二十話
「父さん。お帰り」
ダイキは家へと帰るとご飯を食べて学校の課題をこなしながら父親の帰りを待っていた。
そして父親が帰って来たのを察するとすぐさまに玄関へと向かう。
「ただいま。急にどうしたんだ?事件のことでも何か進んだのか?」
父親からすれば息子が自分から話したことがあると突っ込んでくる理由はそれしかないと考えて口にする。
「そうだけど。時間はある?」
「わかった。ちょっと待ってくれ」
直ぐにでも話をしたいとダイキと一緒にリビングへと行き荷物を置く父親。
夫が帰ってきて息子とリビングで話そうとする姿に妻は驚く。
聞こえてきた内容から仕事に関係ある話をするらしい。
「後にしなさい」
取り敢えず息子と夫の頭を叩いて止める妻。
そのことに睨まれるが、逆に睨み返す。
「取り敢えずシャワーにでも入って夕食を食べてからにしなさいよ。その後なら時間は自由に使えるでしょ」
妻の言葉に頷いて夫は息子に待ってくれてと頼む。
息子も妻の拳が痛かったのか黙って頷いていた。
「それで父さん、情報のことなんだけど」
父親はシャワーを浴びて、ご飯を食べながらダイキの話を聞く。
行儀が悪いが事件について少しでも早く聞きたかった。
「多分、苛めの被害者が事件の犯人だと思う」
「………そうか」
その言葉を聞いて思わず頭を抱えてしまう。
苛めの復讐は大抵が暴走をしてしまう。
そのせいで被害が多くなるのだ。
しかも多く苛めていた主犯だけでなく周りにいた者たちも巻き込む。
無視や気付いていなかった者にも牙を向くのだ。
「多分、学校だと全員が復讐対象になるかも……」
「そうか……」
やべぇなと父親はダイキの言葉に思う。
息子が襲われてしまうのは不安だと今のうちに転向させるべきかと考えてしまう。
「調べたところ、通っている学校で苛めの被害者が結構多くて絞り込めない。苛められた友達の復讐のことも考えると、お手上げ」
「そうか……」
父親は見つけられないと言う息子の言葉に納得する。
もともとできればという気持ちだったのだ。
文句は無い。
「ねぇ、ダイキ。転校しない?」
そんな話を聞いて母親も黙っていられなかった。
その内容が事実なら学校にいること自体が危険だ。
転校させたいと考え、父親もそれに頷く。
「いや、多分。この事件に触発されて他の学校でも被害が出るかもしれないし、多分どの学校も変わらないよ」
「「は!?」」
どういうことかと声を上げる二人にダイキは説明する。
今回の事件で苛めの復讐だと知られ、他の者も触発される可能性があること。
この学校に進学する前から苛められていて別の学校に行った者がいるなら、そのものに対しても復讐するかもしれないと。
「………有り得るな。気付かなかった者にも復讐する気なんだ。転校しても変わらないか」
「そんな……」
何をやっても意味が無いと言うことに絶望する母親。
他の二人もため息を吐く。
「あなたは警察でしょう。本当にどうにもならないの……?」
母親の言葉に父親は黙って頷くことしかできない。
そのことにも母親はショックを受けてしまう。
「俺たちが出来るのは事件が起きた後に捕まえることだけだからな。いつも後手に回ってしまう」
父親もため息を吐く。
これでは結局誰も守れないと。
本当なら被害に合う前に助けれれば最高なのだが、被害者に合うのはいつも被害に合った後だ。
「取り敢えずは襲われそうになったら大声をあげて逃げるから安心してよ。恥ずかしいとか言ってられないし」
「そうよね。ちゃんと助けの声をあげられるわよね?」
男の子だから悲鳴を上げるのは恥ずかしいと思うし実際に出来るとは思えない。
それでも四六時中べったりといるわけにもいかないから信じるしかない。
出来るのは無事で帰って来るのを祈るだけ。
「警察でもこれまで以上に街中を巡回するように言っておく……」
より安全を図るために巡回をこれまで以上に増やすよう提案することを父親は言う。
妻を安心させるためでもあるが同時に自分を安心させるためだ。
「………にしてもだ。よく調べられたなダイキ」
同時に話の内容を少しだけ変える。
息子を褒めることで暗い雰囲気をわずかでも飛ばすつもりだ。
「え……うん。実際に思いついたのは同じ学年の友人だけど、俺たちは裏付け調査をしただけで」
「思いついたのも凄いが、裏付けをとったのも十分、凄い。俺たちなんて誰が何の目的で襲っていたかなんて分からなかったしな」
父親が褒めてくれたことにダイキは嬉しくなる。
危険だが更に犯人を特定することに力を入れようと決意してしまう。
「………一応、言っておくが本当に危険だからこれ以上は探らなくて良いからな?手伝ってもらった生徒会の人たちにもそう言って良いから」
父親の言葉にダイキは何故という視線を向け、母親は安堵の息を吐く。
「自分の身の安全を最優先して行動してくれ。お前まで被害にあったらショックを受ける。だから頼む」
父親に真剣な顔で頼まれ頭を下げられたことにダイキは頷くことしかできなかった。




