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第三十一部

「塗装の秘密がただシール貼ってただけだったとお考えですか?」

 車に乗り込むと上田が聞いた。

「まあな、加藤が調べてきた車の荷台以外に粘着性の物質がついてたって話から考えたんだが、専門家はできるって言ってたからな。

 外れてはない気がする。あとはそのシールを作ったのが誰か、入手はどうやったのかがわかればいいだけだ。」

 山本がそう言って後部座席にもたれかかった。大谷が

「でも、その方法だと塗装の痕跡は残らないですし、短時間で色を変えることはできるわけですね。」

「ああ、でも、これを遠野と藤田ができるかだな。剝がすのはできても、貼るのが大変みたいだったから時間的な話では、逃走時は説明がついても、犯行前がきついだろ。貼った状態で現場まで行くわけにはいかないんだからな。」

「そうですか?あの『鬼引き』の文字さえなければ、ただの形のちょっと変わった中型車だなくらいに思われるんじゃないですか?」

 上田が言うと、山本が

「いや、どうだろうな。俺は仮定で話してるから車に詳しいわけじゃないし、そのへんはよくわからないな。」

 山本が言うと上田が

「例えば、今すれ違った車の車種とかわかりますか?」

「いや。」

「じゃあ、目の前は知ってる車の前がどんなデザインかわかりますか?」

「いや。」

「まあ、そう言うことですよ。人は知ってるようで知らないことばかりなんじゃないですか。」

「何が言いたいんだよ?」

「車に詳しい人はパッと見ただけで車種もその車がどんなデザインかもわかりますけど、詳しくない人は少し見た目が違っても、ああいう車なんだなと思って気にも留めないんじゃないかなって話ですよ。」

「なるほど・・・・」

 山本が考えていると大谷が

「高級車とかでも自分のやりたいようにカスタムする人とかいますもんね。」

「そうだな。暴走族のバイクとかでもカスタムしてますけど、車とかもド派手にしてるやつもいますからね。」

 上田が言い、山本が

「じゃあ、この線でもう少し調べてみるか。」

「そうですね。この仮定があっていれば、だいぶ捜査が進んだと言える気がしてきました。」

上田が言い、大谷が

「次はどうしますか?」

「行きたくないけど、小森のとこに行くしかなさそうだな。」

「そんな嫌な人なんですか?」

「ぜひ会いたいとは絶対に思わない人だよ。」

 上田と大谷は『警部がここまで言うならよっぽどだな』と思った。


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