生意気生徒会長 2
「あ、いた。伊波くん」
突然ドアが開いて、花沢先生が入ってきた。
20代後半の花沢先生は、男子生徒の憧れの的だった。
もちろん、この人も・・・
「あ、奈津美ちゃーん!俺を探してくれてたんだって?」
「知ってるなら早く職員室に来なさい」
「奈津美ちゃんが来てくれるのを待ってたんだよ!」
「待たなくていいから。それより、ちょっと職員室に来てくれる?」
「うん、わかった!」
花沢先生の後を喜んで着いていく会長。
それはまるで大型犬のようだ。
まったく・・・
「あ、そうだ。タケ」
「ん?」
「サッカー部の話、後で聞くから」
「おう」
武山さんにそれだけ言うと、会長は花沢先生と一緒に行ってしまった。
「武山さん、サッカー部の話って何ですか?」
「ああ、サッカー部の部員から苦情が出てるんだって。部費が高すぎるって」
「いくらですか?」
「1ヶ月1000円」
「1000円!?」
「で、隼人がサッカー部の状況をチェックしてほしいって言ってたんだよ」
「・・・だから、助っ人に?」
「それだけじゃねぇけどな。で、場合によっては報告書を出してもらうことになるだろ」
「報告書?」
「集めた部費を何に使ってんだ、っていう報告」
「なるほど」
会長が、そんな指示をしていたんだ。
あの会長が・・・
『おっつー桜ちゃん』
『奈津美ちゃーん!』
・・・あの会長が?
「詳しくわかったら、臣にも話すよ」
「お願いします」
いや違う。
きっと、武山さんや飛島さんのフォローがあって、
ギリギリ会長として成り立っているんだ。
そうだ、そうに違いない。
外、すごい雨だな・・・
生徒会室に向かう途中の窓を見ると、
大きな雨粒が叩きつけられていた。
折りたたみ傘を持っていてよかった。
・・・あれ?
窓の外を、目を凝らして見る。
会長だ。
どうやら女子生徒と話をしているようだ。
傘を差しながら話すくらいなら、中で話せばいいのに。
しばらく二人を見ていて、
あることに気がついた。
傘が1本しかない。
二人でひとつの傘に入っているんだ。
だからあんなに距離が近いん――
「あ・・・・・・」
いきなり会長が・・・
その女子生徒を抱きしめた。