一九話
「ただいま」
ディアロはフィンと一緒に生徒会室へと戻ると自分たち以外の生徒会のメンバーが仕事をしていた。
「ディアロ。それに生徒会長も………」
何も話をせずに勝手に仕事に行っていた生徒会長に文句を言おうとしたが普段とは違う様子に全員が驚く。
その理由を知っているであろうディアロに説明を求めようとする。
「どうしたんですか?暗いですよ」
「何があったんだ?ディアロも教えてくれないか?」
「元気出してください」
その声に説明しようとしたディアロを手で止めてフィンは説明を始める。
「思ったより、苛めが多くてね。それでショックを受けていたんだ」
フィンの説明にディアロと一緒に調査をした全員が納得する。
たしかにショックを受ける気持ちはわかってしまう。
想像以上に多く気づかなかったことには自分達もショックだ。
少なくとも一年以上は同じ学校で過ごしていたのにだ。
「そんなに多いんですか?」
ダイキは一年生だから、そこまでショックを受けていない。
思っているのは二年生や三年生より苛めが多かったのかという不安だ。
それもショックだが信頼している者たちも苛めていないこと考えているせいもある。
「二年生や三年生よりは少ないんじゃないか?それよりも、もしかしたら俺達も苛めの復讐者になるかもな」
「あぁ。苛めに気付かなかったという理由だろ。父親が警察だから、そういう無関係な相手にも復讐するらしいし」
「そうなったら、やっぱり捕まえられるのか?」
「まぁ。苛めの復讐って本当に暴行罪になるらしいし……」
一年生の会話に先輩たちは冷や汗を流す。
ダイキは警察の息子だから分かる。
おそらくは話を聞くこともあるのだろう。
だけどディアロは違うはずだ。
警察官の息子でも法関係の仕事についてある者の息子でもなかったはず。
「それを止めるために苛めの内容とか聞いて保護とかするんだけどな。復讐となると暴走するのが多いし」
「大人しい奴がキレるとヤバいんだな」
今回の事件は苛めの復讐だからこんな事件になっているのだと考えて頭を抱えてしまう生徒会のメンバーたち。
自分達の代になって何でこんな事件が起きるのかと恨んでしまう。
「そういえば苛めの復讐者って、やっぱり逮捕されるのか?」
「そこらへんは聞いてないけど、多分そうだろ。そういえば生徒会長、今回の事件が終わってからでも苛めのことに関しては発表した方が良いと思いますよ。苛めのせいで、こんな事件が起きたんですから。苛めをすると復讐されるという警告になると思いますよ」
当然のように今回の事件を利用しようとしている二人に恐れを抱いてしまう三人。
上に立つ者としての資質が他の生徒会のメンバーよりも優れているのかもしれない。
「やぁ、お帰り。何か情報は見つかったかい?」
「お父さん」
フィンが家に帰ると久しぶりに早くから家に帰ってくる。
そして帰ってきた娘に開口一番に質問をしてくる父親に不満を持って睨む。
「あぁ~。フィン、お前の学校の生徒が被害が多いんだ。お前が狙われないか不安だから許してくれ。どういう理由で狙われているかわかっていないからな」
父親の言葉にフィンは少しだけ不満を抑えて睨むのを止めて情報を告げる。
「事件の犯人は苛めの被害者だと私たちは思っているよ。もしかしたら苛めの被害者のネットワークで復讐が広がっているのかもしれないね。あとは苛めを無視したり気付かなかった者も復讐対象になるみたい」
「…………それが事実だとしたら誰が襲われてもおかしくないな」
フィンからの情報に良く調べたと称賛を送るより先に絶望してしまう父親。
それが事実なら誰が襲われるか本当に分かったものではない。
無差別襲撃犯と変わらない。
「これだから苛めはなぁ。この事件が終わったら学校で苛めの撲滅に力を入れてくれないか?学校の生徒会長なんだろ」
「わかっているよ。丁度、今日はその話もしてきたし」
そうかと嬉しそうにする父親。
仕事が減ると家に早く帰って家族といられるから、そうして欲しいと思っている。
「あと悪いけど、その内容についてある程度形になってから相談に乗ってくれない。現職の人にも相談した方が安心できるし」
「良いよ。その時は生徒会の友達も連れてきてくれ。少し会ってみたいし」
「別に良いけど。他の子も連れてきて良い?今回、生徒会のメンバーとは違うけど一人だけ特別に協力してもらっている子がいて」
「特別……?」
特別と聞いて目を光らせる父親。
どういうことかと視線で問いかける。
「うん。一年生の役員が信頼していて、私も有能だとは知っていたから特別に許可したのよ」
そういうことかと納得する父親。
娘の特別と聞いて彼氏かと想像した。
「そういえば生徒会の一年生の父親も警察官みたいだけどお父さんは知っている?」
「名前は?」
「ダイキ・フルドっていうんだけど………」
フルド……、フルド……と何度か声に出して思い出そうとする父親。
「あぁ、あいつか。そういれば息子が今年、高校生になるって聞いたな。まさか娘の後輩になるとは」
「知り合い?」
「まぁな。職場での後輩だ。今度、同じ年ごろの子供を持つ親として話しかけてみるか」
父親は自分達と同じように子供たちも先輩後輩となっていることに面白さを感じていた。




