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二〇一話

「はっ!?」


 そしてアウルの母親は目を貫いた痛みで目を覚ました。


「はぁ……。はぁ……」


 見ている間は夢だと気づかなかった。

 そして夢の中とはいえ、本気で魔眼を持っていることで追い詰められて自分で抉ることを決意してしまったことに自分の身体を抱きしめる。

 夢であるはずなのになぜか目にも痛みがあるような気がしていた。


「あれは、アウルの実際に経験したことじゃないわよね……?」


 クラスメイトに暴行され、教師からも黙認される、そして自分の眼をえぐる。

 どれもがアウルが実際にやっていたことだ。


 そしてアウルの母親は自分がしていたことを認めたくなかった。

 夢に見たのがアウルが受けたことをもとにしたのなら親もまたアウルにとって信頼できない相手になっていた。

 何を言っても自分が悪いと断言させられて頼ることが出来ない相手だと思われていたのだ。

 親として最低の部類になってしまう。


 自分のせいで娘が追い込まれて死んだなんて認めたくなかった。


「っ………!!!?」


 そしてアウルの父親は目が覚めると直ぐに洗面台へと向かう。

 その手は自分の眼を抑えておりアウルの母親だけでなく父親も見ていたのだと理解できてしまう。

 

 そして、それはアウルの両親だけではない。

 アウルのクラスメイトとその両親、そして担任の先生と校長先生も見ていた。


「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」


「違う違う違う違う違う!!」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


 自分のしたことに絶望する者、否定する者、殺してしまったことに罪悪感が襲ってきて謝罪をする者、いろいろな反応をしていた。

 クラスメイト達は望んで持ってきたわけでも無いし無理矢理、魔眼を使わされたのに理不尽に責められた経験を受けて自分のしてきたことを理解させられてしまう。


 そして親御さんたちは自分の子供のしたことを理解して怒りの視線を向ける。

 子供たちのしたことは最早、ただの人殺しにしか思えなかった。

 そしてどしてこんな子に育ってしまったのかと泣き崩れてしまう者もいた。


「なんでこんな子供に育ってしまったんだ……。どこで育て方を間違えてしまったんだ……」


 父の言葉に子供は何も言えない。

 ただ黙って泣くことしか出来ないでいた。


「何で泣いているんだ……。泣きたいのはこちらだし、一番は殺してしまったクラスメイトの子だろう?人を殺すのは罪だと知っているよな?どうやってこれから生きていくつもり何だ……」


 人殺しだと実の親に言われて子供は恐怖におびえる。

 これからは犯罪者として牢屋で生活しなくてはいけないと。

 目の前が真っ暗だった。


「はぁ。多分だがお前はまだ子供だし虐めていただけで実際に殺したわけではない。多分、警察も自殺だと判断するだろうな。だから捕まることは無いと思う」


 親と離れて牢屋暮らしにならないことに安堵のため息を吐く子供に苛立ちを覚えてしまう親。

 人を殺したのにその反応であることに自分の子供でありながら信用できなくなった。


「おい。安堵しているが人を殺したことは覚えておけよ。お前、また人を殺すかもしれないんだぞ」


 人を殺したのに安堵している姿にまた過ちを犯すのではないかと不安になる親。

 正直に言って人を殺してしまったのに捕まっていないことに調子に乗るんじゃないかと不安になってしまう。

 もしくは暴力に忌避感を失ってしまうかもしれない。

 最悪なことにならないように二度とこんなことが無いように祈ることしか出来ないのが歯痒かった。


「分かっているよ……」


 子供がそう言うが不安を抱きながら学校へと行くのを見送る。

 そして完全に消えた後に連絡網にある同じクラスの子供の親に連絡をし始める。

 内容は子供たちの将来についてだ。


「もしもし」


「もしもし……」


 早速、電話を掛けると向こうからは元気のない声が聞こえてくる。

 いくら朝早いとはいえ大人でも出勤し始める時間だ。


「あの相談したいことがあるのですが大丈夫ですか?無理そうなら、また電話を掛けますが?」


「いえ大丈夫です。気も紛れますので是非頼ってください……」


 それならと言葉に甘えることにして子供の将来について一度皆で集まって話し合いたいと相談する。

 その意見にもしかしてと電話相手も予想できてしまう。


「もしかしてアウルちゃんの夢を見ました?」


「そちらもですか!?」


 アウルの夢を見たのは自分だけではないと理解して意気投合する二人。

 もしかしたら他にもいるんじゃないかと想像する。

 連絡網もあるのだから、それも使ってまずは同じクラスの家を調べようと考える。


「もしかしたらアウルちゃんの亡霊の復讐かもしれませんね……」


「そうですね。だからこそ、これ以上は罪を重ねない様にしないと」


 同じ日に同じ夢を同じクラスの関係者が見たのだ。

 本当に死者の復讐だとしても納得できてしまっていた。

 だから、これ以上の恨みは買わないために子供たちが虐めなんてしないようにしてほしいと祈る。

 もし虐めなんてしたら、他の家の子供より厳しくしかる必要があると考えていた。

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