<17>
王城内にある軍議の間の片隅に、闇に紛れるようにしてアノニマスは佇んでいた。軍議の間には今、十人の人物がいる。そのうちの六人は、王国軍の指揮官であり、いずれも劣らぬ大貴族である。
公爵、侯爵、伯爵までの階級を持つ、大将たちと、元帥の称号を持つ二人の男が、軍議の間の席を温めている。
元帥二人は、王国軍三元帥と過去に呼ばれた人々で、公爵が一人、侯爵が一人だ。公爵の方が大臣を務めているらしいが、興味もないからアノニマスは知らない。ほんの数年前まで三元帥の一人であったジェラルド・モーガン侯爵は、この席で敵として論じられる立場になってしまっている。最も実力と人望のあったモーガンがいないのは皮肉としか言いようがない。
残る四人は、いずれも現王国に最も影響力を与える人物たちだ。
イーディス・シュヴァリエ。現王妃。
ジェイド・グリーン。宰相にして、王妃の愛人。
そしてイーディスの子供たちだ。
三十二歳になるスチュワート王太子と、三十歳のリチャード親王。共にイーディスと現国王の血を引いていながらも、対照的な体型、体格の二人である。
スチュワートは金髪に青い瞳の、すらりとした美青年である。だがその青い瞳は冷徹で、口元は自らの優位を誇るように、微かにつり上げられている。幼い頃から母親に教え込まれてきた人を使う論理を、自らの欲望のために使う人物である。
自信に満ちたと言えば聞こえはいいが、自意識過剰であり、時に人の苦しみを好む残忍な男としてシアーズ市民には知られている。
そしてその隣に座るのはリチャード親王だ。リチャードはスチュワートと比べて背が少々低く、逞しい体をしている。髪も金ではなく薄い茶色であり、その体型、髪型共に、イーディスの父親によく似ている。
スチュワートと比べると、それほど聡明ではなく、どちらかというと愚鈍な印象を受ける。事実、好き勝手なところはあるが、基本的には律儀であり、スチュワートに比べれば多少は部下たちに親しまれているだろう。
敵に御し易と思われるのは、リチャードの方なのだが、剣を使わせれば、リチャードの破壊力はかなりのものだった。
スチュワートを心の底から尊敬し、その手足となることを喜んでいる男であり、王位への野望が全くない。スチュワートが王になって当然であると、子供の頃から思い込まされてきたからだろう。
二人とも未だに独身であり、シアーズでの行状はあまりにひどい。
アノニマスは、自分の主人でもある女性へと目をやった。イーディスの瞳は、苛々と軍議の間の入り口に跪く男へと向けられており、細くて長い指は、こつこつと苛立ちを表すように机を叩いている。怒りがこちらへ向かないように、貴族たちが息を詰めているのが分かる。
やがて男が報告を終えて、低く這いつくばった。
「以上にございます」
額をこすりつけんばかりの男に、イーディスは小さく不機嫌そうに息をつく。
「そのように軽くあしらわれて、口惜しくないのかえ? そなたは仮にも、妾の親書を持っていったのであろう?」
「申し訳ございません!」
益々男は額を床にこすりつける。視線を男に注いでいたイーディスは、やがて詰まらなそうに男から視線をあげた。
「下がれ」
「はっ!」
命じられた男は、慌てて立ち上がり、深々と頭を下げて、慌てて軍議の間から下がっていった。それを見ていたスチュワートが、冷たく微笑んだ。
「処分なさらぬのですか、母上」
「相手はジェラルド・モーガン侯爵です。刃が立たないからといって処分していては、政務部全員を殺さねばならなくなりますよ」
「もっともですね。そうなれば困るのだろうな、ジェイド」
スチュワートの瞳が、鋭く光った。彼が母の愛人であるジェイドをよく思っていないのは、誰もが知っている事実だ。
「はい。スチュワート様。王政が成り立たなくなりますゆえ」
平然とジェイドは言い返した。苛立ったようにスチュワートは長く伸びた自分の金の髪を引っ張っている。苛立った時、こうして自分の髪を引く癖がスチュワートにはある。
スチュワートはジェイドを憎んでいる。ジェイドがイーディスの後ろに立っている事で、いまだスチュワートはこの国の金を自分の物として使えないのを、恨みに思っているのである。
だが母親イーディスがジェイドに惚れ込んでいるのを一番知っているのもスチュワートだった。そしてもしジェイドがいなくなればイーディスが何をしでかすか分からないのもよく知っている。
ジェイド・グリーンは、イーディスの留め金だ。羽目がはずれたなら、イーディスの狂気はみな、溺愛されるスチュワートに押し寄せる。それを分かっているから、スチュワートは力でジェイドをのけられないのである。
アノニマスからすれば笑止千万だ。一晩に千ギルツ以上を使って平気でいて、これ以上何を望むというのか。
「それにしても、コネル・サウスフォードですか。これで元宰相を殺す理由が出来たな、ジェイド」
スチュワートが皮肉な笑みを浮かべてジェイドを見た。ジェイドがコネルの従兄弟であり、義理の兄であるグラント・サウスフォードを牢に閉じ込めているのを皮肉っているのだろう。
「申し訳ありませんが、スチュワート様。グラントの処分は、私が一任されておりますゆえ」
ジェイドは全く表情を崩さず、にこやかに微笑んで答えた。その態度にスチュワートは腹を立てているようだが、ジェイドは一行に気にもしない。
「子爵程度では、王のありがたみなど分からぬか。裏切ったとて、なんの特があろう」
息子と愛人の険悪なやりとりを知ってか、知らずかイーディスはつまらなそうに呟いた。イーディスには特権階級を捨てて、自らの思想に生きる人物の心など、全く分からないのである。
コネル・サウスフォードは、完全に王国軍を裏切った。書状には彼を差し出すようにとの一文も書かれていたらしいのだが、それすらも突っぱねられたらしい。
「まあよい。たった千六百の軍勢、しかもみなバルディア派。惜しくもないわ」
そう言いながらイーディスは頬杖をつく。
「責任を負うべきクレメンスは、親子共々死んでしもうたしな」
つまらなそうに呟いたイーディスに、アノニマスは小さく肩をすくめる。クレメンスの息子は王都にたどり着いてたったの三日で死んだ。誰にもその病が分からず、治療も出来ぬままに死に至ったのだが、アノニマスから見ればそれは毒殺に間違いない。戦場で死なないように毒を投与され、王都に戻って死んだのだ。
それはもともとユリスラ軍の中に敵がいたと言うことだ。改革派を率いて戦場に向かったクレメンスはその事に注意を払わねばならなかったのに、それを怠ったため毒殺されたと見るのが正しい。
つまりクレメンスは、改革派の人々の陰謀で命を落としたのであり、それを運がないとか、情けないと片付ける事は出来ない。
だがイーディスはそれぐらいのことが分からぬらしかった。所詮彼女は深窓の令嬢。自分の分かる範囲のことしか理解できない。
「では母上。パトリシアは俺のものにはならないのか?」
リチャードが体の割に小さな青い眼をしばたかせて尋ねる。
「俺はパトリシアが好きだ。シアーズのモーガン邸で見た時は、本当に可愛かった。モーガン候の目が怖くて、その場で頂くことは出来なかったけどね」
いいながらリチャードはクスクスと笑う。アノニマスは内心唾を吐きたい気分になった。シアーズのモーガン邸に、夏と冬の学校が休みの長い期間パトリシアが滞在していたのは、もう十年以上も前のことだ。
つまりその頃のパトリシアは、まだ十才ほどだったのである。嫌悪感を抱えつつも、アノニマスは表情を崩さずに、ただ影の中に身を潜めた。
どんなに嫌悪感を抱いても、どれだけ忠義心が無くとも、アノニマスの存在意義がここにある以上絶えなくてはならない。
「リチャード。庶民の女を襲うのとは違うのだぞ。あの頃お前が襲いかかっていたならば、ルイーズと父上に、罰せられていた」
小さく息をついて冷たく言い放ったスチュワートにリチャードは一瞬身を縮めて、だが次の瞬間には楽しげに笑った。
「でも今はもうルイーズはいないし、父上の意識もないじゃないか。パトリシアが俺のものになれば、好きに出来る。残念だったな。あの気の強い目のパトリシアを、俺の前で屈服させてやりたかったのに」
つまらなそうにため息をついたリチャードに、イーディスが微笑みかける。
「可愛いリチャード。諦めなくてもいいのよ」
「何故です、母上?」
「グレインは王妃である妾の申し入れを断ったのですよ? これで攻め入ることが出来るでしょう?」
リチャードの目が輝いた。
「なるほど。母上、ではこの俺が反乱軍に攻め込み、グレインを占拠したら、パトリシアはもらい受けてもいいのですね?」
「もちろんです。リチャード。その時には侯爵の位も剥奪しますから、あなたの好きなように小娘を飼っておやり。王族の申し入れを断った罰です」
口元に微笑みを浮かべながら、冷たい目でイーディスはそう言いきった。
「本当ですか、母上?」
「ええ。本当よ」
「それは嬉しい。上質の首輪を用意しなくてはな」
リチャードの言葉に、大将たちが小さく身動きした。イーディスとその息子たちは、貴族の爵位を持たない者を、人間としてみていない。
彼らの中にも娘のいる者はいる。もし彼らがモーガン候のように裏切るようなことがあれば、爵位を剥奪されてしまう。
そうなれば娘がリチャードによって首輪を付けられ、性的な虐待を加えられることが分かっているから、彼らは決して逃げられない。たとえ王国軍最強とうたわれたジェラルド・モーガンと戦う事になってもだ。
それに彼らは自分で自分の姿が見えていない。アノニマスはそう思うとおかしい。アノニマスからみればここに集まった貴族たちはみな、イーディスに似たり寄ったりの特権意識を持っている。支配すべき民衆がないことに、耐えられない人々なのである。
前の戦闘で裏切ったサウスフォード子爵の様に、貴族の称号を捨てても自らの信じる道を生きることなど、考えられない人々なのだ。特権があり、人の上に立ってこその自分であることを、彼らはよく分かっている。
「今回はリチャードに譲ってあげてくれる、スチュー?」
優しい微笑みを浮かべて、イーディスはスチュワートを見た。彼女が愛するのは、スチュワートとリチャード、そして愛人のジェイドだけだ。この三人にだけ、こうして笑みを浮かべてみせる。
「構いませんよ、母上。私はモーガン候の娘になど興味はございません故」
鋭い瞳のまま、口元を緩めたスチュワートに、リチャードが嬉しそうに笑顔を作る。
「ありがとう、兄上」
「ああ。構わない」
「ではこのリチャードに、オフェリル・グレイン反乱軍の討伐を御命じくださるんですね?」
嬉々として尋ねたリチャードに、イーディスはうっとりと笑みを浮かべて頷いた。
「そうよ。リチャード。王族を怒らせたらどうなるのか、思い知らせてやりなさい」
「はい。母上。お任せください」
リチャードが立ち上がって、自信ありげな笑みを浮かべる。それを見て満足げに頷いたイーディスが、一人の指揮官に目をやった。
「ローウェル侯爵、リチャードを助けなさい」
呼ばれた男は、緊張した表情を浮かべつつ立ち上がり、胸に手を当てて深々とイーディスに頭を下げた。
「御意にございます」
「頼みましたよ。妾を裏切ったグレインに、王族にたてつくとはどういうことかを、じっくりと教えて差し上げなさい」
「はっ!」
「これで本日の軍議を終了とする」
イーディスの後ろに控えていたジェイドの言葉に、他の貴族たちが明らかにホッとしたように席を立ち、イーディスとスチュワートに深々と頭を下げて退室していく。
リチャードは張り切って、ローウェル侯爵を連れて出て行った。
「母上、私もこれで」
スチュワートもその美貌に笑みを浮かべて立ち上がった。自らが溺愛するスチュワートに、イーディスは柔らかく微笑む。
「ええスチュー。ありがとう」
「失礼いたします」
退席したスチュワートを最後に、場が静まった。アノニマスは、静かに柱の陰から姿を現した。そして止まることなくイーディスの元に歩み寄り、静かに跪く。
「聞いていた、アノニマス」
「はっ……」
「ではリチャードの軍勢に紛れて、グレインへお行きなさい。そして目障りな若造を殺しておしまい」
「……若造というと……エドワードとリッツの二人ですな?」
「当然です。心を苦しめてやりましたが、まだそれだけで妾を欺した罪が濯がれるわけではありません。妾を謀った罪、その命を持って購わせます」
「ですが、リッツ・アルスターは……」
「……どうかしたの?」
イーディスが眉をしかめた。アノニマスは口を噤む。イーディスは、シアーズでのあの騒ぎを知らないのだ。リッツ・アルスターが実は精霊族で、そして誠の王を選ぶためと称して王都を出たことを。
「アノニマス?」
アノニマスはイーディスの後ろに佇むジェイドに目をやった。視線のあったジェイドは、黙ったまま微笑む。
ジェイドは知っているのだ。リッツ・アルスターが、精霊族であることを明かし、シアーズの人民の心に一石を投じたことを。
なのにイーディスに黙っている。
ジェイドは一体……何を考えているんだ?
「何を黙って居るか、アノニマス」
冷たく呼ばれて、アノニマスは深く頭を垂れた。まあよい。ジェイドが何を考えていようと、アノニマスが望むことはただ一つなのだから。
「失礼いたしました」
「ふん。まあよい。そうじゃ、彼らの首を斬って、ここへ持って参れ。それを肴に酒でも飲もうぞ」
淡々と、冷たく目を光らせてイーディスはそう告げた。リッツとエドワードに欺されて二人の故郷を燃やし、二人の保護者であるジェラルド・モーガンの娘を慰み者にする。
どれだけこの女は業が深いのか。
自分以外の者が、幸福になることなど許されないのか。それとも、自分以外のすべてを憎むのか。
黙ったアノニマスを不審に思ったのか、イーディスの視線がじっとアノニマスに注がれる。
「アノニマス」
「はっ」
「おぬしも憎いであろう?」
アノニマスは黙った。
アノニマスは憎むという感情を、記憶と共に忘れてしまった。今彼らに感じる感情が何かと問われれば、それは喜びだった。
戦う度に強くなって立ち上がってくる、あの二人と戦う事が楽しくて仕方ない。更に強くなり、更にアノニマスを楽しませて欲しい。
自分の槍が、彼らに敵わなくなり、彼らの強さがアノニマスを越えた時、その時が来るのが待ち遠しい。
強くなれ、強くなって目の前に立ちはだかれ。
そしていつかその剣で……殺して欲しい。
生の意味など分からない、ただ愚かで哀れな女の手足となり、人を殺める事しかしていないアノニマスを。
この心の空虚を、戦いという闇で埋めるしかない空っぽなこの男を殺してくれ。
それが楽しみなのだ。
そういったなら、グレタはどう思うだろう。面白いと笑うだろうか。それともつまらないとむくれるだろうか。
「アノニマス?」
「……失礼いたしました。ご命令を、イーディス様」
静かに告げると、イーディスは冷たく言い放った。
「リチャードと共に戦場に赴き、エドワード・セロシアと、リッツ・アルスターを抹殺せよ」
「御意にございます」
頭を下げて、アノニマスは音も立てずに立ち上がった。軍の制服を着ているから目立たぬとはいえ、イーディスの手となり暗殺を繰り返してきたこの身では、王城は決して居心地のいいところではない。
足早に部屋から出ようとした時、扉が大きく叩かれた。アノニマスはそっと柱の陰に身を隠す。そこに現れたのは、国王に仕える侍従長であった。
「何事か?」
冷静な言葉に、侍従長はイーディスの前に膝を折った。
「イーディス妃殿下にお伝えいたします。国王陛下が……国王陛下が……御崩御なさいました」
「なんじゃと……それは……まことか?」
「はっ。つきましては妃殿下に至急、王宮にお戻り頂きたく参上いたしました」
イーディスは、もたれるように座っていた椅子から立ち上がった。
「侍従長」
「はっ!」
「スチュワートとリチャードをすぐに王宮に向かわせなさい。ジェイド、共に陛下の元へ」
「はい。王妃」
「妾もすぐに参るぞ」
慌ただしく部屋を出て行く侍従長を見送ったイーディスは、扉が閉まると同時に、すぐ後ろに立つジェイドの肩に手をかけた。
「聞いたかジェイド? 国王が……国王が……死によったわ!」
イーディスは肩を振るわせる。泣いているのかと思ったのだが、彼女は笑っていた。心の底から笑っていたのだ。調子がはずれたように、イーディスの口からけたたましいまでの笑い声が漏れ出す。
「妾をさんざん虚仮にしおった国王が……公爵家の妾を、庶民の女の下に置きおったあの国王がついに……ついに」
イーディスは天井を仰いで叫ぶ。
「ついに死によったわ!」
「妃殿下」
ジェイドが小さくいなすように声を掛けたが、イーディスの高笑いは止まりそうにない。
「ジェイド、ジェイド、どうじゃ、国王は何も出来ずに死によったぞ? 妾は勝ったのじゃ! 王太子を生み、このユリスラを支配する力を身につけたのは、あの下賤な女ではなく妾じゃ!」
口の端に泡を浮かべながら、勝ち誇った叫びを上げて、イーディスは叫ぶ。狂っている。この女は憎しみに狂っているのだ。
「妾の勝ちじゃ! 暗い死の国で、国王の慰み者になっただけで何の力も残さなかった、哀れな自分の身を嘆くがよいわ! ルイーズ・バルディア!」
見るに堪えなくて視線を逸らしたアノニマスの目の前で、ジェイドが後ろから穏やかに優しくイーディスの体を抱く。
その指先がゆっくりとまとわりつくようにイーディスの体の線をなぞり、愛撫するように体を這う。その指先に、イーディスの狂気のような笑い声が少しづつ収まっていく。
「そなたも、嬉しかろう、ジェイド?」
甘えるように尋ねたイーディスに、ジェイドは無言で笑った。絶え間なくイーディスを這い回る指は、やがてイーディスの頬に宛てられた。
「妃殿下、王宮へ参りましょう。まだあなたは妃殿下でいらっしゃいます。悲しみ、喪に服す期間も必要でありましょう?」
「おお、そうであったな。今はまだ、妾は悲しみに暮れて居らねばなるまい。アノニマス」
「はっ……」
「国葬が済み、新しい王の就任までおぬしに休暇をやろう。経った一月であるが、ゆっくり休むがよい。新しき王、妾の可愛いスチュワートの最初の命が、グレインの討伐になろう」
「御意にございます」
膝をつき、深々と頭を下げたアノニマスの横を、イーディスとジェイドが通って扉を出て行く。しばしそのままいたアノニマスは、やがてゆっくりと体を起こした。
もしエドワード・セロシアが、本当にルイーズ・バルディアの息子であるならば……。
アノニマスは軍議の間の窓から、流れる空の雲を見つめた。
時代が動く。
動乱の時代がやってくる。
「時代の風は、スチュワートとエドワード、どちらに吹くのかな?」
アノニマスは笑みが漏れるのを止めることが出来なかった。




