うか……」


 自分一人では考えつかないし、思いついたとしても一人一人の負担が大きくなるものばかりだ。

 子供の教育は難しいと実感する。




「将来か………」


 子供の一人、ライクは将来のことを考える。

 なるとしたら先生か医者だと決めていた。


「どうしたの?」


 急に将来という言葉を口にしたライクにクラスの皆は注目を集める。

 将来について絶望していたからだろう。

 人殺しになってしまった以上、夢は叶わないと諦めていた。


「私は将来、先生か医者になるわ。二度とアウルのような子を生み出したくないし、今の私たちと同じような苦しみを味合わせたくない」


 ライクの言葉に確かにと考えてしまうクラスメイト達。

 先生になれば虐めを止めることも出来る。


「その二つなら俺は医者かな……。そうすれば、アウルも助けれたかもしれないし」


 あの時点でアウルは死んでいたが、それが分からない子供たちはもしかしたら助けれたかもしれないと考える。

 それに魔眼について研究することも出来るかもしれない。

 そして将来的には魔眼を子供でもコントロールできる手段を見つけたいと思っていた。


「どっちを選ぶしろ勉強は必要だな」


「うん」


 どちらも頭が良くないとなれない職業だ。

 これまで以上に頑張る必要がある。


 そして何よりも、それらを目指せば自分達は救われると思っていた。

 医者に、先生になって誰かを救えば毎日見る悪夢から解放されると何故か確信していた。

 その為に子供たちは必死に勉強をし始める。


「おっ、頑張っているな~」


 新しい担任の先生はそれを見て感心する。

 そして新しい課題を準備しようと張り切る。

 教師としても勉強に集中して人の死を一時的にも忘れて欲しいから協力的だった。

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