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一四八話

「ネスト、おはよう」


「おはよう!」


 挨拶をしてくれた相手にネストは内心を押し隠し笑顔で抱きしめる。

 抱きしめられた相手は悪い気はしないと少しだけ顔を緩めてしまう。

 ネストが敵意を抱いているなんて考えていないようだ。


「おはよう!」


「おはよう!」


 ネストが挨拶と同時にハグをするのに受け入れている者も入れば恥ずかしいと否定する者もいる。

 その相手が本当に嫌そうにしていたらハグはしないが、それ以外に対しては照れ隠しだとネストは強引に抱きしめる。

 照れ隠している相手も少しだけ嬉しそうにしているから、強引にしても嫌われないだろうと考えていた。


「なんだ、ネスト?あいつらには抱き着かないのか?」


「抱き着かれるのが本当に嫌そうだからしないよ。友好を示すために抱きしめているのに無理矢理にして嫌われたら意味が無いし」


「あいつらは良いのか?」


「照れ隠しているだけでしょ。本当に嫌なら抱きしめないって」


 クラスメイトの一人が抱きしめられたことに嫌そうな顔をした者を指差すがネストは否定した。

 本当に嫌なら抱きしめられる前に本気で拒絶をするはずだ。

 それをしないと言うことは照れ隠しだとネストは判断していた。


「まぁ、たしかに?」


「そもそも本当に嫌なら抱き着く前に全力で否定するはずだし」


 そう言って、本気で嫌そうな顔をしている者に抱き着こうと腕を広げると警戒するように身体を強張らせ入る様子を見せる。


「こんな風に」


「「「「「なるほど」」」」」


 本気で拒絶しているならこうすると実例を見せられて納得させれてしまう。

 ネストは振りとはいえ抱き着こうとしてごめんと謝って会話に戻る。


「ところでネストは今日も代表たちを手伝うのか?」


「まぁね。代表の対象から明日からも来てくれって頼まれたし」


 その言葉に本当かとクルドへと視線を向けて頷かれて感心の声を上げる。

 思っていた以上にサポートとしてネストは優秀らしい。


「そっか。それじゃあ頑張れよ」


 本当ならネストを誘って何処かに遊びに行こうと考えていたが、それなら仕方がないと諦める。

 その代わりに大会で勝てるように頑張れとネストとクルドへとクラスメイト達は声を掛ける。

 クラスメイト達の声援に二人は身体を少しだけ強張らせて頷いた。


 二人のその様子に当然だと頷くと思っていたのにそれとは違ったことでクラスメイト達は疑問を持つ。

 もしかして他は二年や三年だから自信が無いのかと思ってしまう。

 確かに周りは自分より年上の先輩だが代表として選ばれた以上は実力を認められているはずだとクラスメイトたちは考えている。


「皆、来ているかー?点呼を始めるぞ」


 そうしていると教師が来て生徒たちはそれぞれ自分達の席へと座る。

 いつまでも立っていて叱られるのは嫌だった。


「それじゃあ始めるぞー」


 教師の点呼でクラスメイトたちも全員が学校に来ていることを確認する。


「それと大会の初戦の相手は決まったけど文句を言うなよ?」


 大会の初戦の相手を言うだけで文句が出ると教師は予測している。

 そのことに察しの良い生徒たちは二人がネストとクルドの二人が身体を強張らせたこともあって、どことなのか予想がつく。


「相手はコンバット学校だ」


「「「「「はぁーーーー!!?」」」」」


 相手の学校名を聞いてクラスメイト達は絶叫する。


「「「「「はぁーーーー!!?」」」」」


「「「「「はぁーーーー!!?」」」」」


 そして遅れて他のクラスからの絶叫も聞こえてくる。


「その上で本気で勝とうと努力しているからお前たちも応援してやれ。昨日なんて俺たちが止めるまで訓練していたしな。完全下校時間には帰ってほしいのに……」


 つまり教師たちに帰らせられるまでずっと訓練をしていたのだと理解できる。

 完全下校時間が七時だから完全に暗くなるまで訓練をしていることに本気で勝つつもりらしい。

 そのことに感嘆の声が上がる。


「本気で勝つもりなの?」


「まぁ、そうなるな。勝てなくても格上に挑めるんだからと全てを出し切れるように訓練している」


「おぉ……」


 もし勝てても次の試合は負けても良い覚悟で挑むつもりだと聞いてクラスメイト達は自分達も何か協力したいと思う。


「何かネスト以外にも手伝えることは無いか?俺たちも協力したいんだが」


「どうだろ?取り敢えず忘れていなかったら今日確認してみるか?」


 それを聞いてクルドは有難く思うが大将に相談することにする。

 補佐をしてくれるのがネスト一人で大変そうだとは思うが、協力してくれる者が多すぎても邪魔になってしまう。

 もしかしたら他にも協力させてくれと頼まれているかもしれないと考えると勝手に頷くことが出来なかった。


「頼む。俺たちも力になりたい」


 同じ学校に通っている者が世界にも通じる相手と戦うのだ。

 クラスメイト達はどんなことでも良いから協力したいと思っている。


「…………?」


 そして最初に協力を申し出たネストにクラスメイト達は嫉妬して睨んでしまう。

 そのサポート能力が認められたとはいえ直接、サポートできる立場にいるのだから。

 何で睨まれているのかネストは分からずに笑顔で首を傾げているが、絶対に自分達も同じ立場で代表者たちのサポートについてみせると決意した。

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