二〇二話
「うわぁぁぁぁ!!」
アウルの担任は悲鳴を上げて起き上がる。
「違う………。死なせるつもりは無かったんだ………!!」
先生でありながら虐めを見て笑っていた自分にアウルの担任は吐き気が出る。
虐めを見て笑うなんて人としても先生としてもくそ野郎としてか思えない。
それが自分だと認識してしまい絶望する。
「アウルちゃんの呪いかな……」
担任は自分の見た夢からアウルの呪いだと思ってしまう。
アウルが死んだ次の日に夢に見るなんて、あまりにもタイミングが良かった。
「あの子からすれば私も敵だったんだなぁ……」
担任はそう言って苦笑した。
そんなのは分かり切っていたことだからだ。
自分も嫌っていたのだからアウルが嫌っていてもおかしくない。
むしろ先に敵意を持ったのは担任の方だ。
自分が嫌っているのに相手は自分を嫌わないと考えるのはあまりにもバカバカしかった。
「これからどうしようかな……」
一人の子供を殺してしまった教師だ。
クビになるのは目に見えている。
だからと言って、このまま何もしないのは嫌だった。
アウルに対して何か償っていきたいと思っていた。
どうするか悩んでいると目覚まし時計の音が鳴る。
それで担任の先生は学校に行かなくてはいけないことを思い出す。
まだ正確にクビになっていないのだ。
無断で休むのは許されないことだった。
「失礼します」
そして学校に着くとアウルのクラスの担任は校長に呼び出された。
「君はアウルちゃんが虐められていても助けることはせずに笑って見ていたのは本当かね?」
「………はい」
校長先生が知っていることに担任の先生は全く驚くことは無かった。
アウルが呪っていたのなら校長先生にも見せていてもおかしくなかった。
「何でだ?君は先生だよな?普通は虐めを見たら止めるべきなんじゃないのか?何で一緒になってアウルちゃんを虐めていたんだ?」
校長先生の詰問に何も答えれない担任。
何よりも自分が悪いと分かっていた。
「君はクビだ。教育委員会にも連絡して教育免許を剥奪してもらう」
校長先生の言葉に担任は頷く。
それだけのことをしたのだと理解していた。
「分かりました。短い間でしたが色々とありがとうございました」
担任の言葉に校長先生は頷き学校から追い出す。
これ以上、自殺にまで追い込んだアウルのクラスの担任を学校に追いたくなかった。
そしてアウルのクラスの元担任はそれから決して報われない日々が続いて行った。
「何をやっているんだお前は!!」
何をするにしても理不尽に怒鳴られ殴られる。
仕事のミスは自分が関係なくても知らないうちに自分のせいにされる。
そのことを相談しても門前払いをさせられて話を聞いてくれない。
それならと証拠を撮ろうとするも何故かいつも壊れて使い物にならなくなる。
「ははははははは」
笑うしかなった。
これら全てがアウルの呪いだと思うと本当に自分のやったことを後悔してしまう。
もともと元担任は子供が好きで学校の教師になった。
それなのに結果は先生という立場を笠に着て忌々しい子供を排除していた。
これはアウルの呪いであり天罰としか思えなかった。
「今回もクビかな……」
何度も何度も就職やバイトで働いても最初の一日は幸先よく生活できたのに次の日には不審な眼で見られ一週間経つと敵意を向けられ、一ヶ月経つと嫌がらせが始まってしまう。
ここ数年ずっとこんな生活だ。
少しずつ貯蓄も減ってきてジワジワとなぶり殺しにされている気分になる。
「そもそも何で敵意を向けてくるんだ……」
このままでは死んでしまうと何が悪かったのか聞くことを決める。
今までは何度も同じような経緯でクビになったショックで聞いてこなかった。
そうと決まれば早速、明日にでも聞くことに決める。
そして――
「だってお前、先生だったのに担当していた子供の虐めを冗長させて殺したんだろ?」
「え?」
何で知っているのかと元担任は顔を青褪める。
「お前が働いた次の日から全員が夢に見るんだよ。お前が逆恨みで子供の虐めを冗長させて殺す夢を。それで気になって調べた者がいたんだよ」
そんなことは知らなかった。
自分の罪が知らない相手にも夢で見られるなんて。
そんなの予想できるはずが無い。
「そう……ですか」
「そういうことだ。それでお前は仕事を辞めるのか?」
「はい………」
これ以上は、ここで働けないと元担任は仕事を辞めて出ていく。
そして誰もいない屋上へと歩いて行き、たどり着くと笑う。
「あははははははははははははは!!」
その顔には涙が流れていた。
仕事を探している間も虐めに耐えている間にも、ずっとアウルが死んでからの夢を見ていた。
それなのに狂うことも出来ずに生きていたのに一緒に働くことになる者にまで見られるなんて、そこまでのことをしたのかと疑問に思ってしまう。
そして落ちようとして途中で意識が暗くなってしまう。
意識が戻ると相変わらず屋上の上にいた。
何となく家に戻って刃物を自分の胸刺そうとする。
手に持って刃を自分に向けたところで意識が落ちる。
首を攣ろうとする。
輪を作って首に掛けようとしたところで意識が落ちる。
自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
死ぬことも出来ない。
狂うことも出来ない。
元担任は地獄の中で生きていた。