一八二話
「はぁ~」
教師の泊っている部屋から出て少し離れるとディアロはため息を吐く。
その様子にレイはどうかしたのかと心配そうに声を掛ける。
「急にため息なんて吐いてどうしたのよ?」
「試合で戦うのは認められないだろうなぁって思って」
「え?でも生徒会長と相談するって……」
「相談はするんじゃないか?結果は変わらないだけで」
つまりは形だけやると言うことだ。
そのことにレイはため息が出る。
こちらの望みを叶える気は無いのに聞き入れたようにように見せるのは狸だと思ってしまう。
「あっ、二人とも。これからディアロ様の部屋に向かおうとしていたんですけど、何所か行っていたんですか!?」
そしてディアロの部屋に戻ろうとしている最中にリィスと出会う。
これから自分達のところへと向かおうとしていたと言うが自分ではなくディアロの部屋に向かっていたリィスにレイは睨む。
自分の恋人のいる部屋に向かうなら、まずは恋人である自分を連れて行くべきだ。
「恋人の私がいるのに一人でディアロの部屋に向かおうとしたのよね?」
「?どうせリィスさんはディアロ様の部屋にいるでしょう?」
「「………」」
リィスの何でもないかのように言った言葉に二人は何も言えなくなる。
実際にレイはディアロの部屋にいたから否定することが出来ない。
「それよりも夕食一緒に食べに行きませんか!?どうせなら皆と食べたいので!」
リィスの提案に二人は頷き時間までディアロの泊っている部屋で時間を潰すことになった。
「それにしてもロールド学校は運が無いと思いません?折角の大会なのに出場できないなんて」
「何を言っているのよ?私たちの学校と一回戦で当たった時点で運が無いわよ。相手はうちからしたら格下だし、どちらにしても一回戦負けをするわよ」
レイの意見にリィスもディアロも否定しない。
特にディアロはロールド学校の生徒を直に見て相手にならないと思っていた。
面白そうだから挑発をしたが期待は出来ないだろうなと考えていた。
「はぁ~。暇だ」
この大会ではやることが無いからディアロはため息を吐く。
本来の実力を発揮させることも僅かでも見せることも許されずに負けを強要される。
正直、ストレスを溜めてしまいそうだ。
「暇って……。代表、それも大将にディアロ様は選ばれたんですよね?」
「試合に出ても負けるか避け続けろと言われているんだよ。実力を隠せだってさ」
確かにそれは暇だろうなとリィスも頷く。
試合の勝敗は全て自分以外の者で決まるのだからディアロはいてもいなくても変わらない。
「それにしてもいい加減にディアロも慣れたわよね……」
「………色んな奴らに様付けされていたら、そりゃあな」
学校で実力差を分からせてからディアロは様付けで呼ばれるようになってしまった。
様付けで呼ぶほとんどが崇拝の念で呼んでおり、ノリで呼んでいる者は少ない。
リィスも崇拝からディアロを様付けで呼んでいる。
ちなみにディアロは最初は様付けで呼ばれるのは嫌で止めるように言った。
だが、それでもふとした瞬間に様付けで呼んでしまう者が多く、その度に止めるように言うのもめんどくさくなった。
その結果、普段からディアロは様付けで呼ばれるようになった。
何人かはそんなディアロに好い気になりやがってと敵意を持つ者もいるし、様付けで呼ばれることに恥ずかしがっているディアロに同情している者もいた。
「別に様付けでも良いじゃないですか……。それだけディアロ様に崇拝しているわけですし」
崇拝されていると聞いてディアロは微妙な表情を浮かべてしまう。
正直、そこまで嬉しくなかった。
そのせいで様付けをされるという恥ずかしい経験をされているのだ。
何も知らない周りからはどう思われているのか考えたくもなかった。
「それにしても私は本当に運が良いです。こうしてディアロ様とレイさんの近くにいるんですから」
コンバット学校でも一年生で代表に選ばれたのはディアロだけだ。
他にも一年生でホテルに泊まっている者もいるが、それは全員がサポートとして。
つまりはレイやリィスもサポートとして選ばれてきている。
特にリィスは選ばれたことから崇拝者たちに尊敬と嫉妬の視線を向けられていた。
その視線にリィスは気持ちよくなりながらも胸を張ってサポートとしてディアロと一緒に来た。
実はリィスはディアロの崇拝者たちの中でも宗教でいうトップに近いが、それでも嫉妬の視線を向けられていた。
普段からディアロやレイと一緒にいるのだから今回ぐらいは譲れよと思われていたし、絶対に譲らない姿からそれでこそだとも思われていた。
近々、崇拝者のトップとして立つことになるかもしれない。
「ふぅん。それよりも、そろそろご飯を食べに行かない?」
呆れたような顔を見せたディアロから夕食を食べに行かないかと提案される。
レイもリィスも腹が減ったからと頷きホテルのレストランへと行くことに同意した。




