生意気生徒会長 4
「会長はいませんよ」
「そっか・・・ねぇ、森本くん、ちょっと買い物に行ってほしいんだけど」
「買い物?」
「プリンターのインクがなくなってしまったのよ。大至急印刷したいものがあるんだけど、これから会議で・・・」
珍しく、花沢先生が焦っている。
きっと印刷物も会議も、どちらもすごく大事なんだ。
この雨の中、行くのは嫌だ。
でも今先生、僕に頼む前に・・・
「・・・それを会長に頼もうとしたんですか?」
「うん、でもいないなら・・・」
「僕、行きます」
「ホント?ありがとう」
そうだ。
買い物くらい僕だってできる。
会長よりも素早く行って、素早く帰ってこられる。
「じゃあ、これがメーカーと型番と・・・」
「あ、奈津美ちゃん!やっほー」
花沢先生からメモを受け取ったとき、
会長と武山さんが部屋に入ってきた。
「あら、伊波くんが来たなら伊波くんでも・・・」
「僕が行きます」
慌てて折り畳み傘を手に取る。
「え?臣ちゃんどっか行くの?」
「ちょっと買い物を頼んだの」
「買い物って、この豪雨の中?隼人が行った方がいいんじゃないか?」
「いえ、僕が行きます!」
急いで部屋を出ようとする。
その僕の腕を、会長が掴んだ。
「臣ちゃんなんか弱そうじゃん。いいよいいよ、俺が行くって」
「弱そ・・・っ!結構です。僕が行きます」
振り払おうとしたけど、
会長の手の力が強くなった。
「・・・危ないから、俺が行くって」
聞いたことのないくらい低い、会長の声。
いつもの軟派な会長じゃなかった。
いや、だとしても・・・
「離してください」
「臣ちゃん」
「あんたは女とチャラチャラしてればいいだろ!」
全力で手を振り払う。
そして振り返らずに、走って外へ出た。
花沢先生だって飛島さんだって、
会長に甘いだけなんだ。
きっと僕の方が会長にふさわしい。
学校のこと生徒会のことも、ちゃんと考えてる。
「・・・よし」
折りたたみ傘を開いて、
僕は歩き出した。