第二十四部
「山本さんが頭の上がらない美人課長を見に来たんですよ。」
笑顔の坂本、怒った山本、怯えた上田、ニヤニヤと笑いながら山本を見る竹中、その様子を見て加藤は『ああ、こういうことだったのか』と納得した。
「何のことかわからないな。」
山本が不機嫌そうに返し、上田をにらみつける。坂本は笑顔を崩さずに、
「そうですか?まあ、本題はそこじゃないのでいいんですけどね。」
「じゃあ、何をしに来たんだ?」
山本は相変わらず不機嫌な感じで聞く。
「黒木さんに連絡が取れまして、自分は忙しいから山本さんに直接電話できないけど、OB会に参加できることを伝えて欲しいと言ってました。」
「そうか、ありがとう。じゃあもういいな帰れ。」
「ひどくないですか?せめて、課長さんを一目見てからでも・・・」
「私は課長ではなく、課長代理です。坂本警部補。」
山本は面倒な人が出てきたと思って、黒田を見る。
「上田さんの言っておられた通り、美人ですね。」
黒田は上田を一睨みしてから、
「社交辞令をうのみにするほど、単純ではありませんので。」
「いえ、本心からですよ。」
笑顔の坂本は何かを探るように黒田を見ているように山本には見えた。黒田が
「敵情視察は順調に進んでいるんですか?」
坂本の笑顔が少し曇り、
「僕は別にあなた方を敵に回した覚えはないですよ?」
「そうでしたね。山本警部はあなた方の救世主ですからね。」
黒田の言葉に明らかに驚いた坂本は直ぐに笑顔に戻り、
「何のことかわからないですね。何か勘違いをされているんじゃないですか?」
「私を見に来られたんでしたね。どうですかご感想は?」
「美人だなと思いましたよ。」
「それだけですか?」
「ええ、それ以外に何かありますか?」
「面倒な人間が山本さんの上司になったなと思ってもらえたらよかったのですが。」
「山本さんの上司が誰でも僕には関係ありませんよ。」
坂本が笑顔で言い、黒田もニコニコとしている。しかし、その場にいた全員がかなりの緊張感を感じていた。
「そうですか、じゃあ、仲のよろしい黒木議員にお伝えください。」
「何をですか?」
「あまり仲良くしすぎると嫉妬して、何をするかわかりませんよと。」
「そういう関係だったんですか?」
黒田はニコリと笑って、
「ご想像にお任せします。」
「あ、そ、そうなんですか。どうぞ、お幸せに。
じゃあ、僕はこれで失礼しますね。」
坂本はそそくさと部屋を出ようと歩いて行く、その後ろ姿に向かって黒田が、
「ちゃんと報告しといてくださいね、坂本警部補。」
坂本は一瞬振り返って、何も言わずに頭を下げて出ていった。
「相変わらず、策士やな黒田ちゃんは。」
竹中が楽しそうに言い、黒田が笑顔で
「何のことですか?」
「まあ、色々あるけど、一番はあれやろ~~」
「だから、何ですか?」
「山本に間接的に逆プロポーズしたとこやろ。私の旦那に手を出すな的なやつやろ今の?」
黒田は真っ赤になり
「ち、違いますよ。そんなんじゃないですからね、皆さん。」
そう言って、黒田は課長室に入っていった。
「竹中さんはどこまで知ってるんですか?」
山本が聞くと、竹中は嬉しそうに
「どこまでって、やっぱりそういう関係やったんか?かまかけただけやったんやけどな~。」
「そっちじゃありません。」
山本の真剣な顔を見て、竹中は一瞬真顔になったが笑顔で
「何のことかわからんな。黒木が何考えてようと、坂本が何のためにここに来たんかも、黒田ちゃんが何でここの課長代理を引き受けたのかも、俺の知ることやないからな。」
竹中はそう言って、片手をひらひらと振りながら部屋を出ていった。
「大谷、お前は?」
「僕は、警部と黒田さんが同居してることくらいですよ?」
「違う、ここの追加人員で来た時に、他にも情報を入れられてるんじゃないか?」
「そういうことですか。残念ながら僕には何もないです。竹中さんや黒田さん、北海道から来られる伊達さんは、他にも何か聞いてるかもしれませんが、僕には何もありません。」
「どういうことだ?」
山本が聞くと大谷は少し間をおいてから
「他の3人は武田総監自身が選んで呼び寄せた人材なんです。僕は上杉刑事部長の部下にあたるので、上杉さんが課長の捜査課なので配属されたんです。武田総監から他の3人が他にも特別な情報を得ている可能性は十分あると思います。」
「そう言えば、北海道の人全く来ないけど、え~と伊達さんだっけ?
いつ来るんだよ?」
上田が聞くと、大谷が困ったように、
「さあ、かなり気ままな人みたいですし、事件が解決したら行くとだけ伝えられてるので、いつになることか・・・・」
「とりあえず、今の事件を解決するのが先だな。」
山本はそう言ったものの、竹中と黒田について気になって仕方なかった。




