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燎原の覇者  作者: さかもと希夢
不軌の権謀
147/179

<7>

 エディ、リッツへ

 二人に改めてお手紙を書くなんて、なんだか変な気持ちです。今までは手紙なんて書かなくても顔を見て話せばよかったんですものね。

 お父様が亡くなってから、もう三ヶ月が過ぎようとしています。

 不思議なものね。

 お父様がいなくなってしまっても、お腹は空くし季節は回ります。

 ここグレインもお父様の訃報を伝えて喪に服していたけれど、喪が明ければ今まで通りににぎわいを取り戻しています。

 ただお父様がいない。

 それが不思議でなりません。

 グレインの現状は公式の書状の方に書いたから、こちらではあえて書きません。

 そのかわり私たちのことを書くことにしました。

 まず私のうんと年の離れた弟、ウイリアムについてです。

 ウイリアムはもう三ヶ月になります。

 笑ってしまうのだけれど、びっくりするほど私の子供の頃に似ているらしいの。ウイリアムのために復帰してきた私のばあやが言うのだから間違いないわ。

 アルバートもそう言ってくれるのよ。何だかとても恥ずかしいような嬉しいような不思議な気持ちです。

 お母様は違うというのに、どれほどお父様の血が強いのかしらって、アリシアと笑っています。私たち姉弟は、お父様似なのね。

 そう、私たちは笑えるようになりました。

 最初はね、どれだけつらく悲しい時間が続くのかって思っていたの。

 再会して、お父様の棺の前で、私たちはとにかく抱き合って泣いて泣いて、本当に泣きました。

 でもね、アリシアが棺を開けてお父様の顔を見ていったの。

『まあジェリー、なんて憎らしい人。死んでいくときにそんな顔をするなんて』

 お父様の死に顔は、アリシアがプロポーズを受けた時と、同じ顔だったんですって。

『こんな満足顔で死なれてしまったら、私たち女は笑顔で見送るしかないじゃない』

 それからパトリシアはお父様を送り出したときに歌った歌をお父様に捧げました。歌うアリシアは本当に綺麗でした。

 女神のごとき神々しさってこういうことを言うのかしら。

 棺に眠るお父様の幸せな表情と祈るように歌を捧げるアリシアの姿は、まるで女神の住まう天上のごとき美しさでした。

 きっとその歌声はお父様にも届いたと思うの。私はそう信じてるわ。

 そのときに流した涙が、私たちの流した最後の涙でした。

 だって赤ちゃんがいる家庭で泣いてばかりはいられないのよ。悲しみに浸っていても仕方ないわ。

 赤ちゃんはすぐに泣くの。

 お腹が空いたとき、おしめが濡れたとき、機嫌が悪いとき、眠たいとき、とにかくいつも泣いてる。

 だから私たちが泣いている場合ではないわ。

 だってウイリアムは笑うのよ。

 何も知らないけれど、本当に天使のような笑顔を見せてくれるの。

 なのに私たちが暗い顔をしていられる?

 そう思ったら、私たちの悲しみは、私たちの強さになっていったの。

 だから私とアリシアはもう大丈夫。

 エディ、リッツ。

 二人とも私たちのことは心配しないでください。

 二人が責任を負う必要はないわ。あの時私はあなたたちを責めてしまったけど、本当にもう責める気もないし、恨みなんてまったくないの。

 特にリッツ。

 あの時はごめんなさい。

 あなたのせいじゃないわ。

 取り乱してあなたを責めて、本当にごめんなさい。

 こんなことを書くとふしだらな女に見えるかもしれないけれど、あの時私が心をぶつけられるのはリッツだけだった。

 あなたは本当に大切な友達です。私にとって唯一の心を許せる信頼できる友です。

 こんな事を書いたらエディは怒るかしらね。リッツは自分の親友だから手を出すなって。

 でもエディ、許してね。

 あなたには負けるけど、私にだってリッツを友達だと主張する権利はあるものね。

 ね? 私は結構楽しそうでしょう?

 だから私とアリシアのことはもう気に掛けないでください。

 女って結構強いのよ。特に母親はね。

 私は母親じゃないけど姉だから、小さな弟を守る義務がある。

 私だって泣いてばかりもいられないの。

 だって私は今、グレイン騎士団の総指揮官なのよ? といってもエリクソンとオドネルに頼りきりだけどね。


 でもエディに知って欲しいことがあるの。

 私たち以上に辛い思いをし、立ち直るのに時間がかかりそうな人がいるわ。

 アルバートよ。

 アルバートはグレイグの死に途轍もなく苦しんでいます。

 冷静沈着で、常に我が家を切り盛りし、この自治領主補佐を務めてきたアルバートが、グレイグの遺体に取りすがって泣いていた姿は、胸が本当に痛んだわ。

 最も彼が泣いたのはその時だけで、その後は気丈に葬儀を取り仕切っていたけれど、誰もいない時間はただグレイグの棺の前に座ってグレイグの顔を眺めてた。

 私が声を掛けると微笑んで棺から離れてしまうから、私は何も言えなかったのだけれど。

 お父様も意地悪ね。グレイグが生きている間にアルバートに会わせてあげればよかったのに。

 でもきっとグレイグの方が会いたくなかったのでしょうね。だってそうじゃなかったら、お父様がグレイグの存在をアルバートに隠すわけがないもの。

 グレイグが何故暗殺者になったのか、私はよく分かっていません。でもそれはきっと決してアルバートにだけは知られたく無い事なのでしょう。

 でなければ親友に会わずに死ぬという選択肢はないもの。

 男の人は難しいわね。女みたいに全て吐き出してしまえばいいのに、たとえ親友でもそうはいかないみたいだし。

 そういうものなのかしら。エディとリッツはどうなの?

 そんなわけだからもしも出来ることならば、一度だけシャスタをグレインに返して欲しいです。たとえ数日でもいい。シャスタにアルバートの側にいて欲しいの。

 アルバートがそう言ったわけでは無いわ。私の勝手な考えよ。だけど私はシャスタにいて欲しいと望んでいます。

 もちろんグラントの手伝いをしているから無茶なお願いだと言うことも重々承知しているの。

 だからこのお願いは絶対ではありません。わがまま言ってごめんなさい。


 今グレインでは、シアーズよりも少しだけ遅い春満開です。

 エディとリッツがよく二人で過ごしていたあの大樹の周りは、一面クローバーとタンポポに覆われてとても綺麗です。

 グレイグの墓はその大樹の下、ローレンの隣に作りました。一緒にこっそり持ち帰ったルイーズの髪も入っています。将来はそこにアルバートの墓も作りたいとアルバートは言っています。

 三角関係になるわよと私が言ったら、アルバートは気合いを入れてローレンを取り合うそうです。

 ルイーズもいたらどうする気かしら。

 我が家では例年通りミモザが満開になりました。今年は溜息が出るほど、本当に綺麗に咲き誇っています。

 まるでお父様が、特別に私に見せてくださっているみたい。

 まだシアーズに戻る決意が出来ない私に代わり、愛する二人にミモザの枝を一緒に送ります。

 どうか二人とも、いつか私が貴方たちの手を取ることができる日が来るまで、元気に過ごしてください。


 愛するエディ、親愛なるリッツへ。

パトリシア・モーガン


「女は強いって事かぁ……」

 ぼそりとリッツが呟いた。確かにそうだとも思うし、パトリシアの強がりのような気もする。

 ただ確かなのは、パトリシアとアリシアは元気らしいということぐらいだ。

 乳飲み子がいる状況では、泣いていたり落ち込んでいる余裕もないのかもしれないが、それでも悲しみに沈んで何も手に付かないよりはいいのかもしれない。

「守るものがあるって強いよな。男の中で守るものがあるっていうのと、女の守るものがあるって違う感じするな」 

 再び草地に寝転がりながらリッツがため息混じりにいう。

「どう違う?」

「俺たちの守るって、命を捨てる方の守り方だよな。でも女の守るって命をこう、抱える方の守り方だって思ったんだ」

 ふと最後のジェラルドの姿が浮かぶ。

 彼は新しい時代のために命を捨てた。だが彼の妻であるアリシアは子を守るために悲しみに飲み込まれることなく生きることを選択した。

 確かに女性は強い。

「俺も捨てる方の守り方しか考えつかねえしな……」

 リッツの呟きが重い。

 リッツと違い、エドワードは現在、自分の身を守ることが最優先される立場にある。

 自分が死ねば全てが水泡に帰す。だが友が自分を守って死ぬのは決して許すことが出来ないだろう。

 矛盾しているといえば矛盾しているのかもしれない。

「無茶はしないでくれよ」

 ようやく出てきた言葉を告げると、リッツが黙った。いつもは軽く返事をしてくるのにここで黙るということは、何か危険なことに足をつっこんでいるという事だ。

 だがそれはエドワードが知ることを禁じられている諜報部関連の作戦であることは明らかだ。

 互いに黙ったまま崖に砕ける波の音に耳を傾ける。

 静かだ。こんなに静かに過ごす夜は久々だ。

 部屋が騒がしいわけでも、常に喧噪の中にいるわけでもない。

 ただ心の中が妙に冴えて静かだった。

 それは気分の悪いものではなく、深く呼吸が出来るようなそんな気分にさせられた。

 グレインはこのままでいいだろう。あとはパトリシアを信じて待てばいい。

「シャスタ、いないんだよな」

 不意にリッツの声がした。

「ああ。そうだな」

「アルバートのところに行かせてやりたいよね?」

「……考えてなかったな」

 つい本音を呟くと、リッツが寝ころんだままこちらに向き直った。

「何その言い方? エド、冷たくねぇか?」

 リッツの眼が本気で怒っている。普段は考えなしに見えるがリッツは本当に優しい奴なのだ。

「といってもな」

 同じように草地に寝転がり、リッツの方を向き直る。

「といってもなんだよ?」

 パトリシアよりも養父であるアルバートのことを分かっているからエドワードは苦笑した。

「もしシャスタが戻ってきたら怒ると思うぞ」

「え?」

「確かに落ち込んでると思う。かなり辛い状況であることは俺も分かるさ。だけどアルバートは……俺たちの父はシャスタが帰ったら怒って追い返すぞ」

「何で?」

「俺には分かるんだよ。その上でパトリシアにも怒るんだ。『国家の仕事をしている人間を、私情で呼び戻すのはおやめください』ってさ」

 落ち込んでいるアルバートであっても、彼はとても職務と責任を重んじる。シャスタをグラントに預けたときから、簡単に戻ることを許さないだろう。

「だけど……」

「さっきお前が言っただろう? 男と女では守ることが違うって。同じだよ」

 包み込むように守る女性からすれば落ち込んでいるアルバートのために何かをしてあげたいだろう。

 だがアルバートにしてみれば現在も戦っている状況だ。

 きっと考え方が違う。だから今はこれでいい。

 落ち着いた時に何の気がねもなく会う方が互いのためにいいだろう。シャスタは機会があれば帰る場所がある。故郷はずっと変わることなくグレインなのだから。

「男だ女だって難しいな」

 不本意そうに言いながら、頭の上で手を組んだリッツは空を見上げている。

「俺は慰めて抱きしめて欲しいけどな。もう大丈夫だって一緒にいるって言って欲しいよ」

 それはエドワードの中に重く響いた。リッツの心底からの言葉だろう。

 だからこそ冗談めかして言葉を返すことしかできなかった。

「じゃあ何かあったら俺が慰めて抱きしめてやろう」

「嬉しいような、気持ち悪いような……」

「失礼なやつだな、お前は」

 冗談の中に重みのある暗さが紛れて消えてゆく。

 リッツの中に横たわる寿命という闇が、時折リッツを引きずり込もうとする。だからエドワードはそれを吹き散らすために冗談を言うしかない。

 死なない約束をさせてしまったが、リッツの人生を共に歩く事は決して出来ないのだと自覚しているからだ。

 手を伸ばすと触れられる位置にある髪に乱暴に触れてかき回す。

「やめろよ! 何すんだよ!」

 文句を言う割にはこちらをはねのけるでもなく、じっとりとこちらを睨んでいるだけだ。

 だから昔のように頭を軽く叩いてやる。

 正直じゃなくなったな。これも大人になってきたという事だろうか。

 それともその肩に背負うものが重くなり過ぎたのだろうか。

「エドってば!」 

「アルバートのことは心配するな。俺の育ての父は強い男なんだからな」

 笑顔で告げるとリッツは黙り込んだ。しばらくしてじっとこちらを見つめる。

「エドが言うならそうなんだろうな」

「ああ。だから大丈夫だ」

「それならいいけど」

 再び視線を空へと向けてしまったリッツから手を離す。同じように見上げた空は先ほどから変わらず星が無数に瞬いている。

「なぁエド」

「ん?」

「グレインからも同じ星空が見えるかな」

 寂しげなリッツに苦笑する。

「見えるさ」

「そっか」

 再びの沈黙にエドワードの迷っていた事が徐々に形を作っていく。

 それはリッツに言っておかねばならないことだった。でもずっとリッツに正直に言えないことだった。

「リッツ」

「ん?」

「パトリシアが帰ってきたら、あの時の返事を聞こうと思っているんだ」

 彼女がグレインに帰るときに自分の元に戻って欲しいと願ったとこの答えを。

 それはリッツを傷つけることになるだろう。

 でもリッツはパトリシアを好きなのにエドワードにちゃんと言えと諭した。

「お前は本当にそれでいいのか? お前、パティが本気で好きだろう?」

 ずっと聞きたくても聞けずにいた質問だった。

「正直に言ってくれリッツ。俺はお前に苦しい選択を強いているんだろう?」

 口に出すと止まらなくなった。分別ある大人のふりをして聞けなかったことが、後から後から口をついて出る。

「俺を疎ましく思ったことはないのか? 苛立ったりしないのか?」

 もしも思っているといわれたら一番怖い言葉だった。だが聞かずにはいられない。黙っていられるほどエドワードは器用ではない。

「パティを先に好きになったのはお前なのに、パティを横取りする俺が憎くはならないのか?」

「……エド」

「本当に俺はこれでいいのか? お前に甘えっぱなしでお前を苦しめていないのか?」

 好きな女を親友に取られて、本当に笑っていられるのか。本当は心が痛み、苦しんでいるんじゃないのか。

 それは本当の笑顔なのか? それとも作り物なのか?

 リッツの本当の気持ちが最近見えなくなってきた気がする。それがエドワードにとって一番怖いとリッツは分かっているのだろうか。

「本当はどう思ってるんだ。俺はそれが聞きたかったんだ」

 本当は聞きたくない。憎んでいると、嫉妬しているといわれたらどう対処していいか分からないからだ。

 だが聞かずにパトリシアに求婚し、手に入れようとするのはどうしようもなく居心地が悪い。

 しばらく沈黙した後、リッツが重い口を開いた。

「エドを憎むわけないだろ」

「リッツ……」

「エドのこと、好きだって散々言ってるじゃん。どうして俺がお前を憎める?」

 確かに出会ってから今まで散々聞いた。命を預けてくれて、信頼の全てを預けて貰っている相手だ。憎まれるわけなどないのは分かっている。

 それでもただ苦しい。

「正直言うとさ、俺だってパティが好きだよ。抱きしめたいし、キスだってしたいし、好きだってちゃんと言いたいし」

 心が軋んだような気がした。やはりリッツは今も彼女を愛している。それをエドワードは奪おうとしているのだ。

「リッツ……」

「だけどそれ以上に怖いってのはあるんだ」

 予想外の言葉だった。

「怖い?」

「うん。やっぱ人間に恋するのは怖い。絶対に先に死んじゃうって分かってる人と恋する怖さは半端じゃない」

 淡々とそういってから、リッツがこちらをみた。

「お前が先に死ぬのが怖いぐらいには怖い」

 その恐怖の深さを知っているからこそ、何も言えなかった。

「好きが恐怖に直接つながる恋愛なんて、俺には怖すぎて無理だ。だからエドとパティが一緒になって幸せになってくれるなら、それでいいって思ってる。別に無理して我慢してエドにパティを渡すわけじゃないんだ。俺にはそれに耐えられる強さもないから、所詮無理な恋だったんだ」

 口調からもうリッツはパトリシアへの思いを終わったものとして諦め、過去のこととして片づけてしまおうとしていることが分かった。

 だが励ますことなど出来るわけがない。ましてやそれでも恋をしろなんて言えるわけがない。

 彼の恋する人は、エドワードの愛する相手だ。

「嫉妬したり、苦しいと思うことはないのか?」

「嫉妬までいかない。そりゃあさ、胸が痛いことはあるけど、でも俺はエドとパティが一緒にいる方が幸せを感じられるよ。胸の痛みが二割だとしたら、残りの八割は幸せって感じかな」

 リッツの視線が真っ直ぐ空に向けられる。その視線の先を辿り、満天の星空を眺めた。先ほどのリッツの言葉を思い出す。

『グレインからも同じ星空が見えるかな』

 二割なんて嘘だろう。

 もっとお前は胸を痛めているのだろう?

 ごめん、リッツ。本当にごめん。

 俺を許してくれ。

 言葉にはできずに、リッツの横顔を眺めて、そう心で語りかける。だが心とは別の言葉を発した。

 それしか言える言葉がなかった。

「分かった。ありがとう」

 それだけを口にすると、リッツが笑った。

「何のお礼だよ。そもそもパティが好きなのはお前で、俺は振られてるじゃんか」

「そうだな」

 軽くいうと、リッツが吹き出した。

「ひっでぇの!」

 なあリッツ。そんなに笑うなよ。

 お前がそうやって笑うときは、本当は笑ってなどいないんだろう?

 口には出せずに心の中で呟く。

 本当にお前と共に時間の中を生きてくれる伴侶が現れるといいのに。

 そう、例えばさっきお前が言ったように、お前の悲しみや苦しみを全部慰めて抱きしめて、もう大丈夫だと、ずっと一緒にいるといってくれる人が。

 もしそんな人がリッツの元に現れたなら、相手に関わることに臆病なお前のために、全力で手助けするのに。

「そろそろ帰ろうぜ。ここで夜明かしはいくら何でもきついよ」

 ぼやきながら起きあがったリッツに倣って起きあがる。

「そうだな」

 先に立って歩き出したその後ろ姿に、座り込んだまま真っ直ぐ手を伸ばす。

 当然リッツには届かない。

 グッと拳を握りしめた。

 エドワードが生きているうちに、リッツの背にこうして手を伸ばしてくれる人が現れるだろうか。

 この寂しげな背中を抱き、暖めてくれるような、そんな人が。

 現れてくれ。

 そうすれば俺のこの手が、躊躇うことなくお前を掴むから。

 そして何があっても、その相手をお前と繋げてみせるから。

 小さく息をつくと、エドワードはその後ろ姿を追った。 

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