一一八話
『ところで崇拝派の自爆から呆れて見ているように見えましたが、やはり自爆というのは嫌いなんですか!?』
シェートの疑問に観客たちは興味を持って耳を傾ける。
ディアロが嫌いな事と聞いて詳しく知りたいと思っていた。
『いえ。ただ単に目が光に焼かれても動いていないのがほとんどだから攻撃すれば良かったのにと思っただけです』
自爆が嫌いなのかと思って確認したら違う理由だった。
そして自分が同じ立場だったらと思うと無理だろうなと思う。
急に眼を光に焼かれて行動できる者は少ないはずだ。
『たしかにそうかもしれませんが、出来る者は少ないと思いますよ?』
『そうですか……』
シェートの言葉に少しだけ残念そうにするディアロ。
だがディアロの言葉に参考になると観客の一部は深く頷いていた。
「これで互いに片手で数えられる数しかいないわね」
「全くだ……。ディアロは危険人物だというのに何で誰もわかってくれないんだ!」
排斥派の者たちは、こちらが正義だというのに勝つどころか互角の勝負をされていることに苛立ちを覚えていた。
このままディアロの好きなようにさせると調教されたり力尽くで学校を支配されると考えないのだろうか?
それにレイも、このままだとディアロのモノのままだ。
「レイさんだけでなく学校の皆も救わないといけないのに……!」
崇拝派の者たちも簡単にディアロに調教されて自分達の邪魔をしてくる。
同じ学校に通う仲間として情けなくなってしまう。
「とりあえず、この試合が終わったら一度学校のある地区外から出すぞ。そうしたら正気に戻るかもしれない」
「そうね。他にも私たちから抜け出した皆も説得してもう一度、ディアロに挑むべきね」
ディアロに味方がいることが認められなくて洗脳されたと考える排斥派たち。
実際にそうでもないと有り得ないと思っていた。
ディアロの起こした事件でも責任は少なく、凄惨な現場を見たのに惹かれる者たち。
マゾだとしてもディアロからは恐怖で引くだろうし、いくら強くても教えを乞おうとしないはずだ。
「…………これはディアロにもう一度、挑むための前哨戦だ」
その言葉に排斥派は全員がディアロを睨む。
『…………』
『ディアロ君、急に手を振ってどうしたんですか?しかも振っている相手は排斥派のように見えるんですが?』
『なんか見られているので手を振り返しました』
『いや、アレ見られているというより睨んでいますよね!?』
「「「「「…………っ!!!」」」」」
こちらは睨んでいるのに、にこやかに手を振って返すディアロに排斥派は怒りで声にならない叫びをあげた。
「ぶっ殺してやる!!」
そして崇拝派へと襲い掛かる。
もはや崇拝派はディアロに洗脳や調教された被害者だとかは考えていない。
ディアロへの怒りをそのまま崇拝派へとぶつける力に変えて攻撃していく。
それは試合の始めよりも威力が高く怒りは力になるんだと観客たちに理解させた。
だが同時に怒りに染まりたくないと思っていた。
「おぉぉぉぉ!!」
「死ねぇぇぇ!!」
「くらえやぁぁ!!」
怒りに染まっているせいで攻撃が単調。
いくら攻撃の速度や威力が高くなってもある程度の実力者なら簡単に避けることが出来る。
『排斥派の者たちが凄く怒っています!!まさに怒りを力に変えています!!速い!速い!速い!それに威力も高いです!!』
『凄いですね。怒りの力でこんなに能力が上がるなんて。それにしても何であんなに怒っているんでしょうね?』
『マジで言ってんのか』
シェートの言葉に観客全員が信じられない顔をする。
明らかに怒っている原因はディアロにあるのに惚けているのか真面目に言っているのか判断がつかない。
シェートも真顔で言っている。
『当たり前でしょう?俺は見られていたから手を振っただけですよ?それだけで、あんなに怒るとか………』
ディアロは心底不思議そうな表情でそんなことを言う。
排斥派に嫌われているとこは理解しているが、それでも手を振っただけであんなに怒るか疑問に思っていた。
怒るとしても理性は残るはずだと考えていたから怒り狂っているのは想像できていなかった。
『うん。やっぱりレイは人気者だな』
『関係ある?』
『だって、あれら俺を排除してレイと恋人になろうとしているし。多分だけどストーカーもしているんじゃないか?そもそも忘れているだろうから思い出させるけど、あくまでも俺が嫌いになったのはレイと恋人だからだろう?』
何度も言っているけど、というディアロの言葉にそのことを思い出す。
正直レイのことよりディアロの行動の方がインパクトがデカすぎて忘れてしまう。
『最初はそうだろうけど、今は絶対にそれだけじゃないよね!』
全くだと頷く観客たち。
ディアロを排除してレイの恋人になろうとしているのは半信半疑だが、ディアロを嫌っているのはレイのことと関係ない者もいるはずだと思っていた。
むしろ絶対にいると確信している。
理不尽に嫌われてもいるが同時に自業自得の部分でもあった。