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想いの強さは
「茜さんは先生に会いにいかないんですか?」
何が彼女を此処に留めているのかを私は知りたい。
「先生? そうね。いつも会いに行こうとしているんだけど、何故か会えないのよねぇ」
「私が呼んできましょうか?」
「あの人は忙しいから、遠慮しておくわ」
幽霊なのに、なぜこんなにも執着が薄いのだろう。
「でも、好きなんですよね?」
「あの人にとってみれば、私は生徒の一人でしかないから。独り占めしたいけど、特別扱いされたいけど、それは出来ないの」
「それでいいんですか?」
「後悔するのが怖いの。嫌われたくない。叶わない片思いの恋の魔法なら覚めることはないでしょう」
「じゃあもし仮に、私が尼崎先生に告白して、付き合う事になっても問題ないって事ですよね」
何故そんな事をいってしまったのか自分でも分からなかった。
「じゃあ橙子ちゃんは、私のライバルだね」
「はい。うかうかしてたら私が奪ってしまいますよ」
強引な方法かもしれないが、彼女がこんなに消極的では、恋なんて実らない。
茜さんは、屈託なく笑っていた。
もう死んでしまった彼女の恋は、まだ続いている。