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一七話

「思ったよりも良い店だなぁ」


 聞こえないように小声で事務員は店に来て感想を言う。

 もう夜も遅く他の店なら閉まっているのに開いていたから以外だ。

 それにお互いに学生なのに入れてくれたことにも珍しいと思っている。


「そうでしょう」


 事務員の感想に自慢するレイ。

 お気に入りの店が褒められたことが嬉しそうだ。

 自分の見る目が褒められたと感じているのかもしれない。


「それで話って何?」


 店の中に入り席に座ると早速、話の内容を質問する事務員。

 そのことに少しだけ不満を持ちながらもレイは口にする。


「そのさ。普段からも話しかけて良いって言ってくれたけど、まずは設定を考えない?」


「そうだね。どういう風に仲良くなったかまずは考えようか」


「それなんだけどさ。貴方が私を助けてくれたことにしない?事実、そうだし。ただし助けてくれた内容は複数人で囲まれたときに隙をみて助けてくれたことにして。全員を倒して無双した内容よりは良いと思うんだけど」


「…………」


 事務員はレイの意見に閉口する。

 内容に文句は無い。

 文句は無いが具体的な内容がスラスラと出てきていることに驚いたせいだ。

 もしかして、ずっと考えていたのかと想像してしまう。


「あの……?」


「その設定で良いよ。後は日付も決めておくか」


「日付も……」


 レイは事務員の意見に少し引き気味になる。

 設定にこだわると言うか、そこまで考えなきゃいけないのかと。


「同じ学校になったのは最近だろ。それまではろくに関わりが無かったから、そのぐらいは決めた方が良いんじゃないか?」


「………それもそうね」


 事務員の言葉に納得するレイ。

 そして、いつにするか悩む。

 あまりにも前過ぎると、何で今まで関わろうとしていなかったのに急に関わっていくのが疑問に思われそうだ。


「一か月だと長すぎるし、一週間から二週間前か?」


 事務員の言葉に頷くレイ。

 そのくらいなら今まで関わらなかったのも恥ずかしかったからで誤魔化せそうだと判断する。


「それで決定ね。せっかくだし休みの日は一緒に何処かに出かけない?」


 仲良くなることにメリットはあるが、そこまでやるのかとため息が出る。

 学校で話したりするだけでも十分に効果はあるが、それだけではダメなのだろうか?


「何よ。私はこれでも学校でも美少女だと有名なのに……」


 ため息を吐いたことに不満を出すレイ。

 このままだと、もう一つの内容を話す気も無くなる。


「………一応言っておくけど、バイトの連中は全員が貴方が学生だと想像はついているからね」


 詳しく話す気は無い。

 折角、デートの誘いにため息を吐かれたのだから理由は自分で考えたらよい。


「…………」


 鋭い視線で睨まれるが何をされても答える気は無い。

 例え首を絞められても、体をその腕で貫通されられても同じことだ。


「もしかして仕事の開始時間が学校が終わってからか……」


 今日も学校が終わって事務所に来てから仕事の時間が始まる。

 不定期だが基本が学校が終わってからの時間だから、その気になって調べられたら分かることかもしれない。

 それに、もし学校の開校記念日などの休日だとしたら更に絞りこまれる。

 それらの予想をレイに言っても微笑まれるだけだった。


「…………」


 レイは顔だけは微笑みながら冷や汗をかいていた。

 事務員が特定される原因に直ぐに自分で気づいたからだ。

 本当なら焦らせるつもりだったが、これは失敗だった。

 もしかしたらワザとそうしていたのかもしれないと想像してしまう。


「まぁ良いや。どうせバイトたちにバレても誰も何も言えないし」


「え?」


 事務員の言葉にどういうことかと疑問を持つが何も言えない。

 口元を指で防がれたせいだ。

 そのせいで顔を真っ赤にしてしまう。


「それにしてもバイトたちにはバレそうになっているのか。レイが黙っていれば答え合わせができないだろうけど、どうするかな?」


「なら黙っているから私に配慮してください!」


 ここしかないとレイは脅しにかかる。

 下手に脅そうとしたせいで殺されるかもしれないのを考えていない。


「配慮って?」


「私の買い物に付き合うとか、遊園地に行くとか!」


 レイの発言に事務員はまぁ良いかと頷く。

 荷物運びとか遊びに行くときとかに奢らせようとするぐらいだと想像する。

 あまりにも度が過ぎるなら反撃はするが、そのぐらいなら構わないだろうと頷く。


「わかった」


 事務員の承諾の言葉にレイは輝くような笑顔になり、周囲から向けられる視線に顔が赤くなってうつむいてしまう。

 大声で自分の要望を話したせいで、その内容に微笑ましさに温かい視線が飛んでくる。

 事務員にも、その視線が向けられているが自分のモノでもないのに荷物持ちとか奢りとかすることに意識が割けられていて気づいていない。


「とりあえず今度の休日に一緒に買い物に行くわよ」


「え?」


「買い物に付き合ってくれるって言ったわよね?」


「………わかった」


 レイからの約束に事務員は頷く。

 今度の休日は相談所にいようと考えていたが、レイとの買い物に予定を変更した。

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