一八五話
「つまらない」
大会が終わりディアロは大会の感想として、つまらないと口にする。
それを聞いた同じ学校の者たちは、それもそうだろうなと苦笑していた。
「結局、ディアロ様は何もこの大会で何もしていませんからね!情報はある程度隠せたと思います!」
リィスの意見には教師も他の皆も頷いていた。
事前に言っていた試合に出るとしても敗けろという指示に従ってくれて安堵する。
「そうだね。お陰で次の大会でも有利に動けそうだ。………次の大会ではディアロ君も戦えるんでしたっけ」
「あぁ。確か大丈夫だったはずだ。ディアロも次からは暴れていいぞ……?」
その言葉にディアロは両手を上げてガッツポーズを作り喜ぶ。
その姿に教師だけではなく全員が驚いてしまう。
「ディアロ、そんなに暇だったの?」
「当り前だろ?ただ来ただけでやることは無かったんだから。試合に出ることはあったけど情報が出来るだけ隠したいってことで直ぐにリタイアしたし。強そうな者もいなかった」
ディアロの言葉には何も言えない。
星抜き戦や集団戦では試合に出たがディアロだけは何もせずにリタイアしていた。
これでもし勝ち進めないとなるとディアロも戦えたのだが、その様子は一切なく理不尽にも相手を恨む。
「取り敢えずは次の大会から大丈夫のはずだから、な?」
教師の言葉にディアロは頷く。
これで次の大会でも出番がなければ暴れてやると考えていた。
「くそ………」
大会会場に残っていたほとんどの生徒たちは結局、ディアロを本気にさせることが出来なかったことに悔しく思い地面に拳を叩きつけていた。
夕食を食べる時間、ディアロが戦うのを止められていることを聞いた日。
ほとんどの学校の生徒たちがいた。
そして、その場にいなかったとしても他のその場にいた学校の生徒から話を聞き舐められていると感じた者がほとんどだ。
それならディアロを本気に出させざるを得ない状況にしてやると意気込むが結果は引きずり出すことも出来ずに敗北してしまった。
優勝へと近づくたびに学校の垣根を越えて協力していったのに阻むことも出来ずに蹂躙される。
学校の中でも特に強く選ばれたことに自信を持っていたのに、それすらも粉々にされてしまった。
「うーん……」
それを見て一人の男が悩み声を上げる。
「どうしましたか?会長」
男は県の武闘会会長だった。
戦いが人気のこの世界で、自分達が住む地域の者たちを強くする役目がある。
「いやコンバット学校一強だと思ってね」
「それは確かに……」
少しづつだが他の学校が協力していってもコンバット学校に勝つことは敵わなかった。
それどころか一人だけ情報をほとんど隠して勝っていった。
「このままコンバット学校が一強だと詰まらないと思うんだよ。どうにかして他の学校も強化しないと。このままだと全体的には弱いままなんじゃないか?」
「そうなんですか?」
会長の言葉に秘書はたしかにコンバット学校は強すぎるが他の学校も強いんじゃないかと思っている。
あくまでもコンバット学校が強すぎるせいで比較にされて弱いように見えるだけだと考えていた。
「うん。多分、他の地域で戦わせても上位には入らないと思う。……普通は互いに競い合って強くなるはずなのに、なんでこの環境でコンバット学校は強さを維持しているんだ?」
まさかコンバット学校以外の学校が他の地域では上位にも入れないという会長の指摘に秘書は信じられない気持ちになる。
ちなみに秘書は信じられない気持ちになっても間違いだとは思えなかった。
一地域とはいえ会長に選ばれた者が見誤る目を持っているとは思えなかった。
「そうなんですか……。もしかしてコンバット学校が強いのは周りの学校を見限って校内で激しく競い合っているのかもしれませんね。それで世界大会常連の実力を維持できているのかも」
「………」
有り得そうだと思えるし、同時に無理だろうとも思う。
それが出来るとしても、どれだけ激しく校内で競い合っているのか疑問だ。
「地域の強化合宿だとしてもコンバット学校を誘わないのは問題だし。来ても差は縮まらないだろうし、どうするかね?」
「そうですね。今度、こちら側から見学に行って、どう鍛えているのか勉強しに行きますか?それとも地域の皆を強くすることを優先して差を縮めるよりも頭を下げて鍛えてもらいますか?」
秘書の言葉に地域に住んでいる皆を強くする義務を思い出す会長。
その意見に賛同しようと考えるが自分のライバルになる学校を鍛えるか疑問だ。
それでも良い意見だし頭を下げても実行して欲しいと思う。
「そうだね。地域の皆を強くする義務があるんだ。せっとくして彼らに鍛えてもらおう。教えることで理解が深まってさらに強くなるかもしれないと言えば納得するかもしれないし。それに、もしかしたらライバルがいなくて張り合いが無いだろうから、あっさり認めてもらえるかもしれない」
秘書も会長の意見に同意する。
そして説得の際には自分も協力しようと決意していた。




