生意気生徒会長 8
「んん――――!」
ちょ、ちょっと待って!
口の中に何かが流れ込んでくる。
目を開けると、至近距離にある会長の顔。
「んー、んん!・・・んぐ、ん」
「・・・・・・ん、ふ・・・はぁ」
僕の喉が鳴ったのを確認して、
会長の口が離れる。
「か、かかか会長!」
「だって、せっかく桜ちゃんに薬もらってきてもらったのに、飲んでもらうの忘れてたから」
「飲ませるにしても方法があるでしょ!」
「いいじゃん。口移しなら臣ちゃん寝たままでいいし」
「で、でも・・・」
僕のことを気遣ってくれた。
それはありがたいんだけど、だけど・・・
「臣ちゃん?」
「・・・・・・もう、いいです」
過ぎてしまったことは仕方がない。
僕は抗議するのを諦めた。
だって、僕にとってはファーストキスだったとしても、
会長にとっては、ただの応急処置だろうから。
「・・・もしかして、臣ちゃん」
「・・・・・・」
「そっか、あはは、そうなんだー」
「・・・勝手に納得しないでください。何がそうなんですか」
「べっつにー。ただ・・・」
「うわっ」
頬に会長の手が触れる。
大きくて、優しい手が。
「臣ちゃんを見る目、ちょっと変わっちゃった」
「ほらよ、制服乾いたぞ」
「ありがとうございます」
外が完全に暗くなった頃、
武山さんと飛島さんが制服を持ってきてくれた。
「花沢先生が車で家まで送ってくださるそうです。迷惑をかけたお詫びにって」
「そうなんだ。やったね、臣ちゃん」
「・・・・・・はい」
玄関を見ると、花沢先生が手を振っていた。
僕も手を振り返す。
「にしても、お前はバカなのか?あの雨の中、折り畳み傘1本で外に出るなんて・・・」
「まあまあまあ、いいじゃない、タケ。臣ちゃんも反省してるよ」
「そりゃするだろうよ!熱出してんだから。隼人だって心配してたろ?ずーっと窓の外見てたくせに」
「・・・え?」
会長が、心配してた?
「臣、あまり心配かけんじゃねーぞ」
「・・・はい」
会長が、僕のことを・・・
なんでだろう。あの時、ひどいこと言ったから?
そして・・・
『臣ちゃんを見る目、ちょっと変わっちゃった』
あの言葉、どういう意味なんだろう。
「臣ちゃん!早く乗るよ」
「あ、はい」
会長に呼ばれて、慌てて歩き出す。
またひとつ、
解けない謎が増えてしまった。