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三題噺

作者: 呉葉

三題噺ですので色々と上手く繋げられてないかもしれません

【夜空】【五秒後の主人公】【テレビ】だったと思います

彼女はじっと、真っ暗な部屋のなかでテレビを見ていた、それは何度も何度も小さな頃から見ている映画で[白い竜と少年]というファンタジー物の子供向け映画で、今少年は最後に黒い竜と戦っている、彼女はふと目を細めた、そんな事を知りもせずテレビの中の少年は剣を黒い竜に降り下ろす

「竜を殺すと少年は死ぬのに、黒い竜を殺さなければ死なないのに」

彼女はポツリとそう呟いた、無機質な目が画面を映している、少年は黒い竜の心臓を突いた

「ほら、ほら、始まってしまうよ、君がいなくなってしまうよ」

彼女は少し悲しそうに、そして嬉しそうにポツリポツリと繰り返し呟いていた、ふと、閉め忘れていた窓から一陣の風が吹き、彼女の漆黒の髪を揺らした、長い髪が目に入りそうになり反射的に彼女は目を瞑った、そして、彼女が目を開いた時に映った光景は満点の星を映す夜空と、彼女を見ている主人公の少年だった

「ここはどこ?君は?ヴァイスはどこにいるの?」

少年は困ったような、相棒の竜がいなくて焦ったような表情で彼女に質問をした、早口になっているが少年のよく通る声は彼女に簡単に質問の内容を把握させていた、彼女は血塗れの剣を持つ彼をじっと観察するかのように見つめた

「ねぇってば」

少年は彼女の手を引っ張った、彼女は相も変わらず少年を見つめたまま

「君はもうすぐ死ぬ、詳細に言えば元の世界に行って五秒後に」

全くもって彼女の返答は少年の質問の内容と噛み合っていなかった、少年は可哀想な人を見る目で彼女を見た、彼女も可哀想な人を見る目で少年を見ていた、つまりはお互いに相手は可哀想な人として認識しているのだ

「なにそれ?この後僕とヴァイスは世界を旅する予定なんだよ?ずっと遠くの北の地へ白い狼を探しにいくんだ」

少年は彼女にはっきりと言った、それが彼女は堪らなく面白かった、そして、虚しかった

「君が突き立てた剣を引き抜く、これはもう力入れてるから変えられない、すると竜の中から黒い棘が飛び出して君はそれに刺されて死ぬ、君の血でそれは浄化されるから国は守れるよ、おめでとう、まあ、でもそれは良いこととは限らないけどね」

彼女は少年を見ながら静かに言った、少年は苛立った目で彼女を見ていた

「そんなわけ無い」

「あるよ、それがお話だもの、君が死んだあと、ヴァイスは後を追うように死んで、救った国は巨大な帝国になり、周辺に侵略を初め、圧政をして、弱いものから死ぬまで搾取するんだよ、それは変わらない」

少年は、少しだけ心を落ち着かせ、彼女をまっすぐに見つめた

「それは本当?」

「言ってるでしょう、本当の事よ」

少年は五分ほど固まっていた、そして、固まったあと彼女を見て不敵に笑った

「絶対に君になんか負けない、絶対勝つから覚えててね」

少年はそう言うと彼女の手を取った、すると、光が溢れて彼女の視界を覆い尽くした、そして、光が収まると彼女は自分の部屋でテレビを見ながら座っていた、テレビには少年が死んでいく様子が写されている

「ほら、運命は変えられないよ」

しかし、いつもと違い、少年は笑いながら死んでいた、彼女は少しだけ、それが気にかかっていた


少ししてとあるニュースが目に入った、執筆活動を中止していた作家がまた本を出したというニュースだ、それは彼女が前見ていた映画の原作小説だったのだ、何故か繋がりを感じて彼女はその本を買いに行った、その内容は少年の生まれ変わりが国を正し、北の地で白い狼を見つけ、氷の都の姫君と結婚するという話だった

「なんだ、私の負けなのか、でも、生き返ってもいないから引き分けと思っておくわ」

そう呟きながらあとがきを読むと、彼女は驚いた

<私は夢の中で息子からとあるメッセージを伝えるように言われた“不幸から幸せになる方が大きな幸せを感じられるから僕の勝ち”と、誰に向けたのか、誰と勝負したのかは分からないが、夢の息子はとても誇らしげだった>

彼女は少し固まると、笑いながら溜め息をついた

「それってチートじゃない」

彼女はそう言ったあと、便箋を取り出した、宛先は本に書いてある住所を写し、少しだけ書いて封筒に入れた、その便箋には

『もっと幸せな結末になる方法を編み出すから首を洗って待ってなさい』

彼女は封筒に切手を貼って部屋を、家を飛び出した久しぶりに浴びる日の光の下で彼女は不適に笑っていた

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