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第八部

「それで、今は何の事件を調べてるんや?」

 自己紹介が済んだところで、竹中が聞いた。山本は自分で説明するのが面倒だったので、上田に向かって無言で指示を出す。

 上田も気づいたのか、自分ですかと言わんばかりに自分を指さしたので山本は黙って頷く。上田も観念したのか

「上杉刑事部長からの命令で、全国各地で発生している連続ひき逃げ事件を捜査しています。

 捜査の進捗状況ですが、被害者が全員前科をもっていることと、それに関連して保護観察を受けていたということ。あと、犯行に使われていると思われる車が黒の中型車で、車体に『鬼引き』という文字が入っていることです。

 現在、保護観察時に担当していた保護司の方から被害者がどんな人物だったのか、特別誰かに恨まれていたということがないかを聞き取りをしています。」

「ああ、あの事件か。そう言えば、大阪でも最近あったで。」

 竹中が言い、山本が

「最近っていつですか?」

「4・5日前やったかな~・・・」

「被害者は?」

 山本が竹中の言葉を遮り聞いた。竹中はなぜ自分が問い詰められているのか理解できないままだったので、

「なんやねん、そんながっつくことか、この話?」

「俺らが把握している事件は、新山武という男が死亡した事件までなんです。それ以降この関連の事件は発生していないと報告を受けてましたので。」

「ああ、そうか。

 この事件は今までのものと、ちょっと違ってな。狙われたんが記念日暴走しようとしとった暴走族の一団でな。

 暴走しとる前に大型のトラックっていうかタンクローリーみたいなもんが飛び出してきて、ぶつかって、3人死亡、40人近い重傷者が出た事件で、その車は何事もなかったみたいにその場を離れていったらしく、今も見つかってないみたいや。

 当初は暴走族同士の抗争みたいなもんかと思われたけど、周りに暴走族がいなかったことと、そんな大きな事故起こせるほどの胆の据わった奴はいんやろって話になってな。被害に遭った方のやつらの中に荷台部分に大きく鬼が半分に切られてる絵と『鬼引き』って文字が見えたって奴がいて2・3日前に大阪で関連事件として認定されたばっかのやつや。」

竹中が説明すると、藤堂が

「何ですか記念日暴走って?」

「ああ、暴走族の中には、暴走族共通の記念日ってもんがあるし、グループごとにも結団記念日とかがあるんやけど、その日に有名な道路とか国道とかで大規模な集会開くことを言うんや。

 有名なやつやと、大阪の岸和田市を通る国道26号線で11月2日の夜から3日にかけて行われるのとかあるな。」

「イレブンスリーって奴ですか?」

 加藤が聞き、竹中が加藤を指さして、

「そう、それや。よ~知っとるな。

 まあ、府警としても毎年やっとる暴走に対して、国道封鎖して車どころかバイクの侵入をさせへんようにするとか対策とって、色々とやってるけど、バカみたいなやつらは集まって来とったからな。もっと厳しくせなあかんのちゃうかって意見が市民からも上がってきてたみたいやで。」

「胆の据わった奴がいないというのも何ですか?」

三浦が聞くと、竹中は呆れたような感じで、

「まあ、簡単に言うとあれやな。にわかヤンキーとか言われる時代やろ?

 昔の暴走族って言うのはホンモンのヤンキーがやっとたから、やることが危なかったし、喧嘩したりとかもあったから手を焼いてたけど、今どきのやつは、暴走言うても蛇行運転して、警察をおちょくるのが関の山や。

 暴走族もいつでもつるんでるわけやなくて、気分が乗ったら、やろうやって声掛けて集まって、いかにも暴走族って感じに改造したバイクで人に迷惑かける程度の行為するだけや。

 結束も何もないし、昔の方は上下関係とかもしっかりしてたから、年上の人の言うことをしっかり聞く人間とか、敬語もしっかり使えたけど、今どきのはそんなこともないから、暴走族ぬけた後もいまいち更生しきらん奴がおる。

 暴走の時もそうや、ヘッドの言うこと聞いて、ある程度、統率の取れた動きしとったから、事故なんてのもそうは起こらんかったけど、そのヘッドの影響力が薄まってきた今どきのは、好き放題するから関係ない人巻き込んだ事故とかも増えてる。」

 竹中が言うと山本が、

「その辺はまた後でわからない奴にだけ話しといてください。

 それで、なんでその暴走族は狙われたんですか?」

「相変わらずマイペースやな。まあ、ええわ。

 人身事故を起こしてるのが何人か混ざっとる。そういう意味では前科もちや。ただ、今回の事件は前科のない者も巻き込まれとるし、最近じゃあ、ニュースであの『鬼引き』の話までされるようになっとるから、模倣犯ちゃうかという意見で認定が遅れたんや。手段も今までのものと全然違ったからな。」

 竹中の言うことも一理ある。正義の味方気取りの馬鹿な奴らがマネしたくなるような事件であり、当然そういうやつらが出始めているという報告も上がっては来ていた。山本がそう考えていると、今川が

「その事件は、なぜ今回の事件と関連していると判断されたんですか?模倣犯じゃないと決めた理由みたいなものは?」

「簡単な話や。

 犯人に繋がる情報が全くなかったからや。」

「それだけで判断したんですか?」

 藤堂が聞くと竹中はため息をついてから、

「あのな、藤堂君。模倣犯言うのは、簡単に言ったらただまねしてるだけやから、犯行を隠す方法も逃亡手段も何もわからんまま、ただ似たようなことしてるだけ。

要するに劣化版をやってるだけなんや。そうなると、目撃情報とか、今回なら車の修理をしたとか、そういう情報が入ってくるもんや。

それが全くないってことは、ホンモンが手段を少し変えただけで、模倣犯やないと判断するのには十分なことなんやで。」

「なるほど・・・・・、勉強になります。」

 藤堂が素直に言うと、竹中は笑顔になり

「そうか、そうか。山本は不器用やからこんなこと教えてそうにないからな。なんでも聞きや。」

「そのへんは任せますよ、竹中さん。

 それで、今後の捜査なんですが、どうされますか?」

 山本が竹中に聞くと、竹中はにやにやしながら、

「それは課長代理に聞いてや。」

 全員がドアの方を見ると、30代前半か半ばくらいの女性が仁王立ちで立っており、竹中に向かって

「竹中さん、私は飾りです。捜査の指揮に関してはあなたと山本警部にお任せします。

すみません、ご挨拶が遅れました、本日より上杉刑事部長の代わりにこの課の課長をさせて頂く黒田菊子といいます。

 私の役割は、あなた方が捜査しやすいように各方面に連絡を取ることやあなた方がした無謀な捜査の責任を取ることだけです。

どんな捜査をしようが私はあなた方を責めませんが、私に捜査を手伝わせるのだけはしないでください。よろしくお願いします。」

 黒田警視は凛とした声で言い放つ。普通、上司なら無謀な捜査をするなというのが当たり前じゃないかと全員が思ったが口に出さなかった。そう一人を除いて、

「無謀な捜査を止めるのが上司の仕事だろ。じゃあ、警視は何のためにここに来たんですか?」

 山本はストレートに聞いた。他の全員が聞くならもっとオブラートに包んで欲しいと思った。

黒田警視はまったく気にしないと言った感じで

「私の仕事は、広報と目くらましです。新設された課の課長が女性で、しかも警視という階級なら注目は私に集まります。

 そして、あなた方が捜査している時に私はゆっくりとお茶を飲みくつろげる。捜査が終わって始末をつけないといけない時だけ私は働きます。これが私の仕事です。」

「警視はそれでいいんですか?」

 山本が他にも何かあると思い聞くと、黒田は微笑みを浮かべ、

「いいですよ。福岡でも同じような仕事をしてましたし、何より、武田総監が頭を下げて頼むぐらいの仕事ですから。」

「総監はなぜそこまで?」

「それこそ、あなたが自由に捜査をしても何も言わない、そんな理想の上司が私だったからですよ。」

 黒田の笑顔はどこか不気味に思えたし、絶対に背後に何かあると感じさせるのに十分な笑顔だった。そして黒田が、

「それと、私のことは『黒田』と呼び捨てでかまいません。若い方々は『さん』を付けてください。私は階級で呼ばれるのが好きではないので。」

「わかりました。」

 山本が言うと、他の全員が黙って頷いた。

黒田は満足したように笑い

「じゃあ、私は課長室にいますので、何かあったらノックしてから入ってきてくださいね。」

 そう言って、まだ片付けの終わっていない課長室へと入っていった。

「課長室って、使うんだな。」

 上田が言い、三浦が

「片付けとくべきでしたね。」

 今川が

「今からでも・・・」

「もういいんちゃうか?入った瞬間に何も声を出さんあたり、部屋の汚さに文句はないんやろ?」

「確認しますか?」

 大谷が言い、藤堂の袖をつかむ、

「なんで俺の袖つかむんだよ?」

 藤堂が言うと大谷は笑いながら

「藤堂が行く方が、なんか怒られそうにないかなと思って。」

「いや、ふざけんなよ。お前が行けばいいだろ。」

「おい、いい加減にしろ。竹中さんと大谷はここの片付けとあの人の様子を見といてください。他は全員、今まで通りの作業に戻れ、以上だ。」

 そう言って、山本が出ていく。

 この時、困ったのが今川と加藤で、どっちがついて行くべきかで迷ったため、じゃんけんで勝った今川が山本を追って出ていった。


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