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一話

最初っから暗い話を目指して書いていくぜ。

他の作品は途中から、どうしても暗くなったり混ざったりするからな!

 誰も入らないような路地裏に一人の男が入っていく。

 目的はある店の中に入ること。

 魔法を使っているのか、その店は復讐心を持つものしか見つけられず入ることもできない。

 男はその噂を頼りに探していた。


「ここか………」


 そして見つけた。

 男は探していたが本当に見つけるとは思っていなかった。

 探していたのも、それしかもうやれることは無かったからだ。


 その店の名前は『復讐相談事務所』と看板が下げてあった。



「すいません」


「はい、どちらさまでしょうか」


 店の中に入り男が声をかけると返事が返ってくる。

 ただ男か女か若いのか老いているのか目の前にいるのに何もかもが分からない。


「あぁ、すみません。余計な恨みを買わないように魔法を使って誤魔化しているんです」


「なるほど……」


 殺人相談なんて事務所を開いているのだ。

 当然のことかもしれないと男は頷く。


「それで、貴方はどんな理由でここに来たんですか?」


「そんなもの決まっている!!」


 店の前に掛けられた看板と復讐者しか来れないようにしている癖にそんなことを言う事務員に男は怒りをぶつける。

 のんきなことを言われて平然といられるほど冷静じゃない。


「そういわれても、どんな復讐を望んでいるのか知りませんし、どんな理由で復讐をしたいのかもわかりませんからね」


 事務員の言葉にそれは……と少しだけ男は落ち着く。

 思い出すのは娘が苛めで精神を壊した姿。

 声を掛けても反応をしてくれない姿を思い出してしまう。


「あぁ、言わなくても結構ですよ。私はただ相談に乗って提案をするだけですから」


 男は口にしたくもないから、そういってくれたことに感謝する。

 そして手に持っていた写真を見せる。


「復讐したいのはこの四人だ」


 それらは娘を苛めていた女の子の写真。

 己の出来る範囲で探し見つけたものだ。

 良い噂を聞かないために、おそらくは間違ってはいないだろうと考えている。


「うん?あぁ………」


 事務員はその写真を見て笑う。

 この四人は見覚えがあった。

 だからこそ、面白くて笑ってしまう。


「何がおかしい!」


 男は急に笑った事務員に怒りをぶつける。

 当然だ。

 急に笑われて不機嫌にならない方がおかしい。

 もしかして関りがあるのかとも思ってしまう。


「あぁ、すみません。この四人に対して他にも復讐したい者たちがいたな……と」


「………な」


 自分以外にも、この四人を恨んでいてこの店に来た者がいると聞いて男は喜ぶ。

 もしかしたら協力して確実に復讐できるのかもしれないと。


「どうしますか?何人かいますが、この店に集まりますか?こちらから連絡して都合を聞くことも出来ますが?」


 事務員の言葉に是非と頷く。

 そして早速、自分の連絡先を書いた紙を渡してその日を心待ちにして店から出て行った。

 復讐の中身は他の恨んでいる者と話し合って決めるつもりのようだ。




「あははははははは!!!」


 男か女か。

 若いのか老いているのかもわからない。

 そんな存在が男が見えなくなったのを確信してから嗤う。


「まさかまさかまさか!!こんな風に巡るのか!!」


 本当に愉快そうに嗤う。

 復讐がまた新しい復讐を呼ぶのかと思うと、もはや嗤うしかない。

 あの男が復讐をしても、それが理由で復讐が新たに生まれると思うと嗤いが止まらない。


「うるさい!!」


 そんな事務員に怒りの声と同時に頭に衝撃が奔る。

 ぶつかったものを確認すると、それは柔らかいボールであった。

 それでも踏んだら転んで怪我してしまいかねないと拾う。


「なんでそんなに笑っているのよ!」


 投げた相手は可愛らしい少女だった。

 白い髪を伸ばした同年代のスレンダーながらスタイルの良かった。

 そして顔が異様に整っていた。


「…………」


 見惚れるような顔をした少女に事務員は顔を嫌そうに歪める。

 この店にいる癖に素顔を隠していないことに不快になる。

 素顔を晒しているということは正体がバレてしまうということ。

 それを嫌っていて全く正体を分からないようにしているのに少女からバレてしまうと不機嫌になる。


「何よ。その顔………。ごめん、忘れてた」


 誤ってくるが事務員は殴りたくなる。

 本気で謝罪をしているように見えるし、こういうミスは今回が初めてだが気をつけてほしい。

 店の中にいる間ぐらいは徹底的に隠してほしい。


「本当にごめん。今度、何か奢るから」


「いらない。それよりも徹底的に隠せ。じゃないと……ね」


 奢りを否定して事務員は最後に少しだけ笑って見せる。

 ただ、その眼には険呑な光が宿っていた。


「………ごめんさない。今から、ちゃんと気を付けます」


 少女がマントを被ると話していた事務員と同じように、容姿が分からなくなる。

 声も変わっており直前まで見てなければ誰だが分からない。


「それじゃあ掃除をよろしく。それと今日の分の給料は差し引くから」


「は?」


「凄むな。それを着け忘れていたら差し引くと言っただろうが」


「………わかったわよ」


 給料を差し引かれることに怒りを見せるが理由を聞いて少女は納得する。

 そして自分のミスに心底後悔していた。

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