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一七七話

「くそっ!!どうしてたどり着けない!!」


 バスが燃え上がる炎。

 そして爆発した際の音。

 学校の中にいなくても何か起きたのだと気づいている者は当然いる。

 そして警察へと連絡した者もだ。


 だが学校の中に入ることは出来ず、何度も学校の中に一歩入ると別の出入り口に出てしまう。

 目の前で火災が起きて事件性があるのに中に入れないのは警察として認められなかった。


「何で学校の中に入れないんだ!もう一回だ!!」


 そして、もう一度試してみると今度は中に入ることが出来た。

 どうして中に入れたのか理解できないが警察の一人は炎が燃え上がっている場所へと走って向かう。

 そこには彼以外にも突入しようとした仲間たち、そして消防官などもいた。




「…………」


 彼らが集まった中心には『這い出て来た黒い何か』がいた。

 その周りには、この学校の生徒やその家族、そして教師の死体が積み重なっていた。


「「「うぼぇ……」」」


 消防官や何人かの警察官はそれを見て吐く者も出てきた。

 吐いていない者も血なまぐさい匂いに不快な表情を見せる。


「何なんだアレは……?」


 『這い出て来た黒い何か』は全く人に見えない姿をしていることもあり、それぞれが武器を向けて警戒をする。

 状況からして、これだけの死体を作ったのは目の前の化け物だと判断できたからだ。

 そして同時にたった一体でこれだけの惨劇を生み出したことに恐怖を覚えてしまう。


 抑え込めるのか、それとも勝てるのかも分からずにただ武器を構えて怯えていた。

 初めて見る生き物でもあるのだ。

 他にもいないか、どんな生態をしているのか調べる必要はある。


「…………」


 そして『這い出て来た黒い何か』は警察官たちの前で体がボロボロと崩れ落ちていく。

 目の前の惨劇を繰り出した存在が自分達が何もしなくても崩れていくことに警察官たちや消防官は呆然としてしまう。

 詳しく調べて似たような事件は起きないようにしないといけないのに、それさえも出来ない。

 そのことに気付いた警察官の一人は急いで『這い出て来た黒い何か』がいた場所に駆け寄っても既に何もなくなっていた。

 残っているのは学校の関係者の死体だけだった。


「…………どういうこと?」


 事件があってここまで来たのに最後は目の前で犯人らしき者は死んでしまった。

 何も手掛かりがつかめないのかと警察官たちは悔しくなる。


「………申し訳ありませんが消防官として消火活動だけはして良いでしょうか?このままだと他に燃え移りそうで怖いので」


 そして消防官も急にボロボロに崩れ落ちた『這い出て来た黒い何か』に恐怖を覚えながらも消火活動の許可を警察官に求める。

 それには警察官たちも頷き頭を下げてお願いをしている。

 死体にも火がこれ以上、燃え広がるのは嫌だった。






「………あの黒い化け物は何だと思う?」


 消防官が消火活動を行っている中、警察官たちは集まって『這い出て来た黒い何か』について話し合う。


「新種の魔獣とかでしょうか?」


 一人の意見に全員が微妙な顔をする。

 たしかに魔法の影響で普通の生き物とは違う特徴を持った生き物、魔獣もいる。

 有り得ると思うが、それでも学校に着くまでに誰にも見られなかったこと。

 そしてまるで魔獣が学校の関係者を殺しつくすまで邪魔されないようにされていたこと。

 それらが新種の魔獣だとしても野生だとは思えなかった。


「もしそうだとしてもやっていることが野生ではありえないよな。明らかに人手が加わっている感じがする」


 野生の魔獣が逃げられない様に、邪魔をされないようにするなんて聞いたこともないし考える知能があるとは思えない。

 そして目的を達したら勝手に崩れ落ちた姿に本当に魔獣であるかも疑ってしまう。


「もしかしたら魔獣でないのかもしれないな」


 魔獣も所詮は生き物なのだ。

 目的を達したら勝手に崩れ落ちて消えてなくなるなんて普通は有り得ない。

 もしかしたら魔法なんじゃないかと疑ってしまう。


「有り得るな。いくら魔獣でも確認されているのは元の生物の特徴がかなり残っている。なのに黒い化け物はいろんな生物の特徴はあったが、どれか分からなかった」


 何よりも姿が一定せずに色んな姿に変わっていった。

 そんな生物は普通は存在しないと考えるから魔法だったんじゃないかと考えてしまう。

 目的を達したら証拠を残さないように勝手に崩れ落ちるなんてお伽噺の魔法みたいに便利だ。


「そうですね。あと、まるで挑発しているみたいですね」


 その言葉に全員の視線を集める。

 それに怯えながらも説明を続けていく。


「いや、だって。全てが終わった後に見せつけるようにボロボロに崩れ落ちて消えたんですよ?まるで私たちでは何も出来ないと挑発しているみたいじゃないですか?」


 その言葉に最後の光景を思い出して警察官は怒りが湧く。

 たしかに言うとおりだった。

 明らかに狙って警察官の前で証拠が見つからない様に消えてなくなる。

 嫌がらせとしか思えない。


 そしてやはりこんなことが考え着くのは野生では無理だと判断できてしまう。

 犯人が別にいると推測され捜索されることになった。

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