乗せられやすい僕と、クール時々笑顔な君と。3
今回で3作目です。ぜひ、「載せられやすい僕と、クール時々笑顔な君と。」1と2もお読みください!
「バレンタインだな、親友よ」
「……突然どうした、真」
駒野さんと僕が付き合うキッカケを作ってくれた親友、蒼井真がいきなりそう言った。
「どうもこうもねーよ! せっかくのバレンタインだってのに、なんでテストなんだよぉ!」
ああ、テストか。ホントだ。しかもマジでバレンタイン当日か。
「みんなテストのせいでチョコなんか作ってくれねーかも」
去年とかは被ってなかったから、こいつ相当もらってたような。顔がいいし頭もいいし運動もできる、何気にモテるやつだ。
「大変だな真」
「お前はいいよ! 駒野さんがいるだろ! もらうのかチョコ」
「くれたら、すっごく嬉しいよ」
駒野さんからチョコ。あったらいいなー。内心、とても期待している。
律儀な駒野さんだから、たぶんくれるだろう。そう信じてる。
「リア充め! バルス!」
いや滅びないけど。目も無事だし。
「キッカケ作ったの真だよね?」
「くっそぉぉっ!」
14日の朝を迎えた。いつも通り駒野さんと登校する。若干そわそわしてるみたいだけど、チョコは渡してくれない。
……まぁ、テストがね。駒野さん真面目だしね。
放課後、ざまぁと散々言う真の肩にパンチを食らわせたところに、駒野さんが来た。
「上田くん。一緒に帰ろ」
駒野さんからそれを言うのはとても珍しい。だからなのか、少し顔が赤い。
……かわいい。
「チョコね、ゆっくり渡したくって……」
僕たちのお気に入りの場所に来たとき、駒野さんがそう言った。
川面は夕陽を照り返して、駒野さんの顔を赤く染める。
夕陽のせいってことにしとくよ、駒野さん?
「今、開けていい?」
「うん」
赤いハート模様が入った箱の中には、トリュフチョコとガトーショコラ。
トリュフチョコを1つ食べると、お店のチョコより芳醇な香りがした。すっごい美味しい!
「えっ、すご! 駒野さん、作るの上手いね!」
えへへ、という感じに笑う駒野さん。……萌え死にする、ヤバイかわいすぎるこの子!
「真里に教えてもらったの。元々お菓子を作るのは好きなんだけど、チョコはあまり作らないから」
原さんに教えてもらったのか。……僕って相当幸せ者だと思う。本当に。
手を繋いで帰るこの時間が、いつも楽しみだ。学校であったこと、塾のこと、テストのこと、なんでもいい。駒野さんと話すのはとても楽しくって、この時間がいつまでも続けばいいといつも思う。
「チョコ、よかったら感想聞かせて」
三叉路に着いてしまった。名残惜しい。
「もちろん。チョコ、ありがとう」
名前で、呼んでみようかな。いつまでも苗字じゃ、ちょっと寂しいし。
「他のお菓子も食べてみたいな、美零」
美零の顔がみるみるうちに赤くなっていく。いつもクールなのにね、美零?
「……わ、分かった。……玲くん」
……ああかわいいなこのっ! 顔に出さないようににこにこと微笑む。
「じゃあまた明日ね、美零」
「また明日ね……玲くん」
明日からずっと、玲くんと呼んでくれるだろうか。僕はずっと美零って呼ぼう。
明日は真に自慢してやろう。チョコももらえたしね。
「君」……駒野さんの名前、美零は、ゼロって意味ではありません。
美しさが零れる、という意味の名前です。個人的に彼女のお父さんは厳しそうな気がする。