生意気生徒会長 5
・・・身体が、冷たい。
店は片道10分なのに、
そのわずかな時間でずぶ濡れになってしまった。
雨も激しさを増して、風も出てきて、
持っていた折り畳み傘も壊れてしまった。
でも、なんとか買い物は済ませた。
ビニール袋に入っているけど、濡れるのが怖いから、
それを着ていたブレザーで包む。
これで商品は安全だ。
僕はいくら濡れても構わない。
商品を無事に花沢先生に渡すんだ。
僕に頼んだことを、後悔されないように。
僕は水を含んで重くなった体を引きずるように、
前へ前へと進む。
道路はもう洪水状態で、靴も下着も水浸しだった。
ぐちゃぐちゃで気持ちが悪い。
そして、さっきから少し違和感があった。
やけに目の前が歪む。
雨に打たれて体が冷えて・・・
ひょっとしたら風邪を引いたのかもしれない。
だからといって、学校に戻らないことにはどうしようもない。
風邪なのか何なのか、
考えるのはそれからだ。
「・・・っ」
転びそうになって、慌てて足に力を入れる。
だめだ。
商品だけは守らなきゃ。
そして早く、先生のところへ戻らなきゃ。
ほら、もう校門が見えてきた。
早く、動け、足。
早く・・・
「臣ちゃん!」
聞きなれた声。
前から誰かが走ってきた。
傘も差さずに。
「・・・か、かい・・・ちょう?」
「もう・・・ん?」
合羽を着た会長は、何かに気づいたようで、
無言で僕の腕を掴む。
そして、ひょいっと担ぎ上げた。
「か、会長!」
「品物、しっかり握ってなよ」
走って校内へ向かう会長。
重いはずの僕の身体を担いで、こんなに早く走れるなんて・・・
周りの生徒が見てるし、抵抗したかったんだけど、
動けるほどの力はもう、残ってなかった。