一一〇話
生徒会と各部の部活は家へと連絡し学校で泊ることに伝える。
目的はディアロへと嫌がらせをしている者たちを捕まえることだが、友人たちと泊まるためちょっとした修学旅行気分で浮かれてしまっている。
ちなみにダイキとアクアは自分以外に同じ学年はいないため、ちょっとした緊張と疎外感を感じていた。
「さてと一時間交代で見張ることは覚えているね。順番もちゃんと覚えているね?」
フィンの確認に全員が頷く。
それぞれメモをしていたり泊まる部屋にもメモをした紙を貼ってある。
「それじゃあ、それぞれ男女の部屋に別れてから行動しよう」
「よう。大丈夫か」
「うわっ!」
男子の集まる部屋に入ってダイキは突然、後ろから背中を叩かれる。
「最初はお前からだけど頑張れよ。一緒にいく奴にも散々迷惑を掛けてやればよい」
「そうそう。この場にいる一年はお前だけなんだし俺たちに頼れば良いって」
この場にいるのは三年がほとんどで一年は一人しかいない。
そのせいで緊張しているのを察して声を掛ける。
「は……はいっ!」
それでも緊張しているダイキに三年たちはため息を吐いてしまう。
だが責める気は無かった。
むしろ自分一人だけという疎外感にしょうが無いかと納得する。
自分達が同じ状況でも緊張していることは簡単に想像できたからだ。
何なら周りが一年だけで三年が自分だけという状況だったら緊張はしないが疎外感は覚えてしまう。
「よしっ!お前の時間が終わって帰ってきたら恋バナしようぜ!寝るにはまだ早い時間だろうし!」
「えっ」
「そうだな。面白そうだしダイキ君の好みとか聞こうか」
「えっ」
凄く嫌そうな顔をするダイキに対して三年たちは楽しそうにする。
年下の好きな異性のタイプとかすごく面白そうだと思っている。
「よしっ、行くぞ」
面白そうだからと言って自分の好みのタイプを聞き出そうと考えている先輩たちを見ながらダイキは連れて行かれ絶対に話すものかと決意していた。
「悪いな。あいつらも悪気は無いんだ。ただ単純にお前と仲良くなりたいだけでな」
ダイキと一緒に警戒することになった三年がフォローをする。
あまりにもダイキが緊張して、それをほぐすためにあんなことを言ったのだと。
「ありがとうございます。それにしても何で部長さんたちはディアロへと嫌がらせをしてる者を捕まえることに協力してくれることになったんですか?」
生徒会室で話したのはどうやって捕まえるかで、そのことは話していない。
ディアロとは仲が良いと聞いていたし理由を教える。
「彼と戦ってもらえば強くなれるからね。恩を売ってまた部活に来てほしいのさ。それにストレスを溜めさせて以前のように暴れて欲しくないし」
打算だが強くなりたいという気持ちに理解する。
たしかに強者と戦えれば強くなれる。
同じ学校にいるディアロは都合が良い。
そしてストレスを溜めて暴れて欲しくないという気持ちも理解できた。
以前のあれで何人かが心折れたのは知っている。
あれは二度と起こしたくない。
見ていただけでも泣きそうになった。
そしてディアロの行動に顔を赤くしたり興奮していた者も見ていて心にダメージを与えられた。
「それでディアロは教室ではどんな感じなんだ?あれだけ強いと、どんなふうに生活しているのか気になるんだが?」
ダイキが納得すると今度は三年が質問する。
その内容にダイキは少しだけ困った顔になる。
正直期待するようなものは無い。
「リィスがディアロに縛ってくれと言うまで皆と変わりありませんでしたよ?よくよく考えるとリィスがディアロに付きまとい始めてから嫌われ始めているような……」
リィスが縄を持ち出して縛ってくれと言い始めた辺りから嫌われ始めていないかとダイキは思い出す。
だが、それは教室内のクラスメイトだけかもしれないとも思う。
正直クラスの皆はレイのことを応援していたしディアロと恋人になったことに喜んで祝福していた。
だけどディアロへとリィスが縛ってくれと言ったあたりから微妙になっていた。
「なるほどなぁ。応援していたのに片方が浮気をしていたように感じて裏切られた気分なのか」
その意見に納得するダイキ。
応援していたのに裏切られたと感じたからこそ、もしかしたらディアロは敵意を持たれるようになったのかと想像する。
「でも俺から見るとリィスが勝手に付きまとっているようにしか見えないんですよね……。最初は何度か否定していたのに、それでも縛ってくれって頼んできているし」
厄介なマゾだなとダイキの言葉を聞いて三年は思う。
拒否をしても頼みこんでくるなんて自分だったら普通に嫌だ。
もしかしたら、これもディアロのストレスになっているんじゃないかと思ってしまう。
「まぁディアロは向こうの頼みを無視してパシリをさせていますが」
自分に縛ってくれ首を絞めてくれというマゾをパシリにさせている辺りディアロは思ったより図太いのかもしれない。
それとも出来るだけ顔を見たくないからパシらせて自分から無理矢理にでも距離を離しているのかと想像する。
そしてリィスはもしかしてワザとストレスを与えようとしているんじゃないかと考えた。
そうすれば爆発してストレスを溜めた原因である自分に暴力を振るわれるかもしれないからだ。
そこまで予想してストレスを与えるのは止めて欲しいと祈った。




