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一九三話

「本当にあの子は……!」


 アウルの母親は娘が自分と同じクラスの子供達と教師、そして校長を魔眼に掛けて病院に運ばれたと聞いて忌々しく思う。

 ただサングラスを外して見られただけで生命活動が危険になる。

 それで何度、自分と夫が病院に運ばれたか数えきれない。

 何で魔眼を持って生まれたのかと恨んでしまう。


「あなた!?アウルは!?」


 そして病院のベッドの上で全身痣だらけでになっているアウルを見て良い気味だと思っていた。

 故意でなくても何度も他者の生命活動を弱らせたのだから当然の報いだと考えていた。


「あの?」


「あぁ。すみません!うちの娘が!謝罪はしますので、どうか許してください!」


 娘と同じクラスの子供たちの親が声を掛けてくる。

 娘のせいで命の危険に子供たちが晒された。

 だから何かを言われる前に謝る。


 やっと魔眼を持って生まれた娘から平日の間とはいえ日中は解放されるのだ。

 そして学校側も魔眼を持っているからと受け入れさせてくれと言われた。

 今の状況を手放したくなかった。


「いえ、どちらかと言うと私たちの方が悪いのですから謝らなくても気にしないのですが……」


「何を言っているんですか?魔眼を使われたのでしょう?なら悪いのは私たち、特にアウルです。申し訳ありません」


 そして向こう側から気にしていないと言われ、それどころか謝罪をされる。

 とてもありがたかった。

 もしかしたら娘はまだ学校に通っても大丈夫なんじゃないかと思ってしまう。


「そもそも家の子供が、あなたたちの子供に暴力を振ったからこうなったんですから……」


 魔眼をかけられたというのに先に手を出したのはこちらだと謝ってくれる者たち。

 なんて優しいのだとアウルの母親は感動する。

 アウルの両親からすれば先に手を出したとしても魔眼を使われて生命活動を弱らせたのだ。

 責められてもしょうがないと思っていた。


「そうですか……。なら貴方たちも謝らなくて大丈夫ですよ。どうせ魔眼を持っている家の子供が怖かっただけでしょうし」


「魔眼を持っているというだけで暴力を振るわれたのに気にしないんですか……?」


「いつ魔眼で攻撃されるか分かりませんからね。気持ちは分かります」


 何故かクラスの子供たちの両親に信じられないような目で見られてしまう。

 まるで軽蔑されているような視線が疑問だ。

 それとも魔眼を持っているという理由で両親である自分たちも子供に対して警戒しているのだと思われているのかもしれない。

 だが他の者も自分達の子供が魔眼を持っており被害を受けていたのなら気持ちが分かるはずだとアウルの両親は思っていた。





「運が良かったわね?」


 娘の同じクラスの子供たちの親が自分たちを睨んで目の前から去っていったのを確認してアウルの母親は自分の娘に問いかける。

 その瞳には怒りがこもっており、アウルは恐怖を覚える。


「子供たちはどうか知らないけど、親御さんたちは自分達の子供の方が悪いって」


「………」


 そんなことを言われてアウルは何も言葉を返すことができない。

 全身が痛く意識を保っているだけでもギリギリだった。


「本当に何で魔眼なんて持って生まれたのかしら?それさえなければ、もっと私たちは普通に生きていくことが出来たのに」


 娘が魔眼を持って生まれたせいでアウルの両親は何度も大変な目にあってきたし死ぬような思いもした。

 何よりも出産直後に手術室にいた全員に魔眼をかけられてしまい死にかけた。

 生きていたのは運が良かったからだろう。

 だから魔眼を持って生まれた娘に殺されかけたのもあり、娘に対して厳しい。


「全くだ。いっそのこと両目をえぐるか?そうすれば魔眼も無くなるし誰にも危害を加えられなくなるだろうし。世の中、盲目の者だっているんだ。眼が無くなくっても生きていくことが出来るだろ」


「それもそうね」


 アウルの父親の言葉に母親は頷きアウルの片目に手をかけようとする。

 もう片方の眼にも父親の手を指し伸ばされた。


「……………っ!!?」


 両親に眼をえぐられそうになってアウルは恐怖で涙目になる。

 そして逃げようと必死に動こうとするが身体は全く動かない。

 身体がガタガタと震え歯がガチガチとなっている気がする。

 そして二人の手がサングラスの隙間から差し込んで来る。


「すいませんー!!失礼しますね!」


 その瞬間、両親の手が引っ込みアウルは安堵した。

 運よく看護師が病室に入って来なければ眼を奪われていた。

 その痛みを想像して看護師に心底感謝する。


「どうしましたか?」


「そろそろ面会時間の終わりなので連絡に来ました。どちらか病室にお泊りになりますか?」


 どうやら面会の終了時間のことについて報告をしにきたらしい。

 そのことに感謝しながら二人は泊ることを拒否する。


「いえ大丈夫です。それじゃあ明日も来るから大人しくしているのよ」


 それだけを言って両親たちは自分達の家へと帰っていく。

 取り繕っていたが娘がいないことに安堵し、内心喜んでいた。

 娘がいないのなら癇癪で魔眼を使われることは無い。

 今までも事故でしか使われたことは無かったが、それでも警戒はしていた。

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