生意気生徒会長 6
校内へ入ると、飛島さんが待機していた。
「も、森本さん!」
「桜ちゃん、部室まで走るから、しっかりついてきてね!」
「は、はい!」
その言葉通り、廊下を走る会長。
その後ろに続く飛島さん。
手にはモップを持っている。
あ・・・そうか。
通った後をモップがけしてくれてるんだ。
僕の身体から水が滴ってるから。
部室に着くと、ようやく会長は俺をおろした。
そして僕の持っていたブレザーを奪って、中からビニール袋を取り出す。
「桜ちゃん!パス」
「は、はいっ」
飛島さんに向かって、袋ごと放り投げる。
そして会長は僕の服のボタンを外し始めた。
「会議が終わったらそれ、奈津美ちゃんに渡して」
「わ、わかりました」
「あと、保険の先生から痛み止めの薬と風邪薬・・・それとタオル、もらってきてくれる?」
「痛み止めと風邪薬とタオル・・・わかりました!」
「ごめんだけど、急いでお願いね」
飛島さんは急いで部屋を出て行った。
入れ違いに武山さんが入ってくる。
「大丈夫か?ジャージ持ってきたぞ」
「ありがと、タケ。あと悪いんだけど俺のカバンに財布入ってるから、近くのコンビニでパンツと靴下、買ってきて」
「あいよ」
武山さんが会長のカバンを漁って、
見つけた財布を持って部屋を出て行く。
その頃にはもう、上半身は脱がされていた。
会長、なんでこんなに手際がいいんだ?
指示も的確だし・・・
「しょうがない。臣ちゃん、気持ち悪いかもだけど、ごめんね」
「・・・え?」
会長は上半身を脱ぐと、ぎゅっと僕を抱きしめた。
素肌があったかくて、気持ちいい。
「か、会長」
「まだ身体冷たいしびしょ濡れだから、桜ちゃんがタオル持ってきてくれたらそれで拭いて、ジャージ着よ」
「いや、でも会長も濡れて・・・」
「いいよ。それより、これ以上臣ちゃんの体温下がるほうが問題でしょ」
そう言うと会長は、さらに僕をきつく抱きしめた。
「俺の胸は安心感抜群なんだから。ね」
「・・・だからさっきも・・・女の子を抱いてたんですか?」
「へ?・・・・・・あぁ、見てたんだ。そうそう、太田さんがすっかり自信なくしてたからね」
「自信?」
「弁論大会出たくないですーって。大会明日なのに、そんなこと言われても困っちゃうじゃん」
「そう、だったんですか・・・」
彼女じゃ、なかったんだ。
僕の勘違いだったんだ。
「ぎゅーってしたら、少しは冷静になってくれたからよかったけど」
「・・・・・・」
「ん、どうした?臣ちゃん。熱、上がってきた?」
「・・・え?」
「いや急に黙るから。臣ちゃんの身体、表面は冷たいけど熱こもってるっぽいよ。熱でるかも」
・・・なんで?
なんでこの人、そんなことがわかるんだ。
いつも飄々としてるくせに、こういうときには頼れるなんて・・・
反則だ。