壊れたみたいだ
何もかもが分からなくなってしまった。
そもそも、何かを分かった気でいた自分が間違いだったのだと思う。
ひんやりと夜の風の感触は冷たくて、頬は燃えるように熱い。
熱い。
この感情を処理しきれなくなった私の頭がオーバーヒートしてしまったからに違いない。
嫌だ。
こんな簡単に、易々と傷ついてしまえる私の愚かしさが嫌だ。
私の嬉しい、楽しい、愛しい気持ちは決定的に破壊されてしまった。
今、私は怒っているのか、悲しんでいるのかも分からない。
どこに向かって歩いているのか見失うくらい私は打ちのめされていた。
気が付くと、住宅街を抜けていて、駅も越えていて、シャッターの閉まった寂れた商店街の中をとぼとぼ歩いていた。
手近にあったゴミ箱に、歯ブラシと新品の下着とよくわからない気持ちを放り込み。
不在着信が増え続ける携帯電話の電源をオフにする。
そういえば、バイトが終わってから何も食べていないなぁ、などと急に関係のない事を思い出す。
シャッターが視界を遮って並ぶここでは、何もかもが拒絶されている。
前にも、後ろにも進めずに、私は道端に座り込んだ。
背中が汚れてしまう事も気にならなかった。
顔が熱くて、シャッターはとても冷たい。
声を押し殺して泣いた。
鼻水が口に入ってきてしょっぱくて、馬鹿みたいで、それでも止まらない。
私、壊れたみたいだ。