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第七部

 翌日、武田総監からの指示で、午前9時に集合して、追加人員を待ちながら、三浦が言った。

「どんな人が来ますかね?」

 上田があきれた感じで、

「人柄より、人数の心配だよな。一人二人じゃあ、そんなに変わらない気がする。」

山本が資料に目を通しながら、

「武さん達の選んだ人間だから、まともな奴が来ることはないと俺は思う。」

「いや、そこは・・・・、そうかもしれませんね。」

 上田も否定できない部分があると思い、否定することをやめた。

「ま、まあ、人が増えればできることが増えますし、ポジティブな方に考えましょうよ。」

 今川が言うが、山本には武田の昨日の笑い方から、何か裏があるとしか思えずにいた。

 そんなことを話している間にも、こちらに近づいてくる話し声が聞こえてきた。ガサツな関西弁に山本が反応し、その関西弁の男に対して話している男の声に藤堂が違和感を感じる。

「バタン」と扉が開く音がして、40代くらいの男がズボンの後ろポケットに手を入れ、肩を振りながら入ってくる。男は山本を見て

「おう山本、久しぶりやな。元気やったか?」

 山本の明らかに嫌そうな顔を見て、周りにいた全員が『警部はこの人が嫌いだ』と認識した。

「お久しぶりです竹中さん。大阪からわざわざ激励に来てくださったんですか?」

 山本は引きつった笑顔で言う。明らかな嫌味だなと思い、言われた相手を見る。いたずらっぽく笑い男は

「ちゃうやろ。今日からこの課の追加人員で招集されたんや。

ついでに自己紹介やな、大阪府警から来た竹中正吾や。

 階級は警部やから、山本と一緒やな。」

「いえ、結構です。」

 山本が真顔で言い、竹中が

「結構ってなんやねん。もう決まったんやから諦めろや。」

 嫌がる山本と、それを見て楽しそうな竹中。その間に割って入った若い男が

「まあ、まあ、これから一緒にやっていくんですから、竹中さんも山本さんも仲良くやりましょうよ。」

 この男にその場に居た全員に見覚えがあった。一番最初に突っ込んだのは藤堂だった。

「何でお前がここにいるんだよ?」

「いや、だから追加人員でだけど?」

「そんなの聞いてないぞ大谷。」

「当たり前だろ。言ってないんだから。」

 他の課員から見ると、山本と竹中の様子が、藤堂と大谷に代わっただけだった。嫌がる藤堂、それを見て楽しむ大谷の様相だった。

「この前会った時には、既にここへの配属がわかってただろ?」

 山本が聞くと、藤堂が

「そうなのか?」

 大谷は楽しそうに、

「何でそう思われるんですか?」

「上田が飯に誘った時、まだ早いとか言ってただろうが。」

「そうでしたね。あの時はまだ正式な辞令じゃなかったので、言わない方がいいかなと思ったんです。」

 大谷が楽しそうなのが余計に藤堂の怒りを買ったのか、

「じゃあ、正式な辞令が出た後で俺に言ったらいいだろ?」

「それじゃあ、サプライズにならないだろ?俺が来て驚いただろ藤堂?」

「いや、それはそうだけど、・・・・って違う。そんなサプライズいらないんだよ。」

「まあ、この話はここまでにしてやな。で、警視は?」

 竹中が、大谷に聞く

「ああ、総監に挨拶に行かれると言ってました。

 自分は飾りだから別に行かなくてもいいでしょと言いながら。」

「あの人も自由やな~。」

 山本が

「何なんです?その警視って?」

「ああ、この課の課長代理らしいで。上杉刑事部長が兼務じゃあ、実質課長がいいひんことになるから、課長代理を置いて、他の部署がなんか言って来た時に対応できる人材を置くことにしたらしいで。」

「そうなんですか?で、その人はあれですか?警察庁のキャリアとかですか?」

 上田が聞くと、大谷が

「いえ、福岡県警の組織犯罪対策課初の女課長だった人で、胆の据わり方がそのへんの男と段違いらしいですよ。」

「しかもベッピンさんやで。」

 明らかに竹中の情報はいらないと全員が思ったが、

「で、その女課長代理が総監のところに行った理由は?」

「元々、部下だったらしいので嫌味の一つでも言いに行かれたのではないかと思います。」

 大谷が言うと竹中が

「まあ、九州の官兵衛って呼ばれるくらい切れ者やからな。任せとけばええんちゃうか。

それに、これで関西方面に顔の利く俺と、九州方面に顔の利く警視と関東に顔の利くお前らと、今日は色々都合が悪くて来てへんけど北海道の方からも一人来るらしいから、全国に情報を開示させるためのメンツがそろえられたみたいやで。」

 そう言うことかと山本が納得し、確かに全国から情報を得るためには、それなりの人脈が必要になる。その点で言うと竹中さんがこの課に来たのも納得だ。関西だけじゃなく中部まで顔が利くほど優秀な刑事だ。性格に問題さえなければもっと出世しているだろうなと思っていると、三浦が

「警視はなんて言うお名前なんですか?」

「ああ、黒田や。黒田なんやった?」

 聞かれた大谷は考え込んでから、

「菊子じゃなかったですか?」

 今まで黙っていた今川が

「この課ってもしかして・・・」

と呟き、三浦が

「どうかしたか?」

 聞かれた今川は、三浦を見て、考え直し

「いえ、何でないです。」

今川は、自分の考えが正しいなら、三浦の存在がおかしい。たまたまかと思い、自分の考えたことを忘れることにした。

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