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一四九話

「これをどうぞ!」


「ありがとう。悪いけどネスト、他の奴にもタオルとか飲み物を渡しているみたいけど一旦止めてくれ」


 大将の言葉にネストはもしかしてサポートの話は無しになったのかとショックを受ける。

 この立場にいることで信頼を得られるが、切り捨てられたら信頼するほどの実力が無いと見られてしまう。


「いやサポートに不満があるわけじゃないか意見を聞きたくてな。悪いがネストを借りるぞ!タオルとか飲み物は自分で各自で取って使ってくれ!」


 大将はそれだけを言って自分の訓練にネストを連れて行く。

 そこでしていたのは魔法の訓練だった。


「見ていてくれ」


 大将がそう言った次の瞬間に魔法は放たれ訓練所にあった的に当たる。

 魔法が発動する速度と的に当たる速度、どちらも凄まじく速くネストは感嘆の声を上げる。

 そのことに気を良くしながらも大将はネストに協力して欲しいことがあると頼む。


「何をすれば良いんですか?」


 ネストは頼まれたからには引き受けるつもりだが何をすれば良いのか見当がつかない。

 だから何をすれば良いのか分からないでいると色のついた薄い紙を渡される。


「それを最初は一枚ずつ上から落としてくれないか?できれば……。そうだな二十秒ずつ落としてほしい」


 この薄い紙をかと思って手に持って眺める。

 ちょっとの風でも流されてどこかに吹き飛んでしまいそうだ。


「それじゃあ落としてくれ!」


 壁の上に乗りネストは色のついた紙の最初の一枚を落とす。

 すると予想通りに風に吹かれて紙が飛ばされていく。

 それでも続けるかと思って大将を見ると、魔法を撃った体制をしていた。

 いつの間に撃ったのか思いながら二十秒を数えて、もう一度紙を落とす。


 今度は風に吹かれながらも真っすぐに落ちていった。

 それを見届けていると今度は目の前で紙が消えた。

 何となく大将の方を見ると先程と同じく魔法を撃った体制をしている。

 それで落ちていく紙を打ち抜いたのだとネストは理解した。


「すごっ……」


 もう一度見たいとネストは二十秒数えてから、もう一度紙を落としていく。

 そして流されたと思った紙がまた一瞬で目の前で消えた。


「おぉ……!」


 もう一度、もう一度と二十秒を数えてから紙を落としていく。

 その度に一瞬で消えるのがネストは楽しくなっていた。


「ネスト!二枚に増やしてくれ!」


 今度は一枚だけではなく二枚ずつになるらしい。

 そして言われたとおりに落としてみるが、二枚とも撃ち抜いていく。

 同時に魔法を使ったり、全く別方向に行くのもあって一枚を打ち抜くより余程難しいはずなのに成功させていく大将に尊敬の視線を向けてしまう。

 そして一日中、大将が倒れるまで付き合わせた。




「あ………」


 ネストが落としている紙が撃ち抜かれなかったことにネストは何かあったのかと大将を確認すると、本人が倒れてしまった。

 何度も魔法を休みなしで使っていたせいだ。


「せんぱいーー!!?」


 大声で慌ててネストは大将の元へと急ぐ。

 急に倒れたこともあり、大声で誰かに助けを求めようとした意図があった。

 意識を少しでもこちらに割いてくれれば大将が倒れたのも気づいてくれるはずだ。


「エストー!!?」


「大将ー!!?」


 ネストの意図の通り大将であるエストの元へとネストを押しのけて代表者たちが集まる。

 その姿に自分とは違って大将は愛されているなぁ、とネストは思う。


「何があったんだ!?」


 何で倒れたのか詰問してくる先輩たちにネストは予想で良いのならと答えるが、それでも良いと早く応えるように促す。

 周りを見ても全員が同意見のようだ。


「多分、休みなしで訓練していたからそのせいだと思います」


「………なるほど」


 困った顔のネストの答えに微妙な顔をしてしまう代表者たち。

 どうやら自分達も心当たりがあるらしい。

 訓練に集中しすぎていて休憩を忘れてしまったり、まだ出来ると無茶を通して倒れてしまう経験があった。


「お前らいつまで訓練をしているんだ!?もう帰れ!」


 大将の倒れた理由に苦笑いを浮かべていると教師がやってくる。

 いまだに訓練をして帰らない生徒たちを説教するために来たらしい。

 学校を閉めるから帰れと注意をしている。


「すいません!先輩が倒れてしまったので送ってもらって良いですか!?」


 ネストはそれを丁度良いと狙いを定める。

 担いで家に運ぶよりは教師の車に乗せた方が安全だし楽だと考えていた。


「はぁ!?倒れた!?何で!?」


「おそらくは訓練のし過ぎですね」


「はぁ!!?」


 大将が倒れた理由を聞いて頭を抱える教師。

 相手が相手だから訓練をしたいという気持ちは分かるがやり過ぎだと思っていた。


「はぁ。分かった。俺が家へと送っていくからお前らはもう帰れ。夜は遅いから気を付けろよ」


 教師は倒れている大将を背負って残っている生徒たちにも教師は注意する。

 その言葉に生徒たちも頷いて、それぞれが帰り支度をする。

 それらを確認して教師は訓練所から出て行こうとする。


「一応言っておくけど他の先生たちにも確認してもらうからな。帰ってなかったら反省文は確実にしてもらうぞ」


「「「「えぇーー!?」」」」


 訓練所から出る寸前に言った教師の言葉に生徒たちは先程よりも素早く帰る準備をし、教師を追い抜く。

 その姿にそんなに反省文は嫌かと教師はため息を吐いた。

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