第十二部
「あの人、本当にお茶飲んでくつろいでましたよ。」
大谷が黒田について山本に報告した。山本が今川と戻ると大谷がさっと寄ってきて、小声で言った。部屋の片づけはほぼ終わりに近い状態であったため、山本が
「竹中さん、大人しく片付けしたのか?」
「えっ?片づけは僕一人でやりましたけど?」
「本当に?凄いね大谷君。僕らがやっても全然片付かなかったのに。」
今川が驚いていうと、大谷は笑いながら
「片付けの仕事をやらされることが今までの部署でも多かったので慣れたんですかね。」
「それで竹中さんは?」
山本が聞くと、大谷は言いにくそうに
「上田さんと加藤さんの調べものについて行きました。最初は手伝ってくれてたんですけど、上田さん達のしてることの方が面白そうだと言って・・・」
「そうか、まあ、あの人に片づけを期待してなかったからな。
で、黒田さんはお茶飲んでたのか?」
「はい、物音ひとつしないので様子を見るのにコーヒー持っていったら、課長室がきれいに片づけられてて、その中で紅茶入れて、雑誌読んでました。」
「恐怖ですね。物音させずに片づけをしたってことでしょ?」
「いや、僕も集中してたんで聞き逃したのかもしれないですけど、あんなに余裕をもってくつろがれてるとこを見ると、僕よりも早く片付けていたということなので。少し、自信が無くなりましたね。」
「能力はかなり高いのかもしれないな。」
山本が言ったところで、課長室のドアが開き、
「山本警部、お帰りなさい。
少しお話があるんですが、よろしいですか?」
「ええ、どうぞ。」
「二人でお話ししたいのですが。」
山本は今川と大谷を順に見てから、
「わかりました。」
そう言って、課長室に向かった。