一八話
ディアロは今日も放課後は生徒会室へと行く。
今日は一年生の調査だ。
誰と行くことになるのか少し楽しみだ。
「やぁ、ディアロ君。今日は私と一年生の調査に行こうか」
生徒会室に入ると生徒会長が開口一番に決定事項を話してくる。
中には生徒会長一人しかいないが他の者たちは既にきて、そのことを伝えたのだろうかとディアロは考える。
「その前にちょっと待ってくれ」
そう考えていたらフィンは空白の紙を取り出して、それに書き始める。
内容はディアロと一年生の調査に行ってくるから他の仕事は任せたと書いてある。
「これで十分だね」
「まだ生徒会長しか来てないんですか?」
満足そうにしているフィンにディアロは思わず突っ込んでしまう。
生徒会長とは言え他にメンバーに何も言わずに決めて良いのかと。
「それに相談もしないで決めて大丈夫なんですか?」
「生徒会長だから大丈夫さ。さぁ、行こう」
それだけを言って先に歩いていくフィンにディアロは慌てて後を付いて行った。
「うーん。誰にも会わなかったね」
生徒会室から一年生の教室に着くまでに生徒会のメンバーとは誰とも会わなかった。
おそらくは、すれ違いになったのだろうとディアロは予想する。
「それにしても犯人を推測できているんじゃないかって私たちは予想しているけど、当たっているかい?」
ディアロは突然に二人で調査に行くことになった理由はそれが聞きたかったからと納得する。
そして、それに対する答えは決まっている。
「いいえ。全然、見当がつきませんね」
答えは否だ。
どうして、犯人が誰だかわかっていると想像されているのか理解不能だ。
そんな素振りなんて見せた気は無かった。
「………本当にかい?」
再度の質問にディアロは頷く。
何度聞かれても答えは同じだ。
正直、誰が犯人でもおかしくないとディアロは思っている。
自分を襲ってきたときの人数といい、予想の数倍の犯人がいる。
あれらが一部だとして、それら全てを特定など出来るわけがない。
「何度も言うけどわかりませんので。犯人を捜すのは警察に任せましょう」
答える気が全くないディアロにフィンはため息を吐いて諦める。
同じ学校の生徒を助ける気は無いのかと不満を持って睨む。
「それよりも今は一年生の情報を集めましょう?情報を集めて警察に任せて終わりたいですし」
それに頷きフィンは何度も犯人を見つけるのは警察に任せるとディアロが言っていることに気付く。
思い返せば最初から警察に犯人を見つけるのは任せたいと言っていた気がする。
もしかして自分の手で犯人を捕まえようとしないのは何か理由があるんじゃないかとフィンは想像した。
そう考えると少しだけディアロへの不満は減る。
「あれ、ディアロじゃん。今日は一年生の調査?」
「そう。一年生で苛めの情報くれない?被害者が復讐するかもしれないし」
「良いけど、苛めの被害者が復讐か。今回の事件ってそういうこと?」
「多分ね。あと苛めの被害者全員が復讐者とは限らないからな?復讐するなと責めるなよ?」
「わかっているって」
苛めの被害者だから事件に関係あるとは、たしかに限らない。
その調査もあるからディアロは犯人に関して警察に任せたいと考えているのかもしれないとフィンは想像する。
「それで何か知っていることは無いか?」
「そういえば………」
ディアロとフィンはそうして様々な一年生から情報を集める。
一年生からも意外といじめられている生徒が多かった。
それでも二学年よりは少なく、どうやらこの学校に来る前から苛められていたらしい。
「思ったよりも一年生も多かったですね」
「………そうだね」
一年生の被害者が多い現実にフィンはため息を吐く。
二年生も三年生もそうだが、この学校は苛めが多い。
気づかなかった者、見ていただけの者も復讐対象となるなら、この学校の生徒全員が復讐対象になってしまう。
「苛めの被害者の友達も苛めの加害者に復讐するんですかね?」
その可能性もあると考えてフィンは頭を抱える。
苛めの被害者だけでなく、その友人も候補に考えるなら誰が事件の犯人なのか全く分からなくなる。
「可能性はあるんだろうね。私たちじゃあ探すのは難しそうだ」
フィンも自分達生徒じゃ犯人を見つけるのも難しいと理解する。
今はまだ学生だから犯人を特定するための技術は少ない。
警察といったその道のプロに任せた方が確実だ。
そこまで考えてフィンはディアロを見る。
容疑者が多いから自分達学生だとミスを多くするかもしれないからプロの警察に任せたいと。
そうして見たディアロはため息を吐いていた。
「本当に多い。この学校って不良校じゃないのか?それとも、どこの学校もこんなものなのか?」
ディアロのぼやきにフィンは何も言えない。
正直、ここまで苛めの加害者が多いとフィンも同じ感想を持つ。。
そして苛めに気付かなった自分も加害者側だとみられているのだと考えて絶望する。
もし、どこの学校も同じようなものだとしたら人そのものにフィンは絶望しそうになる。




