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一七三話

「キャアァァァァァ!!!!」


 満面の笑みを浮かべたネストが倒れるのと同時に悲鳴が上がる。

 ネストの腹からは血が溢れており匂いがバスの中に充満している。

 そして大量の血が流れていることと内臓が飛び出ていることでネストは死んだと確信していた。

 

 バスの中にいた者達は人が死ぬところなんて見たことが無いから女性のほとんどは悲鳴を上げ、男性も顔を青くしている。

 中には男性女性関係無くに意識を失う者もいた。


 そのせいで意識を失った者たちの一人はネストの残った片腕辺りから『這い出て来た黒い何か』に喰われる。

 『這い出て来た黒い何か』の姿はオオカミのようにも見るし、蛇のようにも見えるし、まと鳥のようにも見える。

 姿が全く一定せずに常に変わっていた。


「は………?」


 ネスト以外に最初に喰われた者は頭から吞み込まれた。

 あの様子だと痛みもなく死ねて幸運だと見ていた者達は思ってしまう。

 死者が増えたことによる現実逃避だ。


 そして『這い出て来た黒い何か』はそのまま意識を失った者たちに触手のようなものを伸ばす。

 それを認識した者達は意識を失った近くにいる者を担いでバスの外に出た。

 バスの外に出た者達は全員がバスの出入り口に移動せず壊して外に出たせいで、バスは壊れてしまう。

 そのせいかバスが爆発した。

 生きている者でバスに残っている者はいない。

 残っているのは『這い出て来た黒い何か』だけだ。


「はぁ……はぁ……」


 急に生きるか死ぬかの場面に出くわし、バスの外に出たものたちは呼吸を荒げる。

 本気で死ぬかバスの中にいた者たちは思っていた。

 一体、『這い出て来た黒い何か』は何なんだと思ってしまう。

 ネストの片腕辺りから出てきたことも気になる。


「何があった!?」


「急にネスト君の片腕辺りから『黒い何か』が這い出てきてネスト君やネスト君が死んだことで意識を失った者を殺した」


 エストの答えにバスの外に最初からいた者たちは何を言っているんだと呆れた視線を向ける。

 目の前でバスが爆発したが、それでもエストの言っていることが理解できないでいた。


「何を言っているんだ?」


「事実だ。バスの爆発に巻き込まれたから『這い出て来た黒い何か』も死んだと思うが警戒はしろ」


 そしてバスの中に一緒に乗っていた教師もエストの言葉が事実だと述べるせいで理解は出来ないが無理矢理納得する。

 そもそも『這い出て来た黒い何か』とは何だと疑問を抱いていた。


 そのまま数分ほどバスが燃え上がっているのを見てエストたちバスの中にいた者たちは息を吐いて地面に座り込む。

 流石に『這い出て来た黒い何か』も燃え死んだと思って安堵していた。


「本当に何だったんだアレは?」


 急に現れて殺していった『這い出て来た黒い何か』の存在にバスの中にいた者たちも疑問を抱く。

 先程までは気を抜いたら殺されるんじゃないかと思っていて考える余裕は無かった。


「そういえばネスト君がいつも手放さなかったアクセサリから『這い出て来た黒い何か』が生まれたような気がするんだけど……」


 ほとんどがネストの片腕辺りから這い出て来たとしか認識していなかったから正確な場所を口にした者に本当かと視線を向ける。

 それに対して首を縦に振ることで頷き、真実だと理解する。


「だとしたら『這い出て来た黒い何か』のことを知っているのはネスト君だけか……」


 何であんなに危険なモノを手放さず、ずっと身に着けていたのも疑問だ。

 そのせいでネストは死んだし、関係の無いはずだった者も死んでしまった。

 もしかしたら自分達も死んでいたんじゃないかと考えると死んでしまったとはいえネストに対して怒りを抱いてしまう。


「………何で~?」


 そしてルーはこれからアタックしようとしていた男の子が死んだことに絶望していた。

 恥ずかしいが母親にも応援されて、これからだと未来に希望を持っていたのに奪われてしまった。

 その喪失感がルーの胸を満たす。


「ルー……」


 ルーの心情を察してか母親が娘を抱きしめる。

 エストの話を聞く限り、意味も分からず目の前で好きな男の子が死んだのだ。

 トラウマになってもおかしくない。


 そしてルーの父親も先程まで会話していた若い少年が死んだことにショックを受けていた。

 あまりにも若すぎる少年が死んだことが信じられないでいる。

 それが事実だと認識するのは実際に死体を見てからかもしれない。

 だが、その死体も爆発したバスの中にあったから判別はつかないのかもしれないか。


「そんな……」


 そしてネストの家族たちも絶望していた。

 折角、少しずつ家族の仲が良くなってきたのに、その一人が死んでしまったと聞いて絶望していた。

 これからは少しずつ仲が良くなってきた息子を虐げた罪悪感と一緒に生きていかなければならないと考えると後悔の念が押し寄せて来ていた。

 せめて、もっと早く虐げていたことを自覚して治し、一緒に生活したかった。

 それがもう叶わないことを認識して辛くなる。


「サリカだけは絶対に護る」


 子供が自分達と離れて生活させるのは無しにする。

 息子が死んだこともあり、残されたもう一人の子供とも離れて暮らすなんて考えられなかった。

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