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一八一話

「ディアロ、聞いた?」


「聞いたって何を?」


 ディアロが大会に参加するために泊まっているホテルの部屋にレイが入ってくる。

 そして聞いているかの確認にディアロは何の話かと聞き返す。


「最初の試合相手だったロールド学校だけど事件が起きて参加できなくなったみたいよ」


「………ふーん」


 それなら初戦は不戦勝になるのかとディアロは予想する。

 それにロールド学校と聞いて以前に見たことはあるが負ける要素が無いから、どうでも良いと考えていた。


「驚かないわね」


「だってどうでも良いし。それよりも不戦勝になったってことで良い?」


 どうでも良いと聞いてレイはディアロを睨む。

 そして本当にどうでも良さそうにベッドに寝っ転がって本を読んでいる姿に呆れてため息を吐く。


「大将に実力で選ばれているからって油断しすぎじゃない?」


「そう言われても大将だぞ。基本的に一番最後にしか出番が無い大将。正直、うちの学校だったら大将の俺が出る前にこの大会を優勝で決めてしまいそうなんだけど……」


 ディアロの意見にレイは何も言えなくなる。

 たしかにディアロたちの通っている学校は世界大会にも出場しているから実力が高い。

 こんな大会で敗けるとしたら余程、相性が悪かったりするぐらいだろう。

 ディアロが今大会で試合に出る可能性も低い。


「先鋒だったら、まだ良かったのに……」


 そうすれば経験も積めるのに大将だからと最後に回されて不満をディアロは口にする。


「あはは……」


 自分が準備しなくても他の代表者の皆なら勝てるとディアロは確信している。

 もしかしたら信頼とも言えるかもしれないそれにレイも不満は無くなっていた。


「今からでも先鋒に変えてもらう様に頼みに行く?」


「迷惑じゃないかな?俺だったら既に決めたことを急に変えるのは嫌なんだけど……」


「でも一度でも経験を積むべきだと私も思わよ。いざ戦うとなると緊張するかもしれないし……」


「………あんな大勢の前で戦うからな。絶対にぶっつけ本番だと緊張して本来の動きが全くできなさそうだ」


 それならとレイはディアロの手を引いて教師の泊っている部屋へと向かう。

 目的は当然、ディアロを大将じゃなくて先鋒にするためだ。


 そして一緒に手を繋いでいる姿に廊下で、その姿を見ていた者たちは様々な反応を見せる。

 年下の子が仲良さそうに手を繋いでいる姿に微笑ましく思っている者もいれば、嫉妬で睨んでいる者もいる。

 中には大会に参加しているのにイチャ付いていることに怒りを抱いている者もいた。


「先生!今、大丈夫ですか!?」


「急にどうした!?」


 レイが教師の泊っている部屋に呼び鈴もならさずに中に入ったことに教師は酷く驚く。

 それはディアロも同じで、こちらはため息を吐きながら呆れた目を向けてしまう。

 一緒に教師の部屋に来るのは良いが、せめて呼び鈴を鳴らすぐらいはしろよと思う。


「ディアロ、流石に呼び鈴を鳴らさずに中に入るのは止めて欲しかったんだが……。お前の恋人なんだろ?」


「すいません。止める間も無かったので。それとお願いがあるんですが」


 ディアロの言葉に教師はため息を吐いて頷く。

 急に現れて言いたいことだけを言おうとする二人にさっさと話して帰ってもらいたかった。


「俺に経験を積ませるために先鋒にしてくれませんか?大将だとこの大会、出番はないと思うんですけど」


「………ダメだ。君は切り札だからな。存在は知られていても隠したい」


「肝心な時に初出場で緊張で敗けたら、どうするんですか?」


「?前に皆の前で学校の実力者をボコボコにしただろ」


「アレと今回のは違います」


 前回、ボコボコにしたというのはディアロがレイの恋人になったということで不満をぶつけてきたヤツだろう。

 ディアロにとってはこの大会とは全く違う。

 喧嘩を売ってきた者たちが、ただ不快でしかなくイラついていた。

 だから見られていたとしても怒りで何も影響はなかった。


「一試合だけでも良いですから体験させてください!!」


 ディアロの頼みに教師は悩んでしまう。

 正直、集団戦などが選ばれれば戦うことが出来る。

 だけど基本的に何もやらせるつもりは無かったしディアロにもそう指示をしている。

 集団戦では避けることしか許すつもりは無い。

 詳しい情報は晒したくなかった。


「でもなぁ……」


 正直に言ってコンバット学校を勝たせたい教師からすれば隠したかった。

 星抜き戦もあるが大将だから最後Dだし態と負けさせようと考えている。


「お願いします!!」


 必死にディアロは頭を下げているが教師は受け入れようとしない。

 そこで良い案が思いついたとばかりに顔をにやけさせる。


「わかった。フィンたちにも相談しよう」


「ありがとうございます!」


 生徒会長にも相談して決めると言う教師にディアロは表面だけ嬉しそうに頷いて礼を言う。

 どうせ相談をするだけで方針は変わらないのだろうと予想していた。


「それじゃあ失礼しました!」


「おう。次はちゃんとノックなりに呼び鈴を鳴らすなりしろよ」


 教師のその言葉に頷いてディアロとレイは教師の泊っている部屋から出て行った。

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