三話 謎の少女
俺が家の中に促して業者さんに入ってもらった
もちろん先頭にいた女の子も家の中に入っている
「それじゃ、入らせてもらいますね...あ、ここの部屋使ってないですね。じゃあここ使っていいですか?」
「へ? は、はぁ...え?」
「ですから! ここの玄関に一番近い部屋です! 使っていいですか?」
「あ、はい! どうぞ」
「ありがとうございます」
女の子は段ボールと数人の業者さんを伴って玄関付近の部屋に入っていった
...なんで? 俺ってそんなに準備必要な家具なんて買ったっけな?
「あの~すいません。この机はどこに置いたら...」
「あ、すいません! えっと、机は.....」
とりあえず今は女の子のことよりも待たせてしまった業者さんに指示を出さないと
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そのままテレビとか家具の場所を指示しおえて業者さんが全員撤収したときにはお昼はすでに過ぎ、2時になっていた
「もぉー先輩のせいでお昼抜きじゃないですか。責任...とってくれますよね?」
「そういえば、部屋にこもってた子も帰ったのかな?」
「えースルーですかぁ!?」
俺は構って欲しそうにしている後輩を無視して女の子がいる部屋まで行った
自分の家だけど中に女の子がいるから一応ノックはしたほうがいいよね
「...まだいますか? 入ります...よ...?」
ドアを開けて入った部屋は俺の知ってる部屋じゃなかった
なんというか...女の子の部屋っていうの?
...おかしい。明らかに俺の知ってる俺の家の俺の部屋じゃない。ここは空き部屋だったはずだ
そして俺は男の子だ。決して「オトコの娘」でもない
ドアの向こうにはピンクや暖色が中心にインテリアが揃っていた
この部屋にはベッドやクローゼットまである。なんだか住み心地よさそうだな
「あ、もう終わりましたよ。なにか用ですか?」
そういってコクッと首を動かす女の子
なんだこの可愛い女の子!?
「え? あ、っとー、え?」
「あのー、どうかしたんですか? 佑介くん?」
「え? なんで名前」
どうしてこの子は俺の名前を知っているんだろう?
そんなことを思っていると後ろに立っていた後輩に胸倉を掴まれた
「先輩! どーゆーことですか! どこでこんな可愛い女の子拉致ってきたんですか!? 弥生びっくりですよ!」
「し、知らん! 誰かなんてこっちが聞きたいわ! 佑介だってびっくりしてんだ!」
「あれ? 佑介くんには自己紹介しましたよね? 暁です。同じクラスの西森暁ですよ! 入学式でも横に座ってたじゃないですか」
女の子の名前は西森暁というらしい。とりあえず彼女のおかげで首を絞められて死ぬことはなくなった
それにしても...入学式? あの時はたしか....
「先輩入学式の時『節約状態』だったんじゃないですか?」
「だって入学式って特に聞くことないだろ? だから終わる直前までスリープだった」
「はぁ~すいません西森さん。先輩がアホなんでリビングで事情を聴かせてもらってもいいですか?」
「あ、はい...わかりました」
えーなにこの子! 先輩のことアホ呼ばわりしたよ!
もっと先輩を敬えよ!
「先輩!行きますよ!」
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リビングにはテレビの前にソファーとテーブルがあるが、今俺たちはダイニング横にある食事用の足の長いテーブルとイスに座っている
4脚あるイスのうち、扉側のソファー側に西森さん、その正面に俺、横に弥生というかんじで座っている
「でー、西森さん? もう一度全部話してくれないかな? 俺たち何がどうなってんのか全然わかんなくてさ」
「わかりました。どこからお話しすればいいですか?」
「とりあえず――――「まずは先輩との関係です! あなたは『佑介くん』と呼んでましたがこの人とはどんな関係なんですか?!」―――」
先輩を指さしながら話の邪魔をするなよ
確かに気になるけどさ
「私と佑介くんはいわゆる『いとこ』です。お父さんのお兄さんが佑介くんのお父さんなんです」
「いとこ? 俺と西森さんが?家族の集まりとかで会ったことあったっけ? そもそも俺にいとこなんていたんだ」
「私も驚きました。いとこなんていないと思ってたので。あと「西森さん」なんて呼ばずに名前で呼んでくれませんか? これから一緒に暮らすんですから苗字じゃなくて名前でお願いします」
従妹か....俺に従妹がいたのは驚いたな
母さんに兄妹はいないし...父さんに弟がいることは聞いたことあったけど会ったこともないし、まさか結婚して同い年の子供がいるなんて
「とりあえずなんて呼べばいい? あきら?」
「はい! 「あきら」でも「あき」でも「あきちゃん」でもなんでも!」
「わかったよ、あきら」
「はい、佑介くん」
あきらはニコニコと笑っている。そんなに可愛く笑っていたら見ている俺もつられてしまう
...うん。自分でもわかるくらい口角が上がっているな!
「ちょ、なんでスルーなんですか! 西森さんはもっと爆弾発言してるでしょう!? ほら! 一緒に暮らすとかどうとか!」
「そういえば佑介くん。そちらの女の子は?」
「あぁ、こいつは弥生。幼馴染で1歳年下だよ。ほら弥生、自己紹介」
「あ、すいません。初めまして一条弥生です。先輩の幼馴染で....ってそうじゃないです! もう! 西森さん、一緒に暮らすって話を....」
「弥生さんですか。なら弥生さんも是非名前で呼んでください! 女の子なのでできれば「あきちゃん」と呼んでほしいです!」
「あ、じゃあ「あきちゃん」で...ってそうじゃな...うがぁぁぁ!!」
今まで冷静に見ていた弥生が頭を抱えている。そうとうご立腹なようですね
仕方ない、話を進めるかな
西森さんはかわいいです