心理学
「5分だけ寝るから、起こして!ねっ!」
その子はそういって首を垂らした。
火曜日の午後イチにある心理学の授業。
大講義室であるから、いつもに比べて人が多い。
そしてこの人はDVDを見せたり、話ばっかりの授業だから
ここにいる人の半分は寝ている。
ほかの人は、スマホを堂々といじったりお喋りしていて
真面目に授業を受けているのは、前方を陣取っている人たちだけ。
雑音が消えない教室では、一年中マスクをした人が
前回の授業と同じ内容をやっている。
もうそれはやったから、予習した部分に進んでほしい。
昔の人のやったことなんて、どうでもいい。
それよりも今を生きる人たちにとって役立つことをやってほしい。
人の役に立ちたい。それがわたしが生きている理由だった。
たっぷりと眠らせておけばいいと、10分後にその子を起こした。
肩を揺らしても、起きない。
やっと今日の部分に内容が入った。
聞き逃しがないように、そちらにも耳を傾ける。
「ねぇ、起きて。5分経ったよ。」
あ、メモ取らなきゃ。
わたしは起きないななを放って教科書に殴り書きする。
その子は起きない。